ツルギ
ショーンティン
第1話
ツルギ
粗末な服を着て、化粧というものに興味が無い。身長は170センチを越え、体重はおよそ110キロ。目も鼻も、顔の肉に埋まっている様子は、決して可愛いとは言えない。目は澄んで大きくきらきらと輝いているが、その巨体に隠れてそれに気付く者は少ない。
歳は27を過ぎたばかり。
見た目の悪さもあって、拾ってくれる男も現れず独身である。一年以上も前に、衣料品関係の一流企業を辞めたが、その理由は、いじめ。
会社のイメージが下がると上司に言われ、いびり出されたのだ。
親は入社してすぐに飛行機事故で亡くし、兄弟姉妹も無いから、言ってみれば、天涯孤独である。
会社を辞めて何もしないで居たので、貯金を使い果たし、今日にも、ガス電気が止められる状態は不思議ではない。できれば生活保護でも受けたい、とこの女は思っているのだが、親の残した家が大きな財産としてあるので、それも受けられない。
ここに至って始めて、この状況から脱出することを考えなければいけなくなった。
つまり、それまでは何とかなるだろうと考えていたのである。
この女にとって自分で考えるという動作は、初めての事なのだが、それは、今まで流されて生きてきた、と言う事かもしれない。しかし今の時代は、流されようが、逆らおうが誰もが「そこそこ」に生活できる平和な時代だったといえる。そんな中で、この女は身のほど知らずにも、心の中では社会に尽くす人間になりたいと思っている。この思いが、未来に大きな花を咲かせ周囲を驚かせるが、それを知るものは居ない。
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