【完結】実は元最強のプロゲーマー、配信文化が根付いた異世界でようやく実力が認められる〜転生してダンジョン攻略を配信していたらS級ボスを無自覚にボコってしまいました。
東田 悠里
第1話 とある元プロゲーマーの最期
「あと少しでラスボスクリアだけど……みんな、ついて来れてる?」
俺、
本来であれば装備やアイテムを整えに整えた上で、相手の動きを完璧に熟知していないと倒すことすら難しい。巷では死んでリトライをする前提でゲームをすることが常識となっているせいか死にゲーとまで言われているゲーム。
「少なくともゲームの中で最低1000回は死ぬことを覚悟せよ」という広告が打たれたほどだ。
しかし俺は装備なし、かつ当たったら即終了の縛りプレイでダンジョン攻略を定期的にしていた。
そしてラスボスである『神の化身』に挑むが、攻略の際に何百回もモーションを見て覚えたおかげで作業のようにラスボスを追い詰めていく。
ダメージを与えて、第二形態、第三形態とパワーアップしてモーションが変化してもやることは何も変わらない。
ディレイで攻撃タイミングをずらされようが、パターン化された敵で攻撃のタイミングが読めるのであれば対処は簡単なのだ。
「はい、これで終わり」
相手にダウンを取った後のR2ボタンでの起き上がり攻撃でラスボスを倒した。
そして俺は『死にゲー』ですら、ノーダメージでクリア達成したという意味にもなる。
『はい、チーター乙www』
『お前、チート使ってクリアして楽しいの??』
『ここまでズルしてイキれるって最低だな』
『人として終わってる。まじできもい』
俺の配信リスナーのコメントに半笑いして返す。
「いや、これでも元プロゲーマーなんだけど」
そんな縛りプレイでの動画を視聴しているリスナーは30人しかいない。コメントしているやつ全員は俺のアンチだ。
「見てくれたリスナーのみんなありがとう! 今度は違うゲームでRTAや縛りプレイ動画を配信していくので! 気にいってくれたリスナーさんはチャンネル登録よろしくお願いします~!!」
でもこの中に俺のファンがいるかもしれないと信じて明るく振舞う。
俺は配信を切って、コントローラーを雑にぶん投げた。
冷蔵庫から缶ビールを取り出した後に、乱暴にソファに座る。
「なんか昔ほど達成感が無くなったよな」
俺は無駄に冷えた缶ビールを開ける。プシュ!! と軽快な音が立ち、喉に一気に流し込む。
1フレーム――0.03秒の世界で戦うためにアルコールを取っていなかったのだけど、少しでも自分に枷を嵌めるために、あえて飲み始めた。
最初は慣れない麦芽の苦みも今となっては美味しいとさえ感じるようになってしまった。プロゲーマーとして現役だった頃からしたら考えられない事だ。残念なのはお酒を飲んだからといってあまり変わるものでもなかったけれど。
「今日はもう寝るか……」
かつてプロゲーマーYUTAとして、アクションゲームであれば内容を問わず様々なゲームで世界タイトルを獲得した。当時はeスポーツ界の生きる伝説とまで言われたけれど、別に称賛を得たいがためにゲームをしていた訳ではない。難しい内容のゲームをクリアすることで得られる達成感が堪らなく愛おしいから続けていた。
でもいつしか世界タイトルを獲ったとしても、俺の達成感は満たされなくなっていった。そうして引退した俺だが、引退して何かが変わったかと言われれば、何も変わることはなかった。
明日もきっと変わらない日を過ごすのだろう。退屈すぎて嫌になる。
どうせ配信したってアンチコメントばかり。俺の居場所はこの世界にはないだろう。
「はぁ……本当にクソだな」
俺は一言、呪詛を振りまくように呟く。
そして、ゆっくりと深い眠りにつくのだった。
「佐藤優太様。魔王を倒すために貴方の力をお借りできないでしょうか?」
目が覚めると翼の生えた女が俺を見下ろしていた。
辺り一面には満天の星が広がっていた。
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