第6話 キゾーク、対談、煽る【他者視点、説明回】
一方その頃キゾークは応接間にいた。
「お待たせしたねキゾークくん」
太った……いや。恰幅のいい男が部屋に現れた。
名前はフトーイ。
現在この国でそこそこの権力のある辺境伯である。
「フトーイ殿。今日ここに来た理由は分かっていただけてるとは思うが」
「勇者パーティについてだろう?」
この世界には勇者パーティが存在する。
勇者パーティの目的は魔王の討伐。
そしてその勇者パーティの管理を任されているのがこの男フトーイなのである。
だがここで問題がいくつも発生する。
「今まで勇者パーティとして魔王討伐に行って帰ってきたメンバーはいない。この件についてまず聞きたいのですが」
鼻で笑うフトーイ。
「全員死んだんだろう。未熟者の集まりだったようだな」
「誰1人帰ってきてないのはおかしくないですかな?」
「何を言いたい?」
キゾークは手持ちのカバンから1枚の書類を取りだした。
「こちらを見て頂きたい。フトーイ殿に関する噂や情報が集められている」
「ふむ」
目を通すフトーイ。
そこには色々と書いてあったが、フトーイが気になったのは一つだけだった。
「私が人身売買をしている、と?」
「えぇ、この国では奴隷制度も人身売買も禁止されている。この意味がお分かりですよね?もし本当に人身売買していたらあなたはこの国からバイバイですよ」
「20点くらいのセンスだな。センスが足りんよ」
「ありがたきお言葉」
2人は小さく笑ってから続けた。
「あなたは勇者パーティを教育していない。人身売買に使っている。下劣だ」
「言いがかりだなキゾーク」
そう言うと立ち上がるフトーイ。
部屋の扉を開けた。
「侮辱罪で報告するぞ。今なら見逃してやる」
「私に確認させてはいただけませんか?あなたの屋敷で勇者パーティの奴隷を保管しているのでは?していなければ問題ないでしょう?」
「帰れくだらん。かーえーれーかーえーれー」
そこでキゾークはとっておきの切り札を出す。
「あなたが直近でここで預かった子ですが、実は私の知り合いでしてね。念の為位置情報を知らせる魔法道具を持たせておいたのですよ」
「仮にそんなものがあったとしても私物は全て預かっている」
「ノンノンノンノン。体内に埋め込んでいます。あなたでは気付きようがない」
「ふん、なかなか面白い話をするな」
パタン。
扉を閉めてフトーイは戻ってきた。
「で、その位置情報は今どこにある?」
キゾークは下を指さした。
「この屋敷の下ですよ。まだ生きている。あー、可哀想に奴隷として密売されてしまうなんて」
やれやれ。
キゾークはそう言ってからこう続けた。
「このまま確認させてくれないのであれば私こそ報告しますがね、フトーイ殿」
「分かった。分かったよ。キゾーク。なにが目当てだ?金か?」
「金?そんなわけないじゃないですか」
クスクス笑ってからキゾークはこう言った。
「勇者パーティ育成の権利を私に譲って欲しいんですよ」
ピクリ。
フトーイの眉が動いた。
「なぜだ?」
「金ですよ。金」
そう言って指で丸いマークを作ったキゾーク。
「勇者パーティの育成さえできれば金も名声も全てが思いのままっ!違いますか?現在あなたが思いのまま好き放題やってるのと同じだ」
「それは譲れん」
「ではどうしましょう?」
フトーイは懐から銃を抜き取った。
「めんどくせぇからお前殺すわ。ばーか」
口元を歪めるキゾーク。
「そんなもので脅しになるとでも?」
「残念だがここでは魔法は使えない。よって、貴様は私に撃ち殺されてジ☆エンド」
キゾークは笑った。
笑いながらスマホを取りだした。
「ですってよ。王様。話聞きましたかー?」
そこから王様の声が聞こえた。
『なるほど。全て聞かせてもらったぞお前ら。よし。フトーイを虐殺することにしよう。我が軍勢がそこに行くまで持ち堪えよ!キゾーク!』
キゾークはスマホをしまった。
フトーイは銃を向けたままだ。
「どうぞ?撃ってみてください。罪を重ねるだけだ。あー、もしかしたら死ぬより苦しい思いをするかもしれない」
フトーイは悩んでいた。
ここでどうするべきなのか。
待っていても自分にあるのは死だけだ。
それよりも
「おい、遅くないか?イフリートとかいう奴はいつになったらここに来るんだよ」
その時だった。
バタン!
部屋の扉が開いて巨乳アーマーが入ってきた。
「フトーイ様。イフリート殿がいません。いったいどこへ」
「なんだと?!それは本当か?というよりお前なんで目を離したんだよ馬鹿が!」
巨乳は顔を赤らめた。
「そ、それが……あまりにも立派だったから//////」
「立派ぁ?何の話だ。えぇい!」
そこでキゾークは新しい紙を取りだした。
そして読み上げる
「F,G,G,H,H」
「それはなんだ?」
「ここに勇者パーティ候補として連れてこられた女の子のカップですよ。貧乳がいないんです。巨乳は高く売れますか?」
「まさかそんなことから気付いたと言うのか?」
キゾークがそこで煽るように言ってくる。
「気付かないとでも思ったのか?ばーか。それよりねーねー、早く撃ってよ。その銃で。もしもーし聞こえまちゅかー?撃てないでちゅかー?撃ち方分かりまちぇんかー?」
「クソうぜえぇぇぇ!!このジジィ!」
キゾークは口の両端を引っ張って舌を出した。
「あっかんべ〜。ばーかばーか」
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