第24話 少女たちだけのハッピーエンド
【表紙】https://kakuyomu.jp/users/akatsukimeu/news/16817330668804704296
「一つだけ、私から条件出していい?」
私の声がいきなり聞こえてきたのは、メイにとっても驚きだったらしい。
カンナとメイが私の方を見る。
「美雪ちゃん、意識あったの?」
カンナに問いかけられたが、意外だったのはメイも同じだったようだ。
「まぁね。ずっとアンタらの思い出話を聞いてたわ。メイ、正直私は、カンナほどアンタに心を許す気になれない」
「そう、まぁ、美雪ちゃんのこと殺しちゃったし、仕方ないよね」
メイは寂しそうに笑う。
「それでも、僕は姉さんと美雪ちゃんが愛し合ってるのを眺めてるだけで満足だから」
たしかにメイは、私がここでカンナと再会して愛し合ってる時、遠くからそれを楽しげに眺めていた。カンナは見られてたことなんて気付いてなかったみたいだけど。
「へぇー、すべてが欲しいとか高らかに宣言してたくせして、実は臆病なんだぁ。アンタもつまらない人間だわね」
「…………美雪ちゃん、何が言いたいの?」
私が挑発していることに気付いたらしい。メイはむっとしたようだ。
「ホントは私に骨の髄まで愛してほしいんでしょ? カンナのフリして私に抱かれてた時、アンタ、とーっても幸せそうだったもんね? 本当の望みはそれでしょ? 私の愛が欲しい。これだけ頑張ったのに、本当に欲しいものが手に入らないなんてイヤでしょ?」
「……………………」
メイは黙り込む。図星だったようだ。
「私、アンタのこと愛してあげてもいいよ」
「……ホントに、いいの?」
「ええ、カンナと同じぐらい、骨抜きになるほどたっぷり愛してあげる」
メイの瞳にこれ以上ないほどの輝きが溢れた。
「でも条件がある。それを聞いてくれたら私はこの世界でアンタたち二人を愛してあげる」
「……なに?」
「アンタたちのパパとママ、蘇らせてあげて」
「え?」
カンナもメイも、ぽかんとした顔をした。
「なにそれ、いきなり、なんで美雪ちゃんがそんなこと言うの……?」
「アンタ、自分で気づいてないの? それとも冥界の住人になったから、生き死にについて鈍くなってる?」
メイは首をかしげてた。
私は言う。
「親の死の責任から解放してあげたいの。カンナも、メイも」
メイはあっけにとられ、そしてカンナの方を見た。
カンナも驚いている。
私は見ていた。
自分の両親の死の元凶が、ヴァジュラのもたらした呪いによるものだと知って、カンナがこれ以上ないくらい傷ついたところを。
特にママに至っては、メイがカンナを助けたくて殺したようなもの。
メイは、大事な姉さんを死の淵まで追い込んだのはパパとママだと思ってたから、まったく思い至っていなかったようだが。
カンナはどれだけ嫌われても、パパとママの事だって好きだった。
なのにその死が自分のせいだったと知り、カンナは言葉にできないほどの苦しみを抱いていた。
「メイ」
カンナはメイを抱きしめる。
「メイにもしそんなことができる力があるなら、お願い、パパとママのこと、助けてあげて」
「後腐れなく、三人で暮らしましょう。アンタならできるでしょ?」
メイの目から、一筋の涙。
でもその涙は、これまでのどす黒い感情が滲んだようなものではなく、とても澄んでてさわやかな涙だと美雪は思った。
「ありがとう、姉さん、美雪ちゃん」
メイが初めて、心からの笑顔を見せた。
「僕は、すべてを手に入れる」
蓼原メイは、お姉さんの作ったお菓子の国で、大好きな姉さんと、そしてもう一人、大好きな女の子の三人で、永遠に幸せに暮らすのが夢だった。
そしてその夢はいま実現した。
メイの右隣では姉さんが、メイの左隣では美雪ちゃんがいて、三人は柔らかいベッドの上で、穏やかに眠っていた。
「ああ、あたたかい……」
【閲覧注意!!】ヤンデレ百合少女は殺してでもハッピーエンドを目指します-冥き乙女のリリーフィリア- 赤月めう @akatsukimeu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます