66.強力な護衛システム発動
うん、分かってた。きっと来るだろうなと思っていた。ただ……ルーカス様の設置した迎撃システムが思ったより強力だったことに驚いている。
「副騎士団長がここにいては、まずいのでは?」
「騎士団長が王宮を守っていますので、問題ありません」
いや、問題だらけだよ。こっちにリーコネン子爵がいたら、ソイニネン伯爵に手が足りなくない? まあ、今さら指摘しても遅いね。こちらにも「元第五王女殿下」という重鎮がいることだし。そのために警護を手厚くしたと思っておこう。
ぶつぶつ呟いていたら、エルヴィ様から指摘が入った。
「私はもう父王に見限られていますから構いませんが、あなたは今回の騒動の中心人物ですわ。陛下方が心配なさるのも当然です」
王家の秘密を知っていそうな占い師を得る作戦は公爵令息が失敗し、襲撃して誘拐や殺害も見破られた。宰相家にいる私を攫う可能性が高いってことかな。最悪、手に入らないなら殺せって命令するかも。そう考えたら、リーコネン子爵と騎士の増援は頼りになる。
たぶん、私より先にハンナを守ると思うけど……。その次くらいにエルヴィ様を守ろうとして、ヘンリに奪われる。最後に余った私、その頃まで生きているか心配だわ。
エサイアス様の性癖や好みを理解しているから、余計に不安になる。でも宰相夫人になるんだもの。このくらいの逆境は乗り越えないと! ぐっと拳を握る私は、また言葉がまろび出ていたようで……。
「はぁ、イーリス様はお口を徹底して塞いでくださいませ。全部溢れております」
エルヴィ様に呆れられてしまった。お口にしっかり蓋をしないとダメね。屋敷の警備を固める騎士は、王宮から派遣されている。普段から一緒に同じ部隊で戦う者同士で組ませ、外部からの侵入者を遮断するらしい。基本はルーカス様の以前の作戦と同じだった。
事件が片付くまで数日、エルヴィ様はプルシアイネン侯爵家の本邸に滞在する。隣国から事実上の宣戦布告が届いた以上、宰相家も襲撃される可能性があった。いっそ王宮に合流して、一緒にまとまった方が……と思うけれど、そうしない理由があるのだろう。
政オンチが余計な口を挟まないほうがいい。何にしろ沈黙は金である。ヘンリはエルヴィ様の手を握り、穏やかな笑みを浮かべた。彼はエルヴィ様だけを守るのだ。騎士団もそれは承知した上で、屋敷全体を守る布陣を敷いた。
「戦争が始まっちゃうのかしら」
不安が言葉になる。指揮を終えたエサイアス様は肩を竦めた。
「功績を上げたいので襲撃してほしいですが、その前に片付くでしょう。宰相閣下はやり手ですからね」
やれやれ、出番はなさそうだ。そんな態度でとんでもない発言をする副団長に、部下達は「またですか」と苦笑いする。いつものことなのね。本音が先に出てくる辺り、本当にいい性格をしている人だわ。
複雑そうな顔をしているハンナを見上げ、小首を傾げた。声に出さないけれど、この人を選んで後悔してないわよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます