第4話 とある決意をしたようです。
キーンコーンカーンコーン
6限目の終了を告げるチャイムが鳴り響き、クラスの皆も帰りの支度をし始める。
……朝での出来事から少し後、
「久遠!帰ろうぜ!」
「ん。少し待って、海斗」
そう言って、海斗がこちらに寄ってくる。
僕は荷物を纏めて鞄に入れると、海斗と一緒に教室を出る。
僕がバズったせいなのか今日は全然知らない生徒にも話しかけられたけど………僕があんな魔法を使うと知ったあとでも、変わらずこうして仲良くしてくれる海斗には感謝だね。
けどそんなことは口には出さない。
「いや〜、にしても今日のお前凄かったな。」
「ホントだよ……今回ばかりは流石に疲れたね」
そんなことを海斗と話している今は、帰り道を歩いている真っ最中。
朝での出来事以外にも、昼休みには学校中の人が僕の教室に集まってきたり、スキルについて聞かれたり。とにかく大変だった。
「あと女子に持て
「何言ってんの………皆僕がバズったから、近づいてきただけでしょ……むしろ虚しかったよ」
「………それもそうだな、………久遠、俺が悪かった。お詫びに今度なんか奢る」
「殴るよ?」
自分から言い出しといて、僕が指摘したら哀れみの目を向けてくるのはやめて欲しい。
勝手に羨ましがられて、勝手に勘違いされて慰められる……こっちの方が心にくる。あと腹が立つ。
……生まれてこの方、女の子を好きになったことも好きになられたこともない。
………自分で言ってて悲しくなってきた。
という事で、色々死人が出そうな話題はそこら辺にポイして話を変える。
「話は変わるけどさ、僕のバズり方異常じゃない?」
「ん?お前知らないのか?」
「知らないって……何を?」
「いや、世界的にも有名な魔法の研究者?的な人がお前のこと取り上げてんだよ」
「………嘘でしょ?」
「マジマジ。コレ見てみ?」
そう言って海斗が見せてくれたのは、一つの動画だった。
動画では、
『彼の使う魔法には私も目を見張るものがあります。そして、今まで数々の魔法を研究してきた私から言わせてもらうと、彼の魔法は彼だけの完全オリジナルな魔法だと結論づけました。そして、そのことから彼はユニークスキルも所持しているものと考えられます。
以上が、私が現状考えられる1番可能性の高いものであります。』
と、英語でスピーチ的なものをしており、画面下部に字幕が表示されている。
そしてその内容だけど、『ユニークスキル』を所持している、とこの人が発表したことで僕はあれほどバズっているのだろう。
ちなみに、ユニークスキルを持つ人の割合は1億人に一人という、極めて低確率だ。つまり、現在の地球にもたった数十名しかいない。
…………
「……海斗。これってどれくらい再生されて……?」
「3000万。ちなみに、コメントは1000万位。」
「……なんであれだけ注目されていたのかやっとわかったよ」
「ま、久遠。覚悟しておくんだな!色々と大変になると思うぞ!」
「はぁ………」
どうしようもなく落ち込んだ僕は、その後海斗に適当に相槌を打ちながら帰宅するのだった。
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「ただいまー………」
「お帰り!お兄ちゃん!……って、どうかしたの?」
家に着き玄関の扉を開けると、そこら辺の思春期男子は簡単に落とせそうな笑顔で真白が駆け寄ってきて、小首を傾げて聞いてくる。
「ああ、真白。なんかまたバズってた……」
「そ、そうなんだぁ………」
僕の落ち込みようが凄いからか、真白が若干引いている。
そんな目で見ないで欲しい。ただでさえ穏やかじゃないお兄ちゃんの心が壊れちゃう。
「でも、そんなにバズってるなら何かに活かせたりしない?」
「まぁ、確かにそれも一理あるけど……」
暫し、沈黙。
何かを考え込むように、顎に人差し指を置いた真白は、突然パッと明るい表情で言う。
「そうだ!だったらお兄ちゃんもダンジョン配信やってみたらいいじゃない!?」
