《声劇台本》ハロウィンの魔法

和泉 ルイ

ハロウィンの魔法

※童謡のとおりに歌ってください

月「空にきらきらお星さま みんなスヤスヤねむるころ」

兵隊1「シー!」

兵隊2「シーッ!」

※童謡のとおりに歌ってください

月「おもちゃは箱を飛び出して」

兵隊1「バーン!」

兵隊2「ばあん!」

※童謡のとおりに歌ってください

月「踊るおもちゃのチャチャチャ」

兵隊「チャチャチャ!」


兵隊1「せいれーつ!番号1!」

兵隊2「に!」

兵隊1「3はどうした?」

兵隊2「昨晩マックスに連れ去られてから姿が見えません!」

兵隊1「きっと庭の犬小屋の中か、餌受けの中でひっくり返っているんだろうな…明日救出に行くぞ」

兵隊2「らじゃ!」

兵隊1「兵隊4はどうした?」

兵隊2「ここ一週間くらい見ていません!でも一週間前に足の軋みを訴えていたのでママさんに修理に出されたのだと思います!」

兵隊1「報告がなかったのは誠に遺憾だが今回は仕方ない。今日はそれどころじゃないからな!」

兵隊2「今日は何かあるんですか」

兵隊1「明日は何の日だ?」

兵隊2「明日?」

兵隊1「ハッピー?」

兵隊2「クリスマス!」

兵隊1「馬鹿者!それはもう少し先だ」

兵隊2「えー?」

兵隊1「ハッピー?」

兵隊2「バレンタイン!」

兵隊1「ハロウィンだ!」

兵隊2「ああ!ハロウィン!あの子が楽しみにしている特別な夜!」

兵隊1「そうあの子のための特別な夜!」

兵隊2「でも、あの子は今…」

兵隊1:あの子は今、ベッドの中で熱に浮かされている。

兵隊1「だからこそ、我らの出番!明日には熱も下がって元気にハロウィンを楽しめるかもしれない」

兵隊2「あの子のために!」

兵隊1「大切なあの子のために!」

兵隊2「でも、何をするんですか」

兵隊1「ふっふっふ。折角の楽しい夜なのにお菓子がなければ楽しさ半減。今夜の我らの任務はハロウィンのお菓子作りだ!」

兵隊2「お菓子作り!」

兵隊1「あの子が起きたらびっくりするぞ」

兵隊2「びっくりびっくり!」

月「鉛の兵隊たちはそう言って真夜中のお菓子作りを始めるのでした」


兵隊1「粉をふるうぞ!」

兵隊2「らじゃ!」

月:鉛の兵隊たちは慣れない手つきで粉をふるったり、卵を割って…。

兵隊2「ガッシャーン!」

兵隊1「どうした兵隊3」

兵隊2「僕は兵隊2です隊長!」

兵隊1「まだ隊長は拝命していない!そんなことよりどうした兵隊2!」

兵隊2「ハンドミキサーが重すぎて持てません!」

兵隊1「確かに!我らには重すぎる!」

月:体の至る所に粉を付けて大奮闘する小さなおもちゃの兵隊たち。

兵隊1「わっ」

兵隊2「きゅ、急にハンドミキサーが勝手に動き始めました!お化けでしょうか!」

月:お化けだなんて失礼な。窓の外から兵隊たちを見守りながらささやかなお手伝い。真夜中の小さな魔法でちょちょいのちょい。

兵隊1「お化けさんもあの子のために手伝いたくなったのかもしれん。この調子で手伝ってもらおう」

兵隊2「隊長!生地が混ぜ終りました!」

兵隊1「隊長ではないが宜しい!絞り袋に入れてお化け型に絞るぞ!」

兵隊2「顔はどうしますか!」

兵隊1「顔は焼きあがってから描く!まずは型通りに綺麗に絞れ!」

兵隊2「らじゃー!」

※童謡のとおりに歌ってください

月「鉛の兵隊トテチテタ ラッパ鳴らしてこんばんは」

兵隊2「隊長!三角形になりました!失敗です!」

兵隊1「違う!兵隊2!尻尾の部分はこうするんだこうっ」

兵隊2「尻尾?隊長っお化けに尻尾はございません!足もないです!」

兵隊1「最後のココの話だ!くるんとするんだくるんと」

兵隊2「くるんですか!シュッとではなく?」

※童謡のとおりに歌ってください

月「フランス人形すてきでしょう 花のドレスでチャチャチャ」

兵隊1「できた…」

兵隊2「できましたあ…!」

月:鉛の兵隊たちは大変な苦労をしながらお化け型に生地を絞り切りました。

兵隊1「ではこれを今からオーブンに入れる」

兵隊2「らじゃ!何分ですか?」

兵隊1「二百度で一分半だ」

兵隊2「らじゃー!」

兵隊1「その次は百三十度で十一分だ。焼いている間に中に詰めるものを作るぞ!」

兵隊2「詰めるんじゃなくて挟むんだと思います!」

兵隊1「うるさーい!上司に突っ込む元気が余っているようだな、さっさとその手を動かせ!」

兵隊2「うわーん横暴だー!」

月:鉛の兵隊たちは月白のキッチンで規則正しく右へ左へ。粉だらけの足でステップを踏みながらキッチンを駆けまわります。


兵隊1「これで間にクリームを」

兵隊2「ガナッシュですよ」

兵隊1「クリームを!挟んで!皿に並べれば…」

兵隊2「かんせーいっ!」

兵隊1「完成!」

兵隊2「これであの子が悲しまなくて済む!」

兵隊1「これであの子が楽しい夜を過ごせる」

月:キッチンの白い皿の上にはお化けのマカロンにちょっと歪なお菓子たち。キッチン台に置かれた南瓜の置物の横で兵隊たちはすっかり疲れて夢の中。


※童謡のとおりに歌ってください

月「空にさよならお星さま 窓におひさま こんにちは おもちゃは帰るおもちゃ箱 そしてねむるよ チャチャチャ」

月(あの子)「ふふ、おいしい…」

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《声劇台本》ハロウィンの魔法 和泉 ルイ @rui0401

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