【読書日記】「涼宮ハルヒの憂鬱」「断片的なものの社会学」

 ここ1か月くらい仕事が激烈な忙しさで動画編集はおろか本を読む時間も中々取れない日々が続いております。


 読書って疲れ果ててる状態だと身が入らなくて厳しいですよね……

 本を読むときの体調って読書体験にかなり大きな影響を与えるので「万全な状態で読むぞぉ」と温存していると気が付けばしばらく一文字も読めてないなんてこともざらに。


 どうにかして働かずに食っていけないものか……






 谷川 流「涼宮ハルヒの憂鬱」


 言わずと知れたライトノベルの金字塔。

 実はまだ読んだことがなかったので今更ではあるけど手に取ってみました。


 ニコ動育ちなのもあって、ハルヒの内容に一切触れずに生きていくことは不可能だったわけですが、今回初めて読んでみて想像よりもかなりまとまりの良い作品で驚いた。


 いかにもライトノベルなキャラクターたちの一方でシナリオはゴリゴリのSF。見る見るうちに話の規模が大きくなってきたかと思えば、最終的には地に足の着いた等身大の高校生たちの話として着地するので、この一冊だけでも余裕で楽しめる。


 昔はライトノベルと言えば単純に読むものだったけど、今では公募に投稿したこともある立場になった。(ラノベの公募は未経験だけど……)


 本作がスニーカー大賞の受賞作ということを踏まえると「公募の受賞作」という観点でも本作を見れるようになって、ちょっとだけ距離を近く感じられた。


 いや、もちろんこんな傑作書けるわけないんですけどね。


 「レジェンドラノベ」という見方のほかに、アマチュアの人が公募に投稿したら大賞を取っちゃった!という観点からもハルヒのことを認識できたのは今になって読んだおかげだと思う。






 岸 政彦「断片的なものの社会学」


 これまでは読書=小説というレベルの小説信者だったんですけど、最近ちょっとずつエッセイとか新書にも手を出すようになってきたんですよね。


 本書もどこかで高評価なのを聞いて、ずっと読みたい本リストにメモっていた一冊。


 感想を言語化するのがあまりにも難しいんですけど、なんというか人生を変え得る力のある書籍だと思いました。


 社会学者である著者が行ってきた数々のインタビューの中で、どこにも書けないなんでもないエピソードが語られる本書。


 小説というのは当たり前だけど作者が何らかの意図をもって様々な描写がなされて、物語が展開していく。


 それに対して、本書で語られるエピソードはどれも実話で、だからこそ前後の文脈やフィクション性みたいなものが徹底して排除されている。


 そういう意味では「小説」というか「物語」からは一番遠い位置にある本のような気がした。


 この本の中に登場する人たちは、私から見ればだいぶアウトローだったり普通ではない風に感じるんだけど、そういう人たちを見ていると「自分ももっと自由に生きていいのかな」と思えてくる。


 とはいえ、本書は「みんなもっと自由に生きていいんだよ」なんてことを言ってるわけじゃない。


 何かを教えたり、推奨したり、そういうことはこの本の中で一切行われていない。それもびっくりするくらい。


 著者が恐ろしくフラットで何なら「私たちがこの体、この社会に生まれたことはただの偶然で意味なんてない」というスタンス。


 これは人によっては中々虚しい考え方に感じられるかもだけど、個人的にはこういう思想の方が人を救う力があると思ってる。ちょっと仏教っぽいのかな?


 あと、著者の言語化能力がすんごくて、これは……!というような金言が山ほど登場する。


 例えば

 『それについて何も経験せず、何も考えなくてよい人びとが普通の人びとである。』

 という一節。


 普通の人って何だろう?と誰もが考えたことのある問いにこれほど的確に答えているのは初めて見て感動した。


 普段エッセイを読まない私ですが、これはすごく良い本だと思います。


 多分、もっと元気のある状態で自室でじっくり読んだら一生忘れないレベルになったであろう感覚はあるんですけど、通勤中に電子書籍で読んじゃったのがもったいなさすぎる……


 やっぱり読書って作者と読者の一対一の勝負だからさ……!

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