第6話 刑事と佐藤楓

青木は動かない。

日野が慌てながら言った。


日野 : 狩野!警察を呼んで!

狩野 : 警察!?

神崎 : 死んでる…

富永 : うわぁマジか!

神崎 : おい!富永!カメラはやめろ!

富永 : まぁまぁ硬い事を言わずに!

楓 : 毒殺ですか?

富永 : 分かるのか姉ちゃん?

楓 : いえ…専門家ではありませんので分かりません。

富永 : なぁんだよ!でも毒かもなぁ。異常な苦しみ方だったしなぁ。


カメラマンの富永はカメラをまわしつづけた。

時期に救急車と警察と刑事も到着した。


女刑事 : 刑事の佐藤奏です。今回は自殺か事件か捜査します!みなさん動揺されているかと思いますが捜査のご協力をお願いします。今から事情を聞かせてもらいます。


すぐに全員が佐藤楓の顔を見た。

楓は苦笑いをして誤魔化すが、どう見ても女刑事と楓の顔はそっくりだ。

奏は楓の姉である。


中島 : 楓先生の姉妹ですか?

楓 : あぁ姉だよ。

中島 : もしかして楓先生が事件に深く関わらない理由はお姉さんに会いたくないからですか?

楓 : 姉に会うと大変なんだよ…


奏が楓に近づいてきた。


奏 : 楓こっちに来てたのか?

楓 : 急な旅行だったので…

奏 : 旅行ね…どうせ仕事したくないからフラフラしてるだけだろ。小説家より刑事になりなさい。やりがいがある。

楓 : 私は刑事になりませんよ!

奏 : そう、気が変わったら私にいつでも連絡しなさい。あなたには期待してるのよ。じゃあまた事情聴取でね。


奏は華麗に去ってゆく。


中島 : お姉さん強そうですね…

楓 : 前に知恵をかしたら毎回この調子。姉は鋼のメンタルで怖い人なんだよ。


現場になった店で個別で事情聴取を受けた。

最後に楓を事情聴取する。

刑事の佐藤奏と吉岡宏太が事情を聞く。


吉岡 : 初めて!吉岡です!楓先生の大ファンです!

楓 : それは、ありがとうございます。

吉岡 : 捜査ご協力をお願いします!


忠犬みたいな青年で姉に従順そうだ。


奏 : 楓は被害者と同じものを食べてるけど体調は大丈夫か?

楓 : お陰様でピンピンしてます。

奏 : そう良かった。今回、青木さんは自殺の線は薄い。殺人の可能性が高い。楓は犯人の目星はついているだろ?

楓 : いえ、情報がないので…

奏 : じゃあ刑事の私がうっかり情報を話そうか?吉岡!

吉岡 : では、全員から聞いた事情聴取の内容を読み上げます。

楓 : 吉岡!読み上げるなー!

奏 : 楓、何か文句でも?

楓 : いえ何もないです。

奏 : 心して聞きなさい。


吉岡は事情聴取の内容を楓に教えた。

奏刑事は事情聴取で青木は自殺する様子があったか聞いて更に青木を恨んでる人やトラブルになった人を聞いた。

最初に事情聴取を受けた照明の狩野の話…


狩野 : 青木は自殺するような人間ではありません。確かに最近は日野さんが青木に振られて現場の空気は悪かったけど。そんな事で彼女は落ち込んだりしませんよ。それにカメラマンの富永さんが青木が振ったところを撮って、データがほしいならお金くれって言われても青木は裁判をするって強気でしたから自殺はありえません。


次にカメラマンの富永の事情聴取では…


富永 : ちょっと冗談でお金くれって言ったら青木が怒ってさぁ。青木はスポンサーのお気に入りだからってディレクターも俺に怒ってくるし。面倒でしたよ。でもよぉそれくらいで青木を殺そうなんて考えませんよぉ。まぁ自殺はありえないから誰かがキレてやっちまったなぁ。


次に日野を事情聴取…


日野 : 振られてムカついたけど!でも俺より苦しめられてるのは朝倉さんじゃね?朝倉さんは青木にすすめられた投資で借金して!!青木の担当メイクをやめられないって愚痴ってたから犯人は朝倉さんだろ?


