第77話 体のいい八つ当たり

「ムカつくっムカつくっムッカつく!」


 セイスのやろう! 澄ました顔でそんなことも知らないんですかって顔しやがって!

 ドストレスのやつはシンプルにムカつく! 何なんあれ!? 何なん!?


「ああああああぁぁぁぁーーーっ!!!」


 溢れる激情のままに、コーギーと出会った場所へと転移する。

 運が良ければまだそこのボス部屋前にいるはずだ!


 ◆◇◆◇


「余計なお世話だよっ! あたい達は2人でやっていくん――え?」

「な、何だぁっ!?」


 何だかお取込み中みたいだが、そんなの関係ねぇっ!


「おいお前ら。強くなりたいか? 3秒以内に答えろ。い~ち」

「な、何だよいきなり……ってお前はあの時のっ!」

「に~い」

「ちょっ待てよ! そりゃなれるもんならなりた――」

 よし、契約完了! 話の分かる奴で助かるわっ!


 そしてヘカトンさんたちが待つSSダンジョンへGO!!!


 ◆◇◆◇


「なっ!? 何だよ今のはっ!? まさか……転移、なのか?」

「おいそれよりも見ろよあれ! とんでもねぇ威圧感だ……っ!」

 コーギーとそのパーティメンバーであるおっさんがヘカトンケイルに気付く。


「その通り! あいつはお前らよりはるか格上! お前らだけで倒してみろ! 何、防御系の支援魔法をかけてやったから思う存分戦うがよい!」

「なんじゃそりゃぁっ!?」

「ふざけんなっ!」

「何であたい達まで!?」

「何で!? どうしてなんですかっ!? 何で私までこんなことにーっ! さっきまで寝てたのにひどいよアレク様ぁーっ!」


 ついでに聖奴隷も連れて来た!

 うるせぇうぜぇ! お前らが強くなりたいって言ったから特訓させてやってんだろうが!


 黙って八つ当たられろ!




「ギャーッ! いってーっ!?」

「死ぬっ! 無理死ぬぅっ!」

「ぷぎゃっ!?」

「ひーん!」

「ギャー死ぬぷぎゃひーん! アレク様のいけずーっ! 助けてぇーっ! んぎゃーっ!!!」


 聖奴隷め、さては余裕だな?


 ……。


 …………。


 ………………。


 ふぅっ! スッキリッ!


 ◆◇◆◇


「さて、一旦休憩だ!」


 スッキリしたところで、コーギーたちに碌に説明をしていなかったことに気付いた。

 しょうがないからここで一時ストップ。


「『ディバイン・レイ』!」

 ちゅどーんとヘカトンさんを消失させ、改めてコーギーたちと向き合う。


「「「……」」」

「説明をっ! 説明を求めますっ! 何で可愛い私がこんな目に遭うんですかーっ!? はっ! 可愛いからですね!? 可愛いから意地悪したくなるんですねっ!? たはーっ、まいっちゃうなぁーっ!」


 他のメンバーは喋る気力もなさそうだが、やはり聖奴隷は元気だなぁー。同じくらいボコられてたのに、不思議だ。うざい。


「これからお前らはここでみっちり修行してもらう! 1カ月以内にSランクダンジョンを制覇できるようになるのが目標だ!」

「……どういうことだってばよ」

「うむ。いい質問だ。お前らが強くなりたいと言ったからだ! わかったら黙って従え!」

 説明……めんどくさっ☆


「確かに言ったけどよぉ……俺らはあの化け物にボコられただけなんだが……」

「死ななかっただろう? しかし痛かったっただろう? ならば、全力で敵を倒すことだけを考えろ!」

 適度にバフを調整したからね、死なないまでも結構ダメージは入るはず。


「体の使い方、強化の使い方、攻撃の仕方。今まで低レベルの魔物にしか通用しなかったものを、ここで鍛えろ。そうすればいずれ強くなる!」

「んなめちゃくちゃな……」

 1カ月以内と言う短い期間でこいつらをAからSにするにはこんくらいスパルタじゃないと間に合わない気がする。


「だが……確かに言う通りかもしれん」

「モーリー!?」

 お? モーリーが乗り気になったか? ってか、コーギーじゃなかったのね……。


「俺たちは毎日同じことの繰り返し。危険に挑む後輩に助言をしつつも、俺たちは安全パイのオーガを倒す毎日だ……これでは、後輩たちに示しがつかない!」

「……そりゃそうだけどよぉ……」

 いい流れだ! このまま勢いにまかせちゃいなYO!


「それに、こいつはめちゃくちゃだが実力は確かだ。こいつの元で修行ができるなら、願ってもないことなんじゃねぇかっ!?」

「あぁ……『転移』を軽く使ってるが、伝説級の魔法だしな……人間が使うのなんて初めて見たぜ」

「さっきの化け物だって瞬殺だったね……」

「……よしっ!」


「俺たち、『質実剛健』4人! 今日からお前に弟子入りさせて頂く!」

「あたいたち『二輪の百合』もだよっ!」


「「「よろしくお願いします!」」」




「うむ! いい返事だ! お前らは必ず強くなる! 俺が強くしてやろう!」

 多分。

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