第3話 動線
タイムリミットは一週間そう言い残し日木禅は、看板をオープンに戻して店を去っていった。
渡された資料に目を通す。少女の名前は
魔法についての詳細は一切不明。確認できたのは瞳の色彩判定のみ……、大方、詳細不明であるが故に俺に白羽の矢が立ったと言う事か。
今回で俺は稼業を引退する事に決めている。最後の仕事『魔女』の確保が成功すれば辞職も罷り通るはずだ。
そうなれば、ひっそりと花屋を続けよう。そう思い、再び看板をクローズに変えようと門扉に歩き出すと——鈴の音が響く。タイミング良くお客様が来たようだ。
顔を営業用に切り替え——……
「あっ店長さんですか?」
栗毛の髪を三つ編みに結った少女が問いかける。
俺は目を疑った……いやこれは組織が俺を嵌める為に仕掛けた罠ではないかと疑った。でなければ、こんな――。
「外の張り紙にアルバイト募集って書いてあったんですけど、まだ受け付けてますか?」
花屋も軌道に乗ってきたのでバイトを雇おうと軽い気持ちで張り出した紙が海老で鯛を釣ろうとは……。
困惑する気持ちをおくびにも出さず訊く。
「えぇ、まだバイトの募集は行っていますよ。お名前を伺っても?」
「あ、すいません名前も名乗らずにずけずけと……花盛翡翠です! よかったらここで働かせてください!!」
深々と頭を下げこちらを屈託も衒いもなく微笑む少女は『魔女』花盛翡翠。顔の特徴、身長、ましてや自ら名前まで名乗った、最早疑いようのない完璧な一致にして今回のターゲット、それが今目の前に突拍子もなく現れた……これをどう解釈すればよいのか――。
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