第130話

「……なぜお前がここにいる」


「久しぶりの再会なんだ、そう構えるなよ」


「ウェッジさん落ち着いて! 師匠の知人なんですよ!」


 一番心配だったリヤンたちの協力も得られ、師匠に良い報告ができるとウキウキ気分で畑を整備していたところ、アルフレッドという男性が訪ねて来た。


 どうやら師匠の古い知人らしく、お茶でも出そうとしたらウェッジさんが殺気全開でやってきた。


「リッツ、ニエちゃんを連れてそいつから離れろ」


「え……で、でも」


「リッツ、よく聞け。そいつはお前の」


「ふぅ~まさか行き違いになっていたとはね。――ウェッジ、後で話があるから団員に待機命令を出しておきなさい」


「団長ッ!」


「あ、師匠おかえりなさい!」


 珍しく殺気全開だったウェッジさんが大人しくなってくれた。


 過去に何があったかわからないが今は師匠の大事な客人だ。


「リッツ、悪いんだけどウムトと……リヤンも一緒に連れて来てくれないかしら。私はアルを客間に案内するわ」


「わかりました、何かあればハリスたちにいってください」





「いや~まさかアルフレッドさんとウムトが知り合いだったなんてなぁ」


「ウムト君とは気が合ってね、少しの間だけ一緒にいたことがあったんだ」


 ウムトの顔が引き攣っている。


 きっと穢れがあったときにアルフレッドさんにも攻撃してしまったんだろう。


「そ、その節はお世話になりました……色々と……」


「まぁまぁ、アルフレッドさんも気にしてないみたいだし、ウムトもあんまり考えすぎないほうがいいぞ」


 ウムトだってあの件に関しては十分反省した。


 相手が許してくれたのであればそれを受け入れることも大切なことだ。


 人は自分自身を受け入れてこそまた歩き出せる――って師匠が言ってたし。


「リッツよ、私の目にはお前だけズレてるようにみえるぞ」


「えっ、俺結構いいこと言わなかった?」


「そうじゃなくて」


「リヤンさん、この良さがわからないようじゃリッツ様はやれませんね!」


「いやいらない」


「人をモノみたいに扱わないでくれる!?」


「ほう、リッツ君はなかなか面白い子だな」


「アルフレッドさんまで……」


 やっと師匠からの教えを俺も人に伝えることができるようになれたと思ったのに……。


「みんな、話はそれくらいにして本題に入るわよ。リッツから聞いてるとは思うけど、私たちは時期をみて聖域にいく。それについて異論はない?」


「一つ質問なんだけどこの男も連れていくつもり? 聖域の近くにいる魔物はこの辺りの魔物とは比にならないくらい強いの。下手に人数を増やしても死人が増えるだけよ」


「それについては問題ないわ。アルは私と同じくらい強いから」


 まさか師匠クラスとは……。


 あれ、もしかしてウェッジさんがさっき怒ってたのって昔負けたとか?


 取り乱すくらいだからよっぽど惨敗を喫したんだろう。


 相手が悪すぎただけですって今度フォローしておこう。


「リヤンちゃんだっけ? いざとなったら君も守ってあげるよ」


「……それはどうも」


「それじゃあ話を進める前に――リッツ、ニエちゃんと買い物にでも行ってきなさい」


「えっ、俺も話に」


「やったー! リッツ様、急ぎましょう!! 貴重な時間がなくなります! あ、アンジェロも呼ばないと!」


「ま、待てニエ、俺は」


「ワンッ!」


「アンジェロいつの間に!?」


「さぁアンジェロ、リッツ様を連れて行くわよ!」


「ワフッ!」


「ちょっと待っ……師匠、お、俺も話をおおぉぉぉ……!」

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