編集日和
堕なの。
編集日和
夏至って、実はそんなに暑くない。6月の下旬に訪れるそれを思い返してみる。夏至の後が夏本番という感じだ。
それと同様に、冬至もそこまで寒くはない。と言いたいところだが、悴んだ手に息を吹きかければそろそろ指先が壊死してしまうなんて思う。手頃な場所で暖を取らなければいけない。
近くのカフェに入ってカフェオレを頼んだ。一口飲んで、ほう、と息をつく。窓の外の人たちは今日も忙しなく動いている。
知り合いがカフェの目の前を通った。私には気づかずに進んでいく。殺風景、そんな感じ。
そろそろ出ようと席を立てば、低身長な自分が窓に映る。女の子は小さい方が可愛いと言うが、やはり150cmは必要だ。
「ごめん、財布忘れちゃった」
自分の後ろ側の二人組の男女の会話だった。見るからにヒモそうな男と面倒見の良さそうな女。
「奢って?」
「ツケろ」
女性の方はそれに取り合うことなく自分の分だけ払って出ていった。相変わらずの見た目で決めつける癖が出ていたようだ。私も会計を払って店を出た。
寒空が広がる。その下で目的もなく彷徨った。知っている景色は知らない景色へ。ゆっくりと流れていく景色と時間がもたらすものは何もない。
「おとーさん!」
近くの公園では小さな子どもがブランコで遊んでいた。お父さんと言われた人は、カフェで見たあの人で、なにか事情があったのではと考えてしまった。
「どうした。もっと高くか〜?」
ここだけ切り取れば良いお父さんだ。私の何倍も善人である。ここだけ切り取れば。
「アホらし」
もうどうでも良くなって、家へ戻ることにした。一日を掛けて、都合の良いように見た景色を編集していたかのようだ。家へ変える足は重くて、閉じこもっていれば楽だったのにと悪態をつく。最悪の冬至は心まで冷たく凍らせて終わった。
編集日和 堕なの。 @danano
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