第34話 ローイン様に対する気持ち

いつもこうやって、私の事を心配して見に来ている様だ。ローイン様曰く、もう二度と私が辛そうな顔を見るのは嫌なのだとか。


「マーガレット嬢、そんな何とも言えない顔をしないでくれ。俺は君の、太陽みたいに笑う笑顔が好きなんだ。だから、どうか笑っていて欲しい」


「太陽みたいな笑顔だなんて、ローイン様は本当に大げさなのですから」


「大げさなんかじゃない。俺は君のあの笑顔に救われたんだ。君が笑っていてくれるのなら、俺は何だってするつもりだよ」


美しい瞳で真っすぐ見つめられ、そんな事を言われたら胸がドキドキする。この顔は反則だわ。そもそも私、ローイン様のお美しい瞳が大好きなのだもの。本当にいつ見ても美しいわ。


「ローイン様、それにマーガレット様もそんなところで見つめ合っていないで、お2人でお話しでもしてきてはどうですか?まだ休み時間は残っていますし」


「でも今は皆と令嬢トークを…」


「もう十分私たちは話をしましたから。それに今、私たちがやらないといけない事は、新しい婚約者候補を探す事ですわ。ローイン様、マーガレット様をよろしくお願いします。それでは私たちはこれで」


そう言うと、令嬢たちは去って行った。


「それじゃあ、少し話をしようか。こっちに座ってくれるかい?」


「はい」


ローイン様と一緒に、イスに座った。


「マーガレット嬢、学院生活はどうだい?その…嫌な事とかないかい?」


「ええ、お陰様で、問題ありませんわ。ローイン様、兄から聞きました。マリンの裁判では、色々な証拠の提示に協力してくださったのですよね。その上、私が少しでも学院で嫌な思いをしないように、ローイン様自ら貴族たちに色々と話をして下さったと。そのお陰で、誰も被害令嬢たちを悪く言うものはいないと」


ローイン様はあの断罪の後、自ら貴族たちに説明をしたり、裁判の手助けをして下さったりと、色々と駆けずり回ってくれたそうだ。ローイン様も被害者の1人なのに、私達令嬢のケアを最優先に動いてくれた。


本当に彼には頭が上がらない。


「何度も言っている様に、俺は君が笑顔でいてくれることが一番の幸せなんだ。だからどうか、礼なんて言わないでくれ。君が笑っていてくれることが、俺にとって君からの最高のお礼なのだから」


「私の笑顔、そんなに素敵ですか?そんな事、言われた事がなくて…」


思い返してみたら私、婚約者だったジェファーソン様からも、一度も褒められた事はなかった。だからこんな風に、褒められると嬉しくてたまらないのだ。


「君の魅力が分からないやつが多いのだね。でも、君の魅力は俺だけが分かっていればいいよ」


少し恥ずかしそうにローイン様が笑った。


「聞いたかい?サラ。ローインが、あんなくさいセリフを言っているよ。あのローインが」


「ノエル様、ローイン様に気が付かれますよ。そもそものぞき見だなんて、貴族として有るまじき行為です。さあ、行きましょう」


ん?この声は…


声の方を振り向くと、そこにはケラケラ笑っているノエル殿下と、彼の腕を必死に引っ張っているサラ様の姿が。


「ノエル!貴様よくものぞき見したな!」


ローイン様も気が付いた様で、怖い顔でノエル様の方に向かっている。


「ほら御覧なさい。ローイン様に見つかってしまったでしょう。ローイン様、マーガレット様、申し訳ございません」


「サラ嬢が謝る必要はありませんよ。それよりもノエル、君って人は!」


「僕は親友として、ローインの恋の行方を見守っていただけだよ。マーガレット嬢、ローインはね、あの断罪の後、ほとんど寝ずに後始末をしたのだよ。君が少しでも不利にならないように。貴族に積極的に令嬢たちの出会いの場を提供してもらう様に頼んだもの、ローインだ。ローインは本当に責任感の強い男でね。自分のせいで、被害者が傷ついてしまったのではないかと心配していたのだよ」


「ノエル、変な事を言うな!マーガレット嬢、今のは気にしないで欲しい。その…」


「私たちの為に断罪後も動いて下さっている事は知っておりました。私はもちろん、被害にあった令嬢たちも、皆ローイン様には感謝しておりますわ。既に別の殿方と出会えている令嬢もおります。それに何も知らずに不貞を働いた男と結婚させる方が、不幸ですわ。私自身も、あの不貞男と縁が切れてせいせいしております。それに、素敵な殿方にも…いえ、何でもありません」


私ったら、何を口走ろうとしているのかしら?恥ずかしい。


「ローイン、マーガレット嬢もまんざらではない様だよ。よかったね。後は卒院式を待って、2人が婚約を結ぶだけだね」


ノエル殿下がにっこり微笑んでいる。


ノエル殿下はなんて事をおっしゃるのかしら?私はまだ、ローイン様の事をそんな風には…思っていない?


確かにローイン様は素敵な方だけれど、まだ頭が付いていかないのだ。私は一体、どうしたいのだろう…

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