あなたの夢
入江 涼子
第1話
あたしは、昔から不可思議な夢を見ていた。
白銀の髪を肩まで伸ばし、淡い琥珀色の瞳の凄く綺麗な男性が何かを訴えかけるという内容だ。最初はただの夢だと気にしていなかったが。
けど、一年が経ち、二年と見続けたら。おかしいと思うようになった。仕方なく、友人に相談してみたが。「あんた、ふざけてんの?」と言われてしまう。それっきり、家族や友人に相談するのは諦めた。どうしたらいいのかと悩んだ。
そうする内に、五年が経っていた。
夢を見始めたのが大体、中学二年生の頃だった。現在は十九歳になり、フリーターになっている。彼氏もいないので気楽なものだが。
もう、十二月の下旬になっている。実家の両親と三人暮らしだが、お給料の内の半分くらいは入れていた。後の半分は自身のお小遣いに当てている。
「……
「今日はバイトが早く終わるから、食べるよ」
「分かった、あんたの分も作っとくわね」
母さんが頷いてくれた。あたしは既に、身支度を済ませている。今日は午前十時から午後四時頃までバイトがあるので、そろそろ行かないといけない。今は午前九時を少し過ぎたくらいだが。朝食を済ませると、手を合わせて言った。
「ごちそうさま!」
「行ってらっしゃい、ほら。お昼用のお弁当よ!」
「ありがとう!」
あたしは急いで、椅子に引っ掛けておいたショルダーバッグを取る。母さんが持っていたお弁当の包みを受け取り、中に押し込む。仕舞い込む事ができたら、玄関に小走りで向かった。
スニーカーを履き、ドアを開けた。閉めて自宅を出る。てくてく歩いてバイト先のコンビニへ行く。とりあえず、ショルダーバッグからスマホを出す。時刻を確認したら、午前九時二十分だ。大体、徒歩で十五分は掛かるから。到着したら、九時三十五分くらいにはなる。間に合うかなと思いながら、冬の青空を見上げた。
バイト先に到着したら、裏口から入る。既に先輩や店長がいた。
「おはようございます、店長、浦和先輩!」
「おはよー、水野ちゃん!」
「おはよう、水野さん」
店長や浦和先輩が答えてくれる。ちなみに、二人共に四十代半ばくらいの男性だ。女性の店員もいるにはいるんだけど、あたしより年上の人ばかりだった。店長は明るく朗らかで、年齢の割には若々しく溌剌としている。髪も濃いブラウンに染めていて洒落っ気があった。
反対に、浦和先輩は穏やかで落ち着いた雰囲気の人だ。年相応といった感じに見える。髪は黒髪だが、短くしていてこざっぱりとはしていた。
「水野ちゃん、もう開店してるからさ。準備をしてきなよ」
「分かりました」
店長が言ってきたので急いでロッカー室に向かう。私服から、制服に着替えに行った。
コンビニの制服に着替えて、髪を持ってきた黒のヘアゴムで束ねる。ピンも留めたら、ロッカー室を出た。ちなみに薄っすらとメイクはしている。再び、バックヤードに行った。店長が一人でいる。
「準備はできた?」
「はい、できました」
「じゃあ、棚の陳列をしてきてね」
あたしは頷くと、店長にお辞儀をした。店舗に向かうのだった。
店舗にて、業務を何とかこなす。このコンビニで働くようになってから、二年が経とうとしていた。棚に品物の陳列をしたり、掃除をしたりと忙しく動き回る。今は午前十一時半になっていた。後もう少しで昼食の時間だ。そう思いながら、レジでお会計もした。コンビニの仕事は多岐に渡る。最初は戸惑う事も多かったが、さすがに慣れてきた。
そうこうする内に、お昼休みになる。バックヤードに戻り、母さんお手製のお弁当を食べた。
「いや、お疲れさん。水野さん」
「はい、お疲れ様です。浦和先輩」
「まあ、まだ仕事は終わってないけどな。ほれ、あげるよ」
後ろから声を掛けてきた浦和先輩が手に持っていた物を手渡してくる。受け取ると、ホットのお茶だった。ペットボトルでゆうに、五百ミリリットルは入っている。
「ありがとうございます、先輩」
「お弁当を食い終わったら飲みなよ、店長には内緒な」
先輩はそう言って、また店舗に戻って行った。あたしはラッキーと思いながら、お茶をテーブルの上に置いた。
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