第28話

 馬車を追い、着いたのは古びた屋敷だった。周りは鉄の柵で囲まれボロボロの外観は長い間誰も住んでないようにみえる。


 相手の戦力もわからないし念のため薬草を食べておくか。


「よし、アンジェロ行くぞ」


「ワフッ」


 アンジェロが臭いを辿ると明かりの漏れた部屋がみえてくる。


「おい、暴れるなよ? ボスはうるさいのが嫌いなんだ」


 覗くとカーラが倒れており、先ほどの男たちと机には男性が座っていた。


「……お前たち何なんッスか」


「嬢ちゃんが知る必要はない。それより聞くが、この薬を誰にもらった?」


「だから通りすがりの人にもらったって言ってるじゃないッスか」


「そいつの特徴は? 性別から身長、知ってることは全部答えろ」


「そんなもん知らねッスよ!」


 座っていた男はため息をつくとナイフを机に突き立てる。


「俺は面倒なのが大嫌いなんだ。二度は言わん、答えろ」


「……男……白に綺麗な模様が入った服を着てた……」


「歳は?」


「……私と同じくらい、あとは本当に知らないッスよ」


「おい、こいつの父親にも聞いてこい。少しくらい騒ぎを起こしても構わん」


「なっ!? 親父は関係ねぇッス!」


「残念ながらそうもいかねぇんだよ。お前は俺たちが可愛がってやるから大人しく――」


 そのとき男の一人が忍び込んでいたアンジェロに気付く。


「な、なんだこの犬……いつからいた?」


「野良犬か? それにしても変な歩き方をしてやがる」


 全員の目線がアンジェロに向いた瞬間、俺は室内に入ると一気に男たちを倒す。


 残るはアイツだけだな。


「あんたはあのときの!?」


「アンジェロ、縄は解けそうか?」


「ワン!」


 アンジェロが縄を解こうとしても目の前の男は椅子に座ったままだった。


「白い服にその模様、お前がこの薬の持ち主か」


「ずいぶんと余裕だな」


「お前、エリクサーって知ってるか?」


 こいつ、まさか……。


「……知らないな、それがなんだってんだ。時間稼ぎのつもりか」


「まぁ待て。お前、俺たちの組織に入らないか? この薬を見る限り優秀な薬師なんだろ」


「女性を誘拐するような奴らの仲間になれと?」


「そういうな。俺たちの組織に入ればいくらでも好きなように薬を作らせてやる。金が必要ならいくらでもやるし、気に入らねぇ奴らは始末してやる」


「好待遇だな。それで俺に何をしろと?」


「不死の霊薬といわれるエリクサーを作れ。もし完成させれば俺たちの組織は国……いや、世界を牛耳ることだってできる。そうなれば国の一つや二つくらい簡単にお前のモノだ」


「入るといったら彼女は助けてくれるのか」


「残念だがそうもいかん。話を聞いた組織以外の人間には死んでもらうのが掟なんでね」


 男は立ち上がりナイフを抜く。


「それじゃあ入れないな、国なんかもらうより彼女の命のほうが大事だからね」


「そうか、交渉決裂――だな!」


 カーラの縄が解けると同時に男はナイフを投げる。俺はナイフを蹴り飛ばすと殴りかかってきた男の拳を防いだ。


「少しはやるようだが俺のスキル『筋力増強』の敵じゃ……な、なんだお前!?」


「力ならお前より師匠のほうが数百倍強いぞ、大人しく眠ってな」


 男を殴ると思った以上に飛んでいき後ろにあった窓を突き破った。


 ありゃ、強すぎたか? 雑草で十分だったな。

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