「……なんでそうなったの?」
………いや、ほんとに。
ただでさえ現状がバズりまくっている状態なのに、何でわざわざ自分から注目を集める必要があるのやら。
「だってさ、ネットとかを見てると、皆お兄ちゃんの魔法やらスキルやらが気になってる訳じゃん?」
「そうだね」
「だったらさ、配信とかでお兄ちゃんの魔法とかを見せたら、そういうネットの声も静まるんじゃないかなー、って」
「そういう事ね……」
確かにアリかもしれない。
現状、ネット上には僕についての発言が6割方を占めている。
そんな中で、僕自身が何もしなかったら個人情報が特定される危険性もある。それに、周りにも迷惑がかかるかもしれない。
そう考えてみると、なるほど確かに、ダンジョン配信を初めてみるというのもあながち悪い考えではないのかもしれない。
「でも結局、真白が僕の配信見てみたいっていうのが一番の理由なんでしょ?」
「……いいいや、そそそそんなわわわけ無いじゃん!」
「めっちゃ噛みまくってるけど」
「うっ…………まぁ、ぶっちゃけ9割方その理由……」
「はぁ、全くこの子は………でもまあ、配信するって言うのはありかもね。」
「ほんとっ!?」
「うん。配信するっていうのもひとつの経験だしね。」
「やったぁ!」
わーい、と両手を挙げて喜びを
配信が自分の経験になると思ったのも嘘では無いけど、でもやっぱり、僕はこうして笑顔いっぱいで喜ぶ真白が見たかったのが配信することを決めた一番の理由かもしれない。
そう考えると、真白のために配信する僕も大概シスコンなんだろうな。
という訳で、ダンジョン配信者になることにした僕は、明日学校に行ったら海斗や
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翌日。
学校に登校した僕は、取り敢えず海斗にダンジョン配信すると決めたこと、必要なものとかを聞いてみた。
「おぉ、お前も遂に配信者デビューか……」
「まぁ真白に言われてね。それで海斗、配信するのに必要な物とかある?」
「……そりゃお前、カメラドローンに決まってんだろ」
「それは知ってる。でもカメラドローンと言っても色々あるじゃん?だからどれにしたらいいのかなって」
「あぁ、そういう事か。だったら俺に聞くよりも
「……まぁそうだよね。ちょっと聞いてくる。」
正直言うと、あまり
本人には悪いけど、僕のバズりが収まるまではあまり関わるつもりもなかった。
……でも別に嫌いという訳では無いから、僕のバズりが収まったら是非とも仲良くして欲しい、というのは僕のわがままかな。
「白さーん」
「久遠くん!?わ、私に何か用かな……?」
僕が声を掛けると、何故か驚いたような声を出した白さん。
……なんか遠慮している感じもする。
嫌われるようなことをしちゃったのかな。
…………だとしたら凄い悲しい。
そっちに関してはまた仲良くなれるように努力する事にして、白さんにダンジョン配信に必要なものやらを聞いてみる。
「妹に勧められてダンジョン配信やる事にしたんだ。それで、先輩配信者として配信には何が必要なのかとか、心構え的な事を教えて欲しいなと思って」
「えっ!?久遠くんも配信やるの!?」
「うん。結構面白そうだしね」
「そっかぁ、でもそういうことなら任せて!」
どうやら僕に色々教えてくれるらしい。
配信者としての経験とかを教えるのってあまり好きじゃない人が多いって聞いてたから、白さんも教えてくれないかなとも考えていたけど、どうやら杞憂だったようだ。
「ありがとう白さん」
「お礼はいいよ!えっと、それで私に何を聞きたいの?」
「カメラドローンって色々種類があるけどどれにしたらいいのかなって」
「うーん……私と同じ物にすれば、って言いたいところだけど、私のドローン結構高いやつだしなぁ」
「高いモデルだとなにか違うの?」
