スノーバイク
そして続けられた魔獣の掃討。
どうやらこの地域には、寒くなり獲物がいなくなった地域の魔獣が獲物を求めて押し寄せて来ているようで、討伐する魔獣には事欠かなかった。
しかし十二月に入ると、ここ周辺でも野生動物は冬眠や巣ごもりに入り、獲物を求める魔獣も激減した。
やがてこの地域にも雪が舞い始め、ティナの野外活動も減って行った。
そして一月に入ると雪が積もり始め、ティナは暖炉前でごろごろしていた。
「アル~、雪が積もって外は歩きにくいよ。スノースクーターとか作れない?」
外の積雪は10cmほどだが、幼女にとってはかなり歩きにくいようだ。
【出来ますよ。でも、ここは丘陵地ですので登りが大変です。電動化しましょうか?】
「たしかに足元ぐちゃぐちゃのとこをスクーター押して上がるのは大変だね。でも電動スノーバイク的な外観だと、この世界に無い技術を使ってるのがモロバレだよね」
【では木製に偽装しましょう。フレームをチタンパイプで作って、内部に反重力デバイスによる浮遊航行システムとバッテリーを入れ、電波によるワイヤレス充電。制御はティナのインプラントチップ経由で、盗難防止にビーコンと私からのリモート制御機能。そして外装を木で囲えばいいでしょう】
「……待って。それ、内部がヤバすぎる。完全なオーパーツじゃん。放置出来ないよ」
【万一盗まれたら、ビーコンを目標にミサイルを撃ち込むか、自爆機能でも付けましょう】
「めっちゃ過激になってる!? そうじゃなくて、万一盗まれて分解されてもいいように、本当の木製でいいんだよ。サンタのソリみたいなので」
【それでは丘を登れませんよ】
「そうなんだけど…。ん? 私って、魔法で物を動かせるようになったよね。じゃあ乗ったまま前方にベクトル掛けるだけで進まない?」
【なるほど、物理的なベクトル魔法で移動ですか。出来そうですね】
「よし、試してみよう」
そして出来上がったのは、電動バイクM〇t○chimpをスキー板に換装したような形状の木製スノースクーター。
直方体の座席部兼基幹フレームは、内部がカーゴスペースになっていて、非常食や救急キットが入っている。
ティナは軽快に雪の上を走り回った。
「にゃははははは♪ アル、これすっごく楽しい♪」
【よかったですね。でも、ベクトル魔法の他に耐寒用に熱魔法も使ってるでしょう? 魔力は大丈夫ですか?】
「うん。消費は自然回復する魔力量程度で済むみたい」
【大雪や吹雪の場合は視界不良で危険ですので、乗っちゃだめですよ】
「さすがに雪除けまで魔法でやったら、魔力減ってきそうだね。まあ、そんな悪天候で外出る気無いからいいよ」
ティナはスノーバイクでの雪遊びと、離れた森での遠征魔獣討伐が日課になった。
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