家が神様たちのたまり場になっているので配信させたらバズっちゃった

@woto

第1話 初配信はブリッジで

神様っていうのはどういう存在だろう?

尊くて到底人の手には届かないような存在?

それとも慈愛にあふれ誰にでも手を差し伸べる存在だろうか。

そう思う人間がいるのなら認識を改めた方がいい。

なぜなら神様は、俺のうちをたまり場にしているのだから。


「春樹ぃ~またチョコちょうだい~あの粒粒の奴」


しかも結構図々しい。

何人の家に遠慮なく入ってチョコ〇ビー食えると思ってんだこいつは。

まああげるんだけどさ。

さて、今日のエサやりは完了したし、metubeでも開くか。

metube、超大型動画配信サイトである。

ゲーム実況、実写動画、まったり解説からASMRまで様々なジャンルが存在し、日々ネットを掻き立てている。

特に俺はVtuberなるものにはまっている。

絵師さんが絵をかき、モデリングしてアバターを作り上げ、音声とともに乗せるというものである。

彼彼女たちにひとり一人個性があり見てて疲れない。

俺が今ハマっているのは白四葉という事務所のVtuberである。

男女ともに知名度が高く、今のVtuberを代表するような逸材がたくさんいる事務所だ。


「何見てるの?」


目の前の幼女がスマホをのぞいてくる。

そういえばこの子にスマホについて教えたけどmetubeについていってなかったな。


「Vtuberだよ。この絵が動いてしゃべったり俺たちのコメントに反応するの」


「ほへ~アニメみたいなもん?」


「アニメキャラが現実でしゃべってるようなもん」


だいぶ説明を端折ったがまあ大丈夫だろう。

俺はスマホに目線を戻す。

すると目の前の幼女、紹介を忘れていた。

阿須波神はこういった。


「私もVtuberやってみたい!」


期待と好奇心の詰まった瞳。

俺といえどさすがにその目を汚すほど落ちぶれてはいないのである。


「よしやろう!」


俺は即座に許可を出した。

ガワはどうするのかって?

安心しろ、ここ5年間ずっと引きこもってパソコンをいじっていた俺だ。

パソコン関係なら大体できる。

昔は自分で同人誌描いてオカズにしてたからな。

今?幼女にそんなもの見せられないだろ!全部捨てたわ!

てなわけで俺は絵も描けるのである。

いざ作業に取り掛かろう。


「………」


むずい。

阿須波神…もう阿須波でいいや。

阿須波の中を見てるから別のキャラをかくのが難しい。

もういっそそっくりに書いてやろうかな。


「vの絵、本物とそっくりでもいい?」


「全然だいじょ~ぶ!」


本人からの承諾も済んだ。

ならさっそく書いていこう。

白髪に黒目、ポニーテールの幼女。

日本の神だから和服、あまり飾り気のない薄紫と白の和服だ。

あとはアイデンティティーとして白い梅のかんざしをつけておく。

よし、完成だ。

和服少女。かなりうまくかけた自信がある。

あとはイラストパーツを設定して可動域を決めてあーだこーだして…


時は流れて


「よし!できた!」


実に五日かかったが阿須波のガワが完成した。

和服を除けば完全にガワと中が一致している。

朝にできたので本人はまだ来てないが、どんなリアクションをするか楽しみである。

そんなことを思っていると…


ドーン!


開けていた窓から幼女が入ってくる。そう、我らが阿須波神だ。

気になってネットで調べてみたのだが、阿須波神は古事記にしか登場しておらず性別も不明らしい。

まさかこんなかわいらしい幼女だとは思うまい。

しかしこの光景も慣れたものだな。

最初のころは開けるの忘れてて窓ぶち破られて妹にめちゃくちゃ怒られたっけ。

妹…というか俺以外は神が俺の部屋にいることを知らないからな。


「前に行ってたVtuberのアバター完成したよ」


そんなことを考えつつ俺は阿須波にそういう。


「できたの!?見せて!」


うん、かわいらしい限りである。


「じゃーん!これだ!」


俺の傑作とも言っていいそれを阿須波に見せる。

見せると彼女は


「すごい!これが私?」


手をたたいて喜んでいる。

こういう時だけかわいいんだよなあ…これで生意気じゃなければ…

そんなことを思いつつ配信に使うマイクやカメラを用意する。

何であるのかは聞かないでくれ古傷がえぐれる。

あがががががが…

いかんこんなこと考えちゃ。

カメラよし、マイクよし、アバターの動きよし。

あとはチャンネルか。

チャンネル名何にしようかな…

阿須波チャンネル…なんか違うような…俺も登場してみたいしな…

いつも俺の家をたまり場にしているわけだしな…

たまり場…神様のたまり場なんてのはどうだろう。

結構いいんじゃないだろうか?


