第186話 究極体
俺の方を見て万歳をしているお爺さん。
「おい、お前……!」
「しっ、しまった! つい次元門の制御を……!」
ふざっ!? ふざけんなよぉっ! ついじゃねえんだよこのうっかりゴルディック!
「「「■■!!」」」
そして次元門に大きなヒビが入り……。
「ぬわぁー!?」
そこからとんでもない数のイーターが溢れてき出した。
数百数千……数えるのも馬鹿らしくなる程大量の黒い生物。
まるで極上の霜降り肉に群がる大量のコバエ。
1体1体はどことなく小さくなったウサムンに似ているような……?
「まずい! まずいまずいぃっ!? たすけてくれぇーっ!!!」
さもありなん。
じいさんは大量の敵に囲まれて必死の形相だろう。最早顔は見えないけれど。
「……帰ろう」
帰ってみんなを連れてどこかこの世界ではない場所へ……。
うん、それがいい!
「グルォオォォーン!!!」
俺が逃げる算段をつけ始めた時!
腹の底に響くような咆哮がそんな臆病風を吹き飛ばす!
「主様を害する虫どもめ……許さんぞ!」
その出で立ち! 誰よりも威風堂々! まさに生物の王者たる圧倒的存在感!
誰よりも神々しく輝くは白銀の龍!
そう、創造神よりもね。
「食らうが良い! 我が神なる龍の閃光を!」
リオの口から放たれたブレスが無数のイーターを焼き尽くす!
爺さんも焼かれてれるけど、さすがに個体値が違い過ぎるようで問題なさそうだ。
「リオ……!」
「私もいますわ!」
え、エリー!?
「今こそ! 私の本気を見せる時ですわー!」
エリーが叫ぶと同時、彼女の周囲に無数の武具が展開される!
「『私の宝物庫!』」
その剣が! 槍が!
「■■■!?」
黒い生物に殺到し次々と屠っていく!
「……すげぇ」
強力な効果を持つことがある魔道具。
常人では使えて数個、それをエリーは……いとも容易く何百も操っている。
「これが……これがエリーの本気……」
「さぁ! ここは私とリオさんに任せてアレクとメイさんはあちらを!」
「……」
あちら。
エリーに言われて視線を次元門に向ける。
「……」
わかってはいたけど認めたくなかったもの。
最初に戦ったイーターとは比べものにならないほど大きな……まるで山のような黒い存在が見え……たような見えてないような。
「かしこまりました」
かしこまってません。
いつの間にか隣にいたメイちゃんがエリーに応える。
「ほら坊っちゃま、一緒に頑張りましょう」
「………………ぅん」
メイちゃんや仲間と一緒なら何でもできる! そんな少年漫画みたいなキャラではないんですぅっ!
しかし……ここで踏ん張らなければみんなに顔向けできなさそうだ。
というか世界が滅びそうだ。
「無数の幼体と先の成熟体……そして究極級のイーター、か。主神級をも食したであろうあのイーターであろうとも! お主となら何とかなる気がするぞ!」
さっきまでコバエにたかられていた爺さんが寄ってくる。
成熟体とか完全体とか……何タルモンスターだよ! 25周年おめでとうございます!
「よし! 湧いてきた! 無限大な!」
「そうです、勇気ですよ……たぁっ!」
いよいよ全貌を表した究極イーターの顔面をメイちゃんが先制攻撃をしかける!
相変わらず思いっきりがいい!
「■■■■!」
「まだまだです! はぁぁぁぁ!」
メイちゃんによるラッシュ!
今までの敵なら最初のパンチで肉塊だが……!
「■!」
「っく!」
しかし究極イーターは平然と反撃に転じる!
「シュバルツエンデ! メイちゃんには指一本――重っ!」
何とか受け止めるが、何と重い一撃……!
体格がでかいだけではない。内包する魔素の密度があまりにも濃すぎる!
まるで……世界そのものの厚み。ゴルディックが言ったように、本当に主神を食ったという事なのだろうか。
「坊っちゃま!」
メイちゃんの叫びに顔を上げると、大口を開けそこに莫大な魔力を収束させているイーターが!
「まずっ!」
「――■■■!!!」
世界が爆ぜたような眩い光を放ちながら、空間を引き裂き直進してくる魔力の奔流!
「私を忘れて貰っては困るぞ!」
しかしゴルディが俺の前に次元門を展開する! 行き先は――!?
「■■■!? ■………!!!」
「背後には気をつけるとよいぞ。まぁ、背後だけとは限らぬがな!」
究極イーターの背後にも次元門が開き、奴の攻撃をそのままお返しする!
「あの魔力量を飛ばす門を一瞬で……すげぇな……」
「なぁに! 我が世界限定よ! ワッハッハ!」
それでもすごい。間違ってもうっかり俺らの背後に開かないように気を付けてほしいけど!
「はぁっ!」
「■■■!?」
隙を付き追撃をしかけるメイちゃん!
「飛び道具は無駄だぞ!」
「■■■!?」
イーターの魔法は完全にゴルディックが防いでいる!
後は……奴を倒せるだけの攻撃を!
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