第28話 思った以上に大事になっている様です

ローイン様を見送った後


「本当に素敵な方だったな。まさかマーガレットをあそこまで思って下さっていただなんて。マーガレット、よかったな。ローイン殿ならきっと、マーガレットを幸せにしてくれるぞ。それに彼は、侯爵令息で、その上第三王子とも仲が良いと聞く。我が家にとっても、プラスでしかない。ジェファーソンなんかより、ずっといい男だし」


「バロン、家の事は今はいいでしょう。でも、本当にローイン様は素敵な方よね。それにマーガレットも、まんざらでもないのでしょう?」


「あら、そうなの?」


お母様とお義姉様がニヤニヤしながらこちらを見て来た。


「お母様、変な事を言わないで下さい。私は…」


「あら、昨日マリン嬢がローイン様の瞳を悪く言った時、顔を真っ赤にして怒っていたじゃない。興味のない異性の為に、あんな風に怒ったりしないわ」


「それはローイン様の美しい瞳をバカにしたから、腹が立っただけです。彼の瞳は、本当に美しくてきれいなのですよ」


「確かにローイン様の瞳は、とても綺麗よね。古い考えの多いこの国では、嫌な思いをしてこられたのね。他国では、左右瞳の色が違う人は、羨ましがられるくらいなのに。私もローイン様の様な、左右瞳の色が違う人間に生まれたかったわ。本当に神秘的で、お美しい」


「そうでしょう?さすがお義姉様。マリンの頭がおかしすぎるのよ。本当に今思い出しただけでも、腹が立つわ」


不特定多数の異性と関係を持つようなふしだらなマリンの方が、妖怪よ!思い出したら、再び怒りがこみ上げて来た。


「バロン、それにミリアムも来てくれていたのだね。何を楽しそうに話しをしているのだい?」


ちょうどお父様が帰って来たのだ。


「父上、何が楽しいものですか?マーガレットがあんな酷い目にあったのですよ。それで、どういった話になったのですか?今日その話をしに行ったのでしょう」


「ああ、そうだな。その件に関して詳しく話しをしよう。皆、こっちに来てくれ」


お父様に連れらえて、皆で居間へとやって来た。


「今日なのだが、まず関係者はもちろん、伯爵以上の貴族は全員集められ、アレッサム公爵を始め、昨日参加していたノエル殿下や当事者でもあるローイン殿から、事細かな話があった。その際、昨日流れていた映像も、改めて流れたよ。被害者の人数や全貌もすべて明らかになった。どうやらマリン殿は、ローイン殿と婚約していた約1年半の間に、15名の令息と関係を持っていた様だ」


「15名ですって!なんて数字なの?わずか1年半で、そんなにたくさんの令息と関係をもつだなんて…」


「被害者でもある令嬢の家族はもちろん、そこにいた全ての貴族たちが驚愕し、中には目玉が飛び出てしまうのではないかというほど驚いていた人や、口を開けたまま固まっていた人もいた。今回会議に参加した王妃殿下や王太子妃殿下に至っては、途中体調を崩し、退場する程の衝撃を受けた様だ」


お父様がため息をつきながら、呟いている。それにしても、あの短期間でそれほどまでの令息と関係を持っていただなんて…


「15名の殿方と関係だなんて…考えただけで吐き気がしますわ。申し訳ございません。少し外の空気を吸って参りますわ…」


お義姉様も気持ち悪くなった様で、お母様に連れられて部屋から出て行った。


「話を聞いただけでも、気分が悪くなるような出来事なのに、婚約者と親友が目の前で愛し合っている姿を見たマーガレットは、どれほど衝撃を受け、傷ついたか…そう思うと、私は胸が潰されそうだったよ。本当にすまなかった」


改めて私にお父様が頭を下げて来たのだ。昨日からどれくらい謝られただろう。


「お父様、もういいのです。何度も何度も謝られると、私も辛くなるので、どうかもう謝らないで下さい」


両親が謝る姿なんて、もう見たくないのだ。


「そうか、分かったよ。それから、マリン嬢は、今回我が国の秩序を著しく乱したと言う事で、正式に王家から訴えられる様だ。今までに類を見ない程の不貞行為を働き、貴族中を震撼させたのだから仕方ないだろう。さらにマリン嬢は、我が家からも訴える予定でいるうえ、どうやら第三王子のノエル殿下も、マリン嬢に口説かれていた様で。アレッサム公爵家からも、近々抗議文が送られるらしい」


「ノエル殿下まで口説いていたのですか?」


たしか不貞を行った令息たちは、ほとんどが伯爵令息だと聞いていたのだが。まさかそんな高貴な身分の方まで手を出そうとしていただなんて…


「ローイン殿にマリン嬢の不貞を報告したのも、ノエル殿下らしい。あの2人は、仲がいいからね。とにかくカスタヌーン伯爵家は、今から莫大な慰謝料を請求される予定になっている。グランディス侯爵家への慰謝料だけでも大変なのに、我が家含め、15貴族から慰謝料を請求されるのだからね…間違いなく爵位ははく奪され、身一つで強制労働施設に送られるだろう」


思った以上に大事になっているのね。まあ、それだけの事をしたのだから、仕方がないだろう。


「とにかく、今後は陛下やアレッサム公爵を中心に、二度とこのような事が起こらないように、対策を練るそうだ。それから、不貞を働いた令息たちだが、慰謝料の支払いと合わせて、3ヶ月間の強制労働施設送りが決まったよ。彼らはそこでしっかり反省してもらう予定だそうだ。早速明日から施設に向かうそうだから、しばらくはジェファーソン殿に会う事はないだろう。安心して学院に通いなさい」


どうやら不貞を働いた令息たちも、罰が与えられた様だ。思った以上に大事になってしまったようだけれど、色々と話がまとまってよかったわ。

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