「じゃあ配信するぞ~。最初は超無名なので全く人来ないけどさ」


「わかってるって~」


「そうだ。配信するときは何て呼ぶ?身バレとか…神だからないか。俺のことはハルとでも呼んどいてくれ」


「了解!私はあすはでいいよ。」


じゃあ始めようか。

どんな結果になるかはわからない。

しかし少しだけ楽しみである。

期待を胸に俺は配信開始ボタンをクリックした。

配信が始まる。


『【初配信】初めまして神ですが』


何の面白みもないそのタイトルの配信に視聴者は一人。

そう、俺たちだけなのである。

しかし無名は最初こんなもの。

そう思い挨拶を始めようとした次の瞬間


「今回君たちに集まってもらったのはほかでもない」


そんなあすはの声が聞こえてきた。


「ちょっとまって」


「…何?」


「挨拶なしでいきなり何それ!?」


「ふっ…ハルはわかってないなあ…愛情表現だよ~」


「なんの!?誰に対しての!?あと今俺たちしか配信見てないから!」


「…今回ハルに集まってもらったのはほかでもない」


「無視かよ…ていうか対象俺なの!?」


「お前にはデスゲームをしてもらう」


見ると視聴者が一人から五人に増えている。


「リアルでデスゲームやるんだったらVtuberの意味なくない?」


「お前神に逆らうのか?」


「こういう時だけ神様の特権使うスタイル嫌いじゃないよ」


「なら始めよう!」


「俺オッケーって言ってなかったよね!?」


”草”

”草”


二人の人が反応してくれたようだ。

実際に反応されると結構うれしいものである。


「で、何するの?」


「これ!」


そういうと彼女は一つの動画を俺に見せてくる。


「おーいバカバカバカバカ!」


「?」


「『?』じゃない!他所の動画の音声が乗るところだったでしょ!あと普通にほかのところの企画パクろうとするな!」


”パクろうとしてたんかいw”


「いや普通にこれやってみたいなって」


「そういえばBottanのゲームもあまりやったことないんだっけ」


彼女が見せたのは最近はやりの果実ゲームの実況動画。

同じ果実をぶつけると大きくなって最終的にメロンを作って消していき、スコアを競うというものだ。


「だとしてもデスゲームと呼称するにはあまりにも可愛すぎるわ!」


「む、不満があるのかい?ハル君」


「いやそんなわけではないけどさ…」


「よろしい!そんなに不満ならばブリッジしながらやって見せろ!」


「いや不満ないんですけど!?」


視聴者数は二十人になっている。


”ブリッジでどうやれと”

”草”

”ますますVでやる必要ないやん”


「ていうか俺がBottonに果実ゲーム入れてなかったらどうしてたんだよ?ダウンロード結構時間かかるだろ?」


「明日は明日の風が吹くってね☆」


「使い方が違う」


ちなみにほんとにブリッジでやらされた。


————————————


とあるスレにて…


273 名無しさん ID:******

このVおもろいw

【以下URL】


274 名無しさん ID:******

神の要素が一切ないやん


275 名無しさん ID:******

挨拶なしでデスゲームは草

そしてデスゲームとは思えないゲーム選出


276 名無しさん ID:******

数ある中からなぜ果実ゲームを選んだ


278 名無しさん ID:******

Vでやる意味ないのでは?


279 名無しさん ID:******

本人じゃなく兄にやらせんのかよw


280 名無しさん ID:******

これは伸びる(確信)


————————————


「きっつ!ブリッジでゲームキッツ!」


”頭に血が上っているぜ!(物理)”

”すごい実写で見たいのだがw”

”どうやってゲームしてるん?”


「ハル~どうやってゲームしてるのだって」


「今それにこたえらえれるほど余裕ないんですけど!?」


「だってさ」


「お前が説明すればいいだろうが!」


”草”

”ハルにいキレたw”


「そうだね~頭で支えさせてゲームしてるよ~大変そうだね!将来はげるよアレ」


「一回殴りたいわこいつ」


「そんなこと言うハルにいにはお仕置きだ!」


そういうとあすはは俺のブリッジしてて無防備な腹に乗ってきた。


「●▲$◇!!?おっも!!」


「レディーに向かってそんなこと言うとは…いいの?今ここでジャンプすることもできるんだよ?」


「やめてください。腹がつぶれてしまいます」


さすがに死ぬよ?

俺一般人だもん。

しかしもうすぐスコアが大台の四千に到達する。


「4000!4000まで言ったら終わっていい?」


「しょうがないなあハル君は」


「国民的青狸みたいな言い方やめろ」


よし!あと12!もうすぐだ。

でも、ちょっと疲れてきて…


「あ」


疲れた勢いでボタンを押してしまう。

本来そこに落とすべきではないオレンジが落とされる。

そして箱の頂点へとオレンジは達し…


『ゲームオーバー スコア3988』


「………」


「最初からだね!ドンマイ☆」


ドン!


多分結構な勢いの台パンをした。

妹が学校で本当に良かった。


”きれいな台パンw”

”草”

”これは悔しいやろなあ…”

”草”

”草”


見ると視聴者が100人にまで上がっている。

無名の初配信でこれは異常な数だ。


「さて、休憩も終わり!次にいこう!」


「まだ30秒もたってねえだろ!」


いつかこの愚神に復習してやりてえと心に誓う俺であった。

ちなみにチャンネル登録者数は100人になっていた。

後、この後ほんとにブリッジで再度やらされた。

二回目はミスがないまま五千まで言ったのでやっとこさ配信を終わることができた。

そして俺は次の配信でこの愚神に復讐を誓うのであった。

ふっふっふ…震えて眠れ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る