第9話[涅槃]罰の炎に焼かれて。

【表紙】https://kakuyomu.jp/users/akatsukimeu/news/16817330668804704296


 気付くとそこはお菓子でできた巨大な教会だった。

 頭が働かない。空から叩きつけられて、頭が砕けたからなのだろうか?

 私は教会の入り口に突っ立って、ぼんやりとしていた。

 傍にはカンナが座っていた。

 カンナは私の方を見ていない。教会の檀上の方を見つめている。

「カンナを忘れたい?」

 私が何度も口にした言葉を、カンナはオウム返しのように口にする。

「……あんなことするくらい、好きだったのに?」

 あんなこと?

「……………………あ」

 私の目の焦点が合って、壇上にいる二人の女の子をとらえた。

「良い時も悪い時も」

「富めるときも貧しきときも」

「病めるときも健やかなるときも」

「死がふたりを分かつまで――」

「いいえ」

 "美雪"はカンナの顔にそっと触れる。

「死んでもずっと一緒でしょ?」

 "美雪"は、カンナの額にそっと口づけをした。

「私とカンナの結婚式ごっこ」だ。

(そう、私は本当にカンナのことが好きで、好きで……好きで……)

 はっとする。

 気付くと私は、壁の巨大な十字架に縛られていた。

「ひっ――――!」

 縛り上げられた私の事を、カンナが見上げている。

 そしてその目から真っ赤な涙がこぼれていた。

「美雪ちゃんがそう言ったんでしょ?」

「いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 身体がカッと熱くなる。何事かと思って腕を見ると、体中に"くち"が現れていた。

 その"くち"たちは私の声で叫んだ。

「「「「「私はカンナを愛してる。私はカンナを愛してる。私はカンナを愛してる。私はカンナを愛してる。私はカンナを愛してる」」」」」

「いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 私は絶叫し、強い罪悪感の炎に包まれた。


 カンナ、あなたは私のもの。

 ずっと私だけを見てればいい。


 私はなんで、カンナにあんなことをしちゃったんだろう……。

 カンナは嫌がっていたのに。

 私はカンナの事が欲しくてたまらなくて……。

 あんなことをして、追い詰めて、

 カンナを死なせてしまったのだ。


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