読書日記(時々スコップレポート)
秋田健次郎
【読書日記】「わたしを離さないで」「ハンチバック」
一作目
カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」
ノーベル文学賞作家の作品。作品全体の雰囲気がめちゃくちゃ刺さって、久しぶりに作家レベルでファンになった。
舞台はイギリスで、しかも設定がすこしSFチック。日本生まれ日本育ちの私とはまるで共通点がないはずなのに、不思議と自分の幼少期の頃を思い出した。そういう、普遍的なノスタルジックが作品全体からあふれ出ていて、目指したい文章表現が詰まっていた。
個人的にあらゆる感情の中で「ノスタルジック」が一番好きだし、エモいと思ってるんですよね。幼少期(小学生あたり)の人間関係だったり、感情の機微だったりがこれでもかというくらいに表現されてる。
多分、作品の評価として主流なのはこの作品のSF設定部分? とは思うけれど、ここは他作品と設定が被っていた(多分、本作の方が先のはず)というのもあって、かなり序盤で分かってしまった。とはいえ、本作を退屈せずに読み通せるのは、このある種ミステリー的な要素が次のページを読ませる推進力になっているからだとも思う。
単純なストーリー面ではなくて、一つの文学作品としてはここ最近読んだ小説の中で一番刺さった。同作者の他作品も読まないと。
ノスタルジックを感じたい人におすすめです!
二作目
市川 沙央「ハンチバック」
芥川賞受賞作品。適切な感想が思いつかないけど、読了後に出てきた言葉は「いかつい」だった。あくまで関西人が俗語として使うふわっとした意味であって、厳密な意味ではないですけど。
私が普段、知覚している世界とはまるで違うものを全編通して浴びせられて、半ば放心してしまった。紙の本を読むことへの矜持は健常者の傲慢であるという視点には衝撃を受けた。
こういう作品を読むと多様性の際限のなさを実感する。少し前に読んだ朝井リョウの「正欲」も多様性を扱う作品として示唆に富んでいたんですが、本作は著者が重度障がい者という当事者であるからこその圧倒的な重みがある。
そりゃ、芥川賞取るよなぁ。
これまで持ち得なかった新しい視座に触れたい人におすすめです!
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