第15話 寝起きパジャマは勘弁して下さい!
ロースタレイ帝国の副都シーウンについては道中でガブリエルが教えてくれた。
ロースタレイ帝国最大の商都であり、帝国の経済の要であること。この都市を牛耳る議会派はシーウン出身の富裕な市民層で固められていること。大陸指折りの巨大な要塞都市であること。
「お帰りなさいませ、アリスタ殿下」
着地してフレスベルクから降りた俺達の前に、どこか慇懃無礼な態度の青年が進み出てきて、皇女殿下に話しかける。
「そのご様子ですと交渉の首尾は……」
「無論。独占に成功したぞ、ハーク。この二人は王国が追放した優秀な人材だ。知っているな?」
「ええ、元トパーリン公爵令息と元ケルテラルス侯爵令嬢の御二方とも存じ上げておりますとも。
しかし王族は何を考えているので?元トパーリン公爵令息はともかく、元ケルテラルス侯爵令嬢を追放するなぞ正気とは思えませんが」
「元トパーリン公爵令息には婚約者がいただろう」
「ええ、アングラール公爵令嬢。まさか……」
「うむ。妾でも愛人でも何でも良いから二人とも抱え込んでおけば良かったものをな。スキル云々で見下し追放するなど、あの国の考えはどうにも分からん。
それと此奴は魔王の令息エルマー殿だ、最上の客人として遇せ」
青年は俺達に向けて優雅な、ただし感情の読めない微笑みを浮かべると一礼する。
「承知いたしました。――皆様、私はハークレオ・デズと申します。議会派の副議長を務めております、どうぞよろしく」
「よろしくお願いします!」
荷物を背負ったエルマーが元気よく返事した。
皇女殿下は青年について簡単に説明してくれた。
「アルセーヌ、ガブリエル。この煮ても焼いても食えぬ男は今や議会派を影から操る恐ろしい権力者だ。己にとって利するものに対してだけ、とても協力的だぞ」
翌日、しっかりと眠って起きた俺の前にパジャマ姿の皇女殿下がヒョイと現れた時は人生が終わったと思った。
「が、ガブリエルーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
俺の絶叫に一緒に寝ていた(その所為でベッドが超絶に狭かった)4人が飛び起きるし、隣部屋からガブリエルがすっ飛んできた。反対の隣部屋から、しばらくして寝ぼけ眼のエルマーが枕を抱えてやってくる。
「何て不潔な!アルセーヌ、いい加減にして!」
「違う違う違う違う俺は何もしてない何もするつもりはない」
「何だ寝間着姿の朕に何かするつもりだったのか」
意地悪そうに皇女殿下は笑う。
「アルセーヌのスキルがどれほどのものか試してやろうと思ったのだがな」
「いいですいいですいいですいいですいいです」
犯罪だろ。犯罪以外の何だって言うんだ。拷問されて火あぶりにされても文句は言えないぞ。
「それが『4凶獣』と共寝している男が言う台詞か」
「だって一緒に寝ないと泣かれるから!」
「女の涙に弱い男ってどうかと思いますわ」
ガブリエルの一言が俺の心臓に突き刺さった。
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