第20話
城へ着くと何やら城内が騒がしく、俺を見つけた門番が慌てて近づいてくる。
「リッツ様ご無事でしたか!?」
「なんか騒がしいみたいだけど、どうしたの?」
「どうやらファーデン家が何者かに襲撃されたらしいのです」
「なんだって!?」
「詳しいことはわかりませんが……今、王様へ使いの者が報告しているはずです」
「わかった!」
城内を駆け抜け謁見の間の扉を開ける。
「シリウ――王様、ファーデン家が襲われたというのは本当ですか!?」
椅子に座っているシリウスがゆっくりと俺をみる。
「…………リッツよ、我々はどうやら一杯食わされたようだ」
王様が目を下すとバトラさんが膝をつき頭を下げていた。
「バトラさん!」
「おぉ、リッツ様……申し訳ございません……ティーナお嬢様が……」
ふるふると肩を震わせバトラは頭を下げ続ける。
「……何があった?」
「突然何者らかに屋敷が襲撃され、旦那様と共に抵抗したのですが奥様が人質に取られてしまい、聖人をだせといわれ、ティーナお嬢様は自らを聖女だと言って奥様の身代わりに……」
くそ、なんて無茶なことを……!
すぐさま戻ろうとした俺の耳にシリウスの声が入る。
「リッツよ、こんなときこそ落ち着かねば敵の思うつぼだ。まずは村の状況を報告せよ」
「はい……村の疫病はすぐに収まりました。原因は何者かが川の上流に大量のトウカ草を仕組んだことが原因です。今は兵たちが犯人の足取りを追っているかと」
「……陽動だった可能性があるな」
いわれてみれば最初の疫病に比べて今回はあまりにも突発すぎる。それにいくら水を飲めば発症するといっても薬のある今、被害の拡大は考えられない。
「まさか……ファーデン家を襲うために計画されていたってことですか?」
「それならば最初に疫病が流行った時点で襲撃を仕掛けていたはずだ。動きをみるに、何かしらあった計画が失敗し代わりに君自身を誘拐しようとした――ってとこだろう」
…………どこの誰だかわからないが……やってくれたな。
「わかりました、そいつは俺が追います」
「待て、狙いが君自身とわかれば君の身も危うい、兵が行くまで――」
「……大丈夫、俺が必ずティーナを救い出す」
ファーデン家の屋敷がみえてくると入り口でエレナさんとアンジェロが待っていた。
「ワン! ワン!」
「――リッツさん……お、お嬢様があああぁぁ……っ」
泣き崩れるエレナさんを支え落ち着かせる。
「…………エレナさん、ティーナを攫ったのは何人だ?」
「うぅっ……屋敷を襲ったのは五人……ですが、どこにいったのかまでは……」
「――ウオォォン!」
「アンジェロ、どうした?」
アンジェロは何度か夜空に向かい遠吠えをあげると白く輝き、巨獣と似た姿になった。
「うそ、これはまさか……神獣……」
「ワン!」
「お前……ははっ、乗れってことか!」
なぜかわからないがアンジェロが言ってることがわかるような気がする。
「匂いを追えそうか?」
「ワフッ」
よし、これなら俺が追うより全然早い!
「エレナさん、ティーナは必ず俺たちが助ける! 行くぞアンジェロ!」
「ワン!」
俺を乗せたアンジェロは暗い森の中を疾風のように駆け抜けていった。
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