第12話 ローイン様の誕生日パーティーに参加します
「リリアン、やっぱり私、もう無理だわ。すぐにお父様に言って、修道院に行く手配を整えてもらうわ」
ジェファーソン様が帰った後、リリアンに必死に訴えた。
「お嬢様、落ち着いて下さい。それよりも、グランディス侯爵家から手紙が届いております」
すっとリリアンが手紙を差し出したのだ。グランディス侯爵家と言えば、マリンの婚約者、ローイン様のお宅だ。送り主は、ローイン様になっている。一体私に何の用があると言うのだろう。もしかして、マリンにあることない事吹き込まれた事で、私に抗議の手紙でも送って来たのかしら?
恐る恐る手紙を開ける。するとそこには…
“明日の俺の誕生日会、必ず参加して欲しい。どうかお願いします”
そう書かれていたのだ。そう言えば明日は、ローイン様の17歳の誕生日パーティーが開かれることになっている。本来お誕生日パーティーは、10歳未満の貴族の子供が行うもので、10歳を超えた貴族、それも令息が誕生日パーティーを行うのは非常に珍しい事なのだ。それも急遽行われることになったと聞いた。
一体どういうつもりだろう。ローイン様自ら、私に明日の誕生日会に参加して欲しいだなんて。もしかして、マリンに対する行為に対し、直接私に文句を言うつもりかしら?
でも、そのためにわざわざ私を自分の誕生日会に呼び出す?彼の考えていることが、全く理解できない。
それでも、我が家よりずっと身分の高い侯爵令息でもあるローイン様自ら、お誕生日パーティーに来て欲しいという手紙を受け取ったのだ。さすがに欠席する訳にはいかない。
さっきまで修道院に行くと決めていたのに、やっぱり私は、貴族令嬢なのね…ついため息が出る。
そんな私の元にやって来たのは、お父様とお母様だ。
「マーガレット、先ほどグランディス侯爵と夫人自らいらして、明日のローイン殿の誕生日パーティーには、ぜひマーガレットも参加して欲しいと直々に頼みにいらしたぞ。いいか?相手は侯爵家だ。家よりもずっと身分が高いんだ。明日は何が何でも、ローイン殿の誕生日パーティーに参加するぞ。いいな、分かったな」
「侯爵様と夫人自ら、そんな事を言いに来たのですか?分かりましたわ。明日のパーティー、必ず参加いたします」
まさかローイン様のご両親が、我が家までやって来て私にパーティーに参加しろというだなんて。一体何があるというのかしら?
もしかしたら、マリンとローイン様がいかに愛し合っているのかを、見せつけられるのかもしれないわね。いや、あのマリンの事だから、やっぱりローイン様の誕生日パーティーを利用して、私をつるし上げるつもりかしら?
それならそれでもいいわ。そうすれば私も、心置きなく修道院にいけるものね…
正直ここまで酷い目にあったのだ。もうどんなことがおこっても驚かない。
翌日
「お嬢様、とてもお綺麗ですわ。そのドレス、よくお似合いです」
「ありがとう、今日でドレスを着るのも最後かもしれないわね。今日のパーティーが終わったら、お父様に正式に修道院に行く話をしようと思っているの。リリアン、今まで色々とありがとう」
今日のパーティーが終わったら、修道院に行く。そう決めている。きっとマリンの事だから、ローイン様にも出鱈目を吹き込んでいるのだろう。侯爵家のパーティーで完全に悪者にされたら、もう私は貴族世界では生きていけないだろう。
でも、それならそれでいい。こんな生き地獄の様な場所で生きていくくらいなら、全てを捨て、多少不自由でも修道院でひっそりと暮らした方がいい。
「お嬢様、どうかその様な寂しい事を言わないで下さい。それにしてもそのドレス、とてもよくお似合いですわ」
今日の私は、私の瞳の色に合わせて青いドレスを着ているのだ。それにしても、こんなドレス持っていたかしら?もしかしたらお母様が、今日の為にドレスを作らせたのかもしれないわね。
「さあ、お嬢様。そろそろお時間ですわ」
「ええ、そうね。それじゃあ、行ってくるわね」
もしかしてジェファーソン様が待っていたりして…
通常何らかのパーティーに参加する場合、婚約者と一緒に行くのが普通だ。でも、正直私は、今ジェファーソン様と一緒に行きたくはないのだ。
なんだか急に憂鬱になって来た。でも今日でジェファーソン様の婚約者も最後と思ったら、何とかなるか。私は修道院に行くのだから。
気を取り直して玄関へと向かう。
「マーガレット、遅いぞ。さあ、行こうか」
私を待っていたのは、両親だ。どうやら今日は、両親と行く様だ。一体どういう事かしら?でも、あの男と一緒に行かなくて済んでラッキーだわ。
3人で馬車に乗り込んだ。
「こうやってマーガレットと馬車に乗ってどこかに向かうのは久しぶりね。マーガレット、最近元気がないけれど、まだジェファーソン様と喧嘩をしているの?いい加減仲直りしなさい。あんなに優しくて素敵な殿方、他にいないわよ」
相変わらずお母様は、ジェファーソン様の味方だ。
「本来なら今日も、ジェファーソン殿にエスコートしてもらうのが筋だが、なぜか主催者でもある侯爵家から、今日はパートナーとではなく家族で来て欲しいとの要望があってね。一体グランディス侯爵は、何を考えているのだか…」
なるほど、それで今日は、お父様たちと向かうのね。本当にグランディス侯爵様やローイン様は、なにを考えていらっしゃるのかしら?
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