非日常バード
プラセボ
第1話
一ヶ月前メモを拾った。
手のひらサイズの小さいメモで上部には小さい穴が八つ空いている。残業をしてくたくたでやっとの思いでたどり着いた自宅のマンションのエレベーターに落ちてたものだ。
【十八時・武蔵野プレイス前の広場・さつきと待ち合わせ】
メモにはそう書かれていた。
私は思わずマンションの自室に入るや否や、「これだ!」と叫んだ。私はずっと探し求めていたのだ。なんかこういう非日常的なものを。社会人二年目の私は、非日常とはすれ違うことさえめったにできないということを、二年間の代わり映えのしない社会人生活を通して知った。
私はこのメモを落とした人物を探したいと思った。<会いたい>ではなくて<探したい>。いや、<探したい>でもないかもしれない。メモの落とし主がどんな人物なのか気にならないわけではないが、私は落とし主よりも探すという行動自体に興味をおぼえた。
もちろんこの場所に行ったとしても落とし主と出会える保証もないし、そもそも待ち合わせの日付も分からない。日付が分かっていたとしても落とし主の顔も分からない。
それでもいいじゃないか、未確定要素がなければそれはただの日常なんだと、私は思う。
それから私は週にニ、三日の頻度で会社終わりにメモに記載されていた場所に行って落とし主を探し始めた。
そして、探し始めて二週間が経った頃、落とし主以上に気になる人物を見つけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます