第91話 『ラ・ヘル』
「うわぁー夥しい数のスケルトンにレイス!」
村に到着し、いや到着する前から陰気さを感じる程、『ラ・ヘル』の影響力は強いらしい。
絶えず日が差さないというのも、彼女の魔力が影響してのことだろう。
さすがSSランク!
けど、同じSSランクであるクネクネやダンジョンボスのスーパーサウルスさんの姿を見ていると、あまり凄味を感じないなぁ~。
彼らもまともに戦ったら、このくらいの影響力や強さがあるのだろうか……。
「『ピュリフィケーション』! うむ、問題無いな!」
極級光魔法『ピュリフィケーション』。主に穢れを払うために用いられる魔法。
これが使えれば聖女認定されるらしいので、俺も聖女と名乗れる。
「は~っはっはっは! 聖女様のお通りじゃい!」
「コォォォ……」
「カタカタカタ……」
姿が薄くなって消失していくレイスや、砂のように崩れ去るスケルトン。
「おぉぉお怨!」
「――っ!」
突然叫び声を上げて現れるレイスの上位種っぽいもの、音もなく表れて突進してくる腕が4本あるスケルトンの上位種っぽいもの。
「くっくっく! この穢れ無き眼を曇らせることなど100年早いわ!」
『ピュリフィケーション』! 『ピュリフィケーション』! 『ピュリフィケーション』!
絶えず浄化魔法を唱えていれば何の問題もない!
「無駄よ、無駄無駄! 俺は無駄なことが嫌いなんだよ! だから……」
ガタッ!
「――っ!? ピュピュピュ『『ピュリフィケーション』』!」
何の問題もない!
今の物音は何でもなかったけど、何の問題もない!
「嘘です! ほんとは怖いんで! 早く出てきてラ・ヘルさ~ん!」
生前の記憶が強く反映されているのか、ゾンビとが幽霊とかマジ怖なんですけど!
カラ元気っていうか無駄に大声出してないと怖いんですけど!
維持張ってないでメイちゃんに来てもらえば良かったよ……。
けどなぁ……みんな今忙しいみたいだしなぁ……。
「……フゥー……」
「ふわわわぁーっ! やめて急に息を吹きかけないで!」
『ピュリフィケーション』!
「カタカタカタ……」
「んぎゃぁー! やめて急に足を掴まないで!」
『ピュリフィケーション』!
「口惜しや……」
「ひぃっ! やめて急にこの世を恨まないで!」
『ピュリフィケーション』! ……ん? 喋る奴もいるの!?
「……これは……奇跡、でしょうか……?」
「あ?」
ボロボロな真っ黒いローブに身を包んだ髑髏。身体は暗い空洞で頭と腕の骨が魔力で繋がっている状態のそいつ。
かつて目があったであろう空洞に、瞳のような光が明滅している。
よく見たら、今までの奴よりもひと際強い魔力を持っている。
諸事情でところかまわず浄化しまくっていたから気付かなかったわ!
恐らく、こいつが『ラ・ヘル』だろう。
手にはいかにも強力そうな、杖を持っている。ローブと同じく今にも崩れ落ちそうなほどボロボロだが。
「……ぐぅ……お、俺は……?」
「うぅ……ヘルン、さま……はっ!?」
ラ・ヘルの横に横たわっていた朽ちかけの甲冑を纏った2人の骸骨剣士も起き上がり、喋り出す。
理由は不明だが、どうにも意思を感じるような……。
浄化の魔法で何か変な物でも祓ったんだろうか。さすが聖女パワー。
っていうか、ちゃんと意思があるっぽいだけで怖さも半減だな!
「――っ! お嬢! すまねぇっ! お嬢を守れなかったばかりか、足かせになっちまった!」
「……いいのです、いいのですよ。私こそ、あなた達を何百年もこの地に縛り付けてしまった……」
「そんなこと――っ!」
何か始まったんだが?
「それに、あなた達は足かせなどでは――」
「いや! 私たちが人質になってしまったせいで――」
「こんなんなら、護衛なんて偉そうに――」
「違います。あなた達がいてくれたからこそ――」
「「ヘルン様っ!」」
「うるせぇーっ!!!」
叫びながらラ・ヘル(仮)の胸辺りをまさぐり、核っぽいのを握りしめる。
こちとら怖いのを我慢してここまで来たんだ!
意識を取り戻したか何だか知らんけど! 後悔を語り合うのに付き合ってられるかっ!!!
ラ・ヘルだかヘルンだか知らんけど! 何か似てる名前だから本人だろ!
「――ッ! うぐぅっ!?」
「オラオラオラァッ! いい反応するじゃねぇかぁっ! こっちはずいぶん正直だなぁっ!」
どういう意味だろうか。自分で言っててよくわからんな。
「――っ!? き、きっさまぁ! ヘルン様を辱めるマネをっ!」
「てめぇ! 許さねぇ! お嬢は今度こそ俺らが守ってやらぁっ!」
2体の護衛骸骨たちが俺に襲い掛かってくる!
「上等だゴラァッ! 姫様を守りたきゃ全力で来やがれぇっ!」
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