次に朝倉の事情聴取…


朝倉 : 借金の事で青木さんを殺したりしません!!借金なら神崎さんも私と同じですよ!!青木さんは確かに性格は悪いですが、いいところもありました。青木さんが死んだら困るのは私ですよ!収入が減るので生活が困ります。青木さんが亡くなって悲しいのに生活の事もあって…本当これからどうしよう…


次にディレクターの神崎の事情聴取…


神崎 : あぁ借金なんて気にしてませんよ。ギャンブルは自己責任ですから。確かに青木の性格にはムカついていましたが日野や狩野よりは恨んでませんよ。狩野は青木の元恋人で喧嘩ばかりで仕事にならない時もありました。あと日野はだいぶ貢いでましたよ。


事情聴取で全員が青木とトラブルになっていた事が分かった。

事情がよく分かったところで奏は楓と犯人の答え合わせがしたいようだった。


奏 : 殺害された青木さんは毒殺。

楓 : 毒は化粧品から検出されましたか?

奏 : そう、そのとおりだ。

楓 : 毒は口紅とグロスリップのどちらから検出されましたか?

奏 : グロスリップだ。

楓 : 指紋は調べましたか?

奏 : もちろん!朝倉さんの指紋しか出なかった。あと全員の持ち物に手袋や怪しい物は何も見つかっていない!

吉岡 : 犯人は朝倉さんで決まりですか?

楓 : 状況的に朝倉さんですね。ちなみに中島ちゃんは事情聴取で何か言ってましたか?

奏 : 吉岡!報告!

吉岡 : 中島さんは皆さんをあまり知らないので特別な情報はありませんが、青木さんが倒れる前に日野さんが中島さんと青木さんに冷たいコーヒーを差し入れしてくれたそうです。それを青木さんも飲んでました。以上です!

奏 : コーヒーからは毒は検出されてない。

吉岡 : やっぱり化粧品を持っていた朝倉さんが犯人ですね!

楓 : お姉様お願いがあります。

奏 : 楓がお願い事をするのは珍しいな。お願いは何だい?

楓 : 全部の化粧品から私の指紋を見つけて下さい。


奏は驚き一瞬動きが固まった。

それから左手で自分の顔を覆い笑った。


奏 : 他にお願いはあるか?

楓 : 探して欲しいものがあります。

奏 : 吉岡!探し物だ!

吉岡 : はい!了解であります!


吉岡に探してもらい。

それから全員が店内に集められた。

奏刑事が話を始める。


奏 : 事件について話がありまして皆さんに集まって頂きました。

神崎 : 犯人が分かったのか?

奏 : そうです!ちなみに犯行方法ですが毒殺でした。ちなみに化粧品から毒が出ました。


スタッフは朝倉を見た。


朝倉 : 私は何もしてません!

奏 : 朝倉さんは犯人ではありません。朝倉さんは真犯人に利用されてたのです!

狩野 : じゃあ誰が毒を?

富永 : 本当に朝倉じゃないのか?

奏 : 朝倉さん以外の指紋も検出しました。

富永 : まぬけな犯人だな。

神崎 : 誰の指紋ですか?

奏 : その前に確認ですが朝倉さん以外は化粧品は触っていませんか?日野さんどうです?

狩野 : えっ日野さん…

日野 : 俺は触ってない!

奏 : みなさん!朝倉さんが犯人なら1回目の化粧で犯行を実行されると思いませんか?でも犯行は2回目の化粧でした!

中島 : 1回目化粧を終えて化粧品が出てる時に誰かが毒の化粧品とすり替えた?

富永 : 食べ物の単品を撮ってる時に化粧してるよなぁ。

狩野 : その時はディレクターとカメラと照明は仕事してるから音声は手があくけど…

日野 : 俺はすり替えてねぇ!そもそも誰の指紋なんだよ!誰か言えよ!

奏 : 毒の化粧品からは朝倉さんの指紋しか出ませんでした。

日野 : ほら!やっぱり!朝倉の指紋しか出てないなら朝倉が犯人だ!

楓 : 朝倉さんの指紋しか出なかったのは変です!

日野 : なんでだよ!

