第17話 勇者と魔王、手を結ぶ。

魔王おれと組まない? 勇者殿」

 魔王のマコトは、たしかにそう言った。

「……俺は、魔王を倒すために生まれた。それは、お前もよくわかっているはずだ」

「もちろん。それでも、おれは勇者と共にいきたい。自分のために」

 マコト――今は、魔王と呼ぶべきか。

 魔王の目は、真剣そのものだった。

「そういうことなら、いいぞ。組もう」

 勇者さまはうなずく。

「お、判断が速いな」

「ただし、お前が人々に危害を加えようものなら、俺はお前を葬る」

 鋭い目つきで魔王を見た。

 仲間と呼ぶには、まだ信用が足りないか。

 それとも、そもそも心からの仲間になるつもりがないのか。

 勇者さまは、魔王から差し出された手をにぎらない。

 その様子に、オレたちは視線を交わす。

 キョウヤとマシロの2人とも、硬い表情だ。

 魔王が手を引っ込めるのを、不安そうに見る。

「だろうと思ったよ。安心しろって。おれは命を粗末には扱わない」

 魔王はヘラッと笑った。

 それから、すぐに表情をひきしめる。

「お前こそ気をつけろよ。そのへんにいる魔物たちを、魔物だからって理由で殺そうもんなら、お前を即殺す。勇者だろうと、関係ねーからな」

「ああ。わかった」

「じゃ、交渉成立ってことで」

 今度こそ、と言いたげに、魔王は手を差し出す。

 勇者さまは、魔王の手をにぎった。

 それから、きょとん顔をした。

「……お前の手、小さいな」

「うるせー! おれは13だぞ! まだまだ成長途中なんだよ!!」

 あ、魔王って、オレより年下だったんだ……。

「生まれてからの年数なら、俺はまだ2歳だ」

「はぁー? 赤ちゃんですかぁ?」

 ……ちょっと待って。どういうことだよ。

 勇者さまは、若くて10代後半くらいの見た目だぞ。

 2歳なわけない。

「それが、あるんだよ」

 魔王が「へっ」と笑った。

 まるで、そんなことも知らないのかと言うように。

「魔王が生まれたあと、勇者が生まれる。勇者に子ども時代なんてない。初めっから大人さ」

『……』

 オレも、マシロも、キョウヤも、みんな黙り込んだ。

 勇者さまの謎が、また1つ増えてしまった。

「さて諸君。これから、よろしくな」

 魔王はオレたちに向き合う。

「「「よ、よろしく……」」」

 こうして、魔王のマコトが、新しい仲間として迎え入れられたのだった。



☆――――☆


 作者のねこしぐれです。

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