婚約者と親友に裏切られた伯爵令嬢は侯爵令息に溺愛される

@karamimi

第1話 親友と婚約者同時に裏切られました

「マリン、聞いて。最近ジェファーソン様がソワソワしていて、何を話していても上の空なの。もしかして、私との結婚が嫌になったのかしら?」


「ジェファーソン様が?きっと気のせいよ。私の目から見ても、ジェファーソン様は幸せそうに見えるわ。後7ヶ月もすれば、ジェファーソン様と結婚するのでしょう?そんなに心配する必要はないわよ」


「そうかしら?私、なんだか心配で…」


ここは貴族学院の中庭。親友のマリンに、今日も話を聞いてもらう。桃色の髪に水色の瞳をした美しいマリンは、私と同じ伯爵令嬢。彼女は私達よりもずっと身分の高い、侯爵令息のローイン・グランディス様と婚約しているのだ。


そんな彼女は、私の良き相談相手。どんな些細な相談でも、真剣に聞いてくれる大切な親友。マリンは社交的で友人も多いが、私は人見知りで友人と呼べる人もマリンくらいしかいない。


正直どうしてマリンが私と友人になってくれたのか、未だに信じられないくらいだ。ちなみに私達は今、貴族学院の3年生、後7ヶ月もすれば、貴族学院を卒院し、それぞれのパートナーと結婚する事になっている。


「とにかくそんなに心配しなくても大丈夫よ。ごめんね、マーガレット、実は今日、ローイン様とお約束をしていて。そろそろ行かないといけないの」


申し訳なさそうに謝るマリン。


「そうだったの。ごめんなさい。それじゃあ、私は帰るわ。いつも話を聞いてくれてありがとう。本当にマリンは、私の最高の親友よ」


「もう、マーガレットったら。大げさなのだから。それじゃあ、気を付けて帰ってね」


「ありがとう、マリンもね」


マリンと別れ、門のところまでやって来た。馬車に乗り込み、家路に着こうとしたのだが…


「あらいけない、私ったら大切な時計を中庭の机の上に忘れてきてしまったわ」


マリンと話をしていた中庭に、婚約者でもあるジェファーソン様から貰った時計を忘れてしまったのだ。


“これからもずっと、同じ時間を生きていきたい”


あの時計には、そんな願いが込められているとジェファーソン様に教えてもらった。ジェファーソン様の想いが詰まった時計を、なくすわけにはいかない。


既に家の目前まで来ていたが、急いで学院に引き返してもらう。馬車を降りると、一直線に中庭へと急いだ。


「よかった、あったわ」


机の上にちょこんと置かれた時計。本当によかった。既に生徒たちは帰ってしまっている為か、中庭も静まり返っている。


私も急いで帰らないと!そう思った時だった。


中庭の奥から、何やら人の声が聞こえる。一体なにかしら?


ゆっくり近づくと…


「ジェファーソン様、くすぐったいですわ」


「マリンの肌はいい匂いがするね。君の体が本当に美しい…」


えっ?ジェファーソン様?マリン?それにこの声…


木の陰からこっそりのぞくと、そこにはジェファーソン様とマリンが抱き合い、何度も何度も口づけを交わしていたのだ。さらにマリンの制服ははだけ、ジェファーソン様が胸元に顔をうずめている。


「ジェファーソン様ったら、もう。万が一誰からに見られたら大変ですわ」


「君が今日は外がいいと言ったのだろう?それにこの時間、誰もいないよ」


「万が一マーガレットに知られたら、大変ですわね。でも、ジェファーソン様もあんな女と婚約させられて可哀そうに。7ヶ月後には、あの女と結婚しないといけないのですものね」


そう言って笑っているマリン。あんなマリンの顔、初めて見た。そうか、マリンはずっと私の事を、そんな風に思っていたのね。それなのに私は、マリンの事を親友だなんて…


気持ち悪い。お互い婚約者がいるのに、他の異性とこんな風に求め合っているだなんて。本当に気持ち悪い…


2人の様子を見ていたら、急激な吐き気に襲われた。


「僕は…」


あまりにも気持ち悪くなり、その場を去ろうとした時だった。


ふいにマリンと目が合ってしまったのだ。


「マーガレット…」


ぽつりを私の名前を呼ぶマリン。ジェファーソン様もこっちをクルリと振り向いたのだ。


まずい!

私は急いでその場を後にしたのだった。



~あとがき~

新連載始めました。

よろしくお願いいたします。

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