楓 : 私は朝倉さんに化粧品を見せてもらって全部の化粧品を触ったので私の指紋が出ないと変なんですよ。


日野は顔色が暗くなった。


奏 : 化粧品すべてを調べました。持ち主の朝倉さんとゲストできた楓の指紋が確認できました。しかし楓が触ったはずの毒の化粧品には朝倉さんの指紋だけです。これは化粧品がすり替えられた事が明確です。

日野 : でも!俺がグロスをすり替えた事にはならない!


全員が騒つく。


富永 : グロスってなんだ?

狩野 : 僕に聞かれても、よく分からないのです。

神崎 : 口紅の事だろ?

中島 : あの口紅じゃなくてグロスに毒が?

奏  : 言い忘れまだが口紅ではなくグロスリップに毒が入ってました。

楓 : 青木さんは口紅とグロスリップを塗るのがお好みだったようですね。

朝倉 : はい。普通はどちらかを塗れば十分なんですが…青木さんはグロスリップだと色が薄いし、すぐ落ちるから気に入らない言ってました。でも口紅だけだと潤いがイマイチと言われて…口紅とグロスリップを重ねて塗ってました。

中島 : 色の濃さで口紅だと思ってました。


日野は汗をかき始めた。

その時に吉岡が戻ってきた。


吉岡 : 見つけました!トイレのゴミ箱からグロスリップを見つけました!朝倉さんと楓さんの指紋ついてました!それから日野さんの指紋も確認できました!


日野は驚きを隠せない顔だ。


奏 : これは日野さん大きなミスだ。毒入りのグロスが現場にあるからすり替えたグロスは探されないと思って指紋を吹かなかったみたようだ。

日野 : 誰かが俺の指紋をつけたに違いない!

奏 : いい加減認めなさい!

日野 : うわぁぁああぁぁ!!!


日野が暴れ出して中島に飛びかかろうとした。

しかし楓が中島を突き飛ばし庇う。

楓の首に日野の左腕が巻きつき楓の後ろに日野は回る。

楓が人質になってしまった。

全員が恐怖で声を出せなくなった。

しかし奏は平気そうに話しかける。


奏 : こんな事しても無駄だ!

日野 : 俺はやってない!

楓 : わぁまだ認めないのぉ。

日野 : うるせぇ!


楓は我慢の限界だった。

楓は右肘で思いっきり日野の腹部を突く。

日野が腹部の痛さで腕の力がゆるんだ隙に楓は日野の左腕を素早く引きながら同時に足を蹴りはらい背負い投げをした。

楓は呟いた。


楓 : ポケット

日野 : はぁ?


日野は投げられた事にも驚いたが楓が言うポケットの意味も分からない。

楓は髪と服を整えながら言う。


楓 : 朝倉さんのグロスをポケットに入れて運んだならポケットから化粧品の成分が出てくるよ。化粧品って結構さぁ他の化粧品の粉とか付いてるから!


それを聞いて日野は自分が言い逃れできない事を理解した。

日野はパトカーに乗せられて連行される。

楓が無事で良かったと中島は楓に抱きつきながら泣いた。


中島 : 楓せーんしぇーよおがぁったー。

楓 : 中島ちゃんもう大丈夫だから泣かないで落ち着いて。

吉岡 : 楓先生!本当に無事で良かったです!あんなに強いなんて凄いっす!

楓 : 護身術は姉に鍛えられたものだよ。

奏 : 楓は推理もできて腕もいいから刑事にむいてるだろ。

吉岡 : はい!是非刑事に!あっでも楓先生の小説が読めなくなるのは困るな。探偵はどうでしょうか?

中島 : 楓先生は小説家です!こんな危険な事はさせられません!

楓 : 中島ちゃん心配してくれてありがとう。


奏たちはまだ仕事があると言いパトカーに乗り込み去って行った。

楓たちも荷物をまとめて帰る事にした。


楓 : また明日から小説を書くのか。

中島 : 書いてもらわないと困ります。

楓 : まだ小説が思いつかないなぁ。書けないと困るよね。そうだぁ!今から名古屋に行って泊まらない?

中島 : はぁ?ダメです!帰りましょう!

楓 : 今から東京に帰るのは遅いし。名古屋に泊まろうよ。それから、ひつまぶしと酒を飲んで…あぁ!いいねぇー!!


また楓は小説を書くのをサボりそうだ。

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