第129話
ティーナたちと話を付けた俺はいよいよ覚悟を決めた。
いつまでも問題を先延ばしにするわけにもいかないしここは腹を括ろう。
「二人共、呼び出してすまない」
「改まってどうしたんですか」
「……大事な話があるんだ。聖域について教えてほしい」
「いいですよ」
「あまり喋りたくないのはわかっている、だがそこをなんとかお願いして――」
「だからいいって言ってるじゃないの」
「へっ?」
「リッツ様、お二人に問題はないみたいですよ」
「大事な話って聞いたからなんだと思ったけどそんなことだったのね」
「そ、そんなことって……」
「僕たちもそろそろ話さなきゃって思ってたんです」
「あなたのことだから勝手に心配でもしてくれてたんでしょうけど、私たちだって考えているのよ」
「僕が起こしてしまった過去を変えることはできません。しかし、それにすがってばかりでは言い訳を続けているのと同じです。敵であるはずの僕をあなたが許してくれたように、僕たちも前に進む選択をしなければならない。そうすることに決めたんです」
「ウムト……お前、そんなに立派なことを考えていたのか」
「兄さんは元々頭はよかったの。ただ私のことになるとダメになるだけで、ね?」
「それについては反論の余地もない……」
「妹想いでとても素敵じゃないですか! それに、私としてはリッツ様の唇を頂けたので痛み分けというか、むしろ良かったかなと。初めては血の味でしたがそれはそれで――――」
世界の命運と俺を天秤にかけるのはおかしいと思うぞ。さらにいえばあれはノーカウントで……二人共、そんな目でみるな。
「と、とにかく話を戻すぞ。それで聖域ってのはどこにあるんだ?」
「ここからだと【エナミナル】から更に先、果ての谷を越えた場所よ」
果ての谷って確か師匠が昔修行場として使ってたって言ってた……。
「ってちょっと待て、あそこは先に進もうとしても霧があって戻されるって聞いたことがあるんだが」
「聖域への道は神獣、もしくは私たち一族しか知らないわ。まぐれで辿り着くなんてこともありえないの。あの船があれば別だけどね」
「それにあの辺りは元々穢れが濃くて魔物たちも強いんです。もし知っていたとしても、普通の人は近づくこともできません」
そんなヤバいところで修行って……まさか、そのうち俺も連れてかれる予定だったんじゃ……。
「リッツさん? 顔色が悪いようですが」
「……だ、大丈夫だ、なんでもない。師匠が戻ってきたら聖域に行こうって話が出てるんだが、それについては問題なさそうか?」
「えぇ、私たちもあそこが今どうなっているのか知りたいからね」
「それと、ティーナにも声をかけているんだが、もし呪いが解けそうなら解いてもいいか?」
実は不死が気に入っててやめてくださいなんて後から言われたら俺としても困る。
「私は構わない。成り行きとはいえ不死というのは世界に置いてかれてるようで孤独だったし、心残りだった兄さんを助け出すことができた今、思い残すこともないわ」
「僕も構いません。リヤンの無事を知ることができて未練もないですから」
「おいおい、二人共死ぬわけじゃないんだからもう少し希望を持ってくれよ」
「リッツ様の言う通りですよ! 呪いが解ければきっとリヤンさんも成長して大きくなりますから!」
「ッ!! リヤンが成長……大きく……」
ニエとウムトはジッとリヤンをみた。
「リッツよ、私はこやつら相手にどうしたらいいと思う?」
「えーっと……淑女になるならティーナに相談しよっか?」
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