「えっとね、基本的には値段が高いモデルほど色々な機能が付いてるんだ!私の場合は光学迷彩とかAIとかかな!」
………現代の科学ってすごい。てっきりカメラで映像を記録するだけかと思ったら、 AIやらなんやらが付いてるらしい。
僕が子供の頃なんてカメラドローンその物が無かったのに、この十数年でどうやらここまで科学は進歩していたらしい。
研究者の人達の熱意はすごいね。
それはそうと、白さんのドローンは、他にもコメント表示機能とか付いてるらしい。
「でも配信するならやっぱり、私と同じモデルかそれ以上のモデルの方が合ってると思うなぁ」
「白さん、さっき私のドローンは結構お高めのやつだって言ってたけど具体的にはどれくらいなの?」
「ちょっと待ってね……………はい、これくらいの値段」
そう言って白さんが見せてきたスマホの画面には数十万円もするドローンのモデルが映っていた。
………最近のカメラって高いんだね。
でも数十万円位なら今までダンジョンに潜って稼いできた分があるし、それくらいの値段だったら買える。
「結構高いね……でも買えなくは無いし、白さんのと同じのにしようかな」
「す、凄いね………この値段をポンと買えちゃうんだ」
「まあ今までダンジョンで稼いできた分があるからね」
「そ、そっかぁ………」
取り敢えずカメラの問題は解決した。
それから他にも白さんに色々聞いたりして、今日の所はそこで解散となった。
また何か聞きたかったら遠慮なく聞いて!とも言っていたし、今後も白さんにはお世話になるだろう。
今度絶対にお礼しようとも決意した。
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面倒な学校も終わり、学生の誰もが待ち望んでいる週末……の1日前。金曜の放課後。
「真白、白さんに聞いてカメラとかは用意したけど他に必要なものってあったりする?」
僕は、ダンジョン配信にも詳しいだろう真白に、他に必要なものがないか聞いていた。
「カメラがあれば配信できるけど……お兄ちゃん、配信用のアカウントは作ったの?」
「……?」
「あぁ……作ってなかったんだね」
どうやら、配信する為にはそれ専用のアカウントを作る必要があるらしい。
普段は読書をして過ごしている僕は、そこら辺はさっぱりなのだ。
「でも、そんな事もあるかと思って私が勝手に作っといたよ!」
「おお、さすが真白。頼りになる」
「お礼に今度デートしてね!」
「はいはい」
兄妹ではデートとは言わずに買い物と言うんじゃないかな……とも思ったけど、これを言ったら怒られそうなのでやめておく。
「じゃあ早速、明日ダンジョン行って配信しようかな」
「お兄ちゃん!告知も忘れずにね!」
「ああ、確かに。告知はしといた方がいいよね」
という事で、SNSの呟きアプリで明日配信する
………フォロワーなんて居ないから宣伝しても無駄だろと思ったそこの君。安心して欲しい。元々
バズりって怖いね。
それに加え、初めて配信するものだから明日配信するという意識があるだけで緊張してくる。……もしかしたら、今日はあまりよく眠れないかもしれない。
「なんか今からでも緊張してきた……」
「大丈夫だよ!お兄ちゃんならきっと上手くいくって!」
「そうだよね、きっと上手くいく……と思っておくことにするよ」
そんな会話をしながら、今日の夕飯の準備を進め、夕飯を食べ終わり、風呂にも入って、後は寝るだけとなった。
「おやすみ真白」
「おやすみお兄ちゃん」
自分の部屋に入って、寝床につく。
……いつもならベッドに入って10分くらいで寝れるのに、今日は30分経っても中々眠気が襲ってこなかった。
きっと、明日の配信に緊張しているんだろう。……自分ではそんなつもりは無いんだけどな。
これは明日寝不足だなぁ、とか思いながら1時間経ってようやく眠気が襲ってきて、寝付くことができた僕だった。
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