第30話初めまして廻神厳鬼(めぐりごんき)さん

「オイお前ら!」


フフェイスヘルメットを脱ぐと、髪がペシャンコに頭蓋にへばり付き、所々髪が逆立って間抜けな寝癖の様に為っていたが気にも留めず、「俺もついて行くよ!」と、大丸へ先立ち歩いて行った。


大丸前の通りは、同じ方向を向いた群衆がルミナリエの点灯を待ち侘び、今か今かと静かに整列していた。


 通りの左右は点灯していないイルミネーションが電流を待って居た。


 大丸北側の接道がルミナリエの始発地点だ。


同じ時間を共有する1000名余りが東へ向いて並んでいた。


 かなりの寒さに脚を地団太を踏みニーハイのブーツが上下に揺れて、煌びやかな勝負服を纏うレディー達や親の真似をした幼児が可愛らしいズックを履いた白タイツの脚をバタつかせて思い思いの冬の祭典に思い思いの動きを見せていた。


 一瞬の静寂の中、ガラスドアを押し開いたと同時にワーッ!


と歓声が上がり、その群衆は、まるで豪華客船の浸水式の様に東へとゆっくり静かに動いて行く。

 「お待たせしました。ゴンキさん」


ポカンと口を開けてこちらへ向いた学生を見詰める春樹に「何をやっている一理山?」

「こちらが廻神厳鬼(めぐりごんき)さんだ。」


腰をへの字に折り曲げて、ゴンキを掌で差し春樹に紹介した。


 何処かで見た事ある?イヤ、前から知っていた?


・・・懐かしい。


 春樹の胸中に暖かい感情が生まれ出していた。

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