社畜、打ち合わせをする
斎藤にプレストの情報を聞いた翌日、俺は『結晶の洞窟』の近くのカフェに来ていた。
今は……10時25分。
あと5分か。
俺は時計を見ながらそう思った。
ここに来ている理由は他でもない。
配信で決めたギルド開設、これの詳細を打ち合わせるためだ。
流石に1人で全部決められないし、もしできたとしてもするわけないからな。
「ストさん!」
俺がそう思っていた時、俺のよく知る声が聞こえてきた。
「おう、ここだ。シロ」
俺はそのままシロの方を4人用の席に案内する。
30分より少し早くついたのか。
あの天才はもうすぐ来るのか?
「あの、もう1人のギルド開設を提案した人はまだ来てないんですか?」
「あぁ、まだ来てない。でもさっきラインからもうすぐ着くって言ってたから先に打ち合わせをしても大丈夫じゃないか?」
「そうですね。じゃあ始めましょうか」
そうして俺と白は打ち合わせをは始めた。
「まぁまず大前提として事務所をどこにするかだよな」
そうなのだ。
ギルドを登録するためにはそれ相応の設備の揃っている施設が必要なのだ。
そもそもギルドというのはダンジョンをより効率よく攻略するためのものなのでしっかりとした設備などがギルドを設立する規則となっているのだ。
ついでに俺の家も建てたいしな。
いやまぁ事務所も大事だけど魔導武具アーティファクトを持っているし流石にアパートじゃ厳しいだろうしな。
「ついでに俺の新しい家も建てたいしな」
「どういうことですか?」
俺がそう呟くと白は不思議そうな顔をして聞いてきた。
そうだった。
俺なにもシロに言ってなかったな。
「えっとな」
俺はシロに理由を説明するとシロは『なるほど』と納得してくれた。
「だったらもうストさんの新しい家と事務所を兼任すればいいんじゃないですか?」
「え? どういうこと?」
「いやだってストさんは魔導武具の保管をしたいんですよね? だったらしっかりとした設備が必要じゃないですか。事務所も設備が必要ですし新しく作った家の一部を事務所にしたらって思ったんですけど。ストが良ければですが……」
え、そうじゃん。
確かにそうだ。
俺が求めている家も事務所もどちらも良い施設が必要だしよく考えれば兼任すればすぐに解決できる。
できるかわからないけど家を大きくしたら一人暮らしだし大丈夫だろう。
「それはいいけど、兼任するためには結構大きくしなきゃいけないんだよな」
そう、そこが問題なのだ。
大きくするということはそれだけ金がかかるということだ。
ダンジョンの奥に潜って1ヶ月くらい頑張れば一億ぐらい稼げそうではある。
まぁ、死ななければの話だけど。
俺がそう思ってると、驚くべきことをシロは簡単に言った。
「あっ、もちろん私は支援しますよ? お金とか」
「マジ?」
「もちろんです。私のギルド事務所になるわけですし。それに異常個体イレギュラー戦では助けてもらいましたし」
「いやでも、結構かかるよ? 金。大丈夫?」
「大丈夫です、っていうか援助させてください!」
「ありがとう、お願いするよ」
これは本当に助かる。
もし立てるとしても時間がかかるから視聴者に作ったと報告するのは結構後になりそうだったんだ。
それを避けられるのは本当にありがたい。
「あ、ストさん! ……とシロさん! 俺です!」
俺とシロが資金についての話を終えた時、ちょうど天才が来た。
「お、来たな」
「来ましまたね」
「すみません、遅れちゃって」
「いやいや、大丈夫だ」
遅れたって言っても普通に本来の予定通りなんだ。
別に実際遅れたわけじゃない。
「あっ、それとさ。事務所の資金については大丈夫だからあとは場所と設備だけだ」
「そうなんですか!? そこのところは俺は何もできないので本当にありがたいです! あっ、これ。自分なりに事務所の施設とか場所とか調べてきたんですけどどうですかね?」
天才はカバンから資料を取り出してテーブルに置いた。
えーと、どれどれ?
……おい、これすごくないか?
事務所に必要な設備はもちろん、それを作る建設会社、事務所の場所も書いてある。
「おい、シロ。これ凄くないか?」
「そうですよね、私とストさんのよく行くダンジョンの中間らへんにあるし建設会社も信頼できて技術のあるところ、セキュリティもバッチリです!」
「さらに配信機材などが売ってある大型ショッピングモールもあるから食料とかそう言ったものも手に入りやすい。確かにここは資金面を気にしないとするとかなりの好立地だ」
俺とシロが資料の内容を絶賛すると天才は実に嬉しそうにしてそのまま説明を続けた。
「ここの場所、さらにこの事務所だと一億円くらいはかかりますね」
あっやべ、言い忘れてた。
「そうだ、その事務所俺の新しい家と兼用したいんだがそれでも大丈夫そうか?」
「いえ、それは大丈夫です。事務所は大型の物を基本としてるので狂いはありません」
「大型? なんでわざわざ」
俺がそういうと、呆れたように説明を始めた。
「あのですね、ストさん。あなたの影響はとても大きいんですよ? チャンネルももうダンジョン配信者の中では一位を争うほどの人気です。そんな人がギルドを設置するんですよ? 人がたくさん集まるに決まってるじゃないですか?」
え、マジ?
そこまで人気なの?
俺は慌ててスマホで自分のチャンネルを確認したところそこには驚く情報があった。
「はあ!? チャンネル登録者150万人!?」
「だから言ったでしょう? 影響があるって」
俺が驚いていると天才だけでなくさらにシロまでも
「私だっていつか抜かされるかもって危機感を感じてるんですよ? まぁ、ストさんとコラボすれば私も伸びるんですけど……」
マジか。
最初は絶対に勝てないと思ってたシロが危機感を感じてくれているのか。
うわぁ、それはマジで嬉しい。
成長を感じるわ。
と、本題からズレてるな
「ともかく、資金面は問題ないんだよな?」
「はい、大丈夫です」
「では?」
「うん、これで行こう!」
俺が事務所の提案を了承すると嬉しそうに天才が言った。
あっ、そういや聞き忘れてたな
「今すぐ連絡しますね!」
「ちょっと待って!」
「なんですか?」
「名前は?」
「そういや言ってなかったですね。俺の名前は高橋晴翔たかはしはるとです、それでは!」
そうして打ち合わせがおわった。
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