第10話 ミレイユサイド
「王様――リッツを追放したことについて、詳しくお聞きしたいのですが」
「あの男はただの回復薬をエリクサーだと偽った。儂に対し嘘をつくなど言語道断、本来なら打ち首にするところだが師であるお前の働きもある。よって追放だけで済んだのだ」
「しかし彼のスキルは本物であると……まさかスキルを疑うのですか?」
「それすらも偽っていた可能性があるだろう? 師であるお前に己の恥を見せぬような」
王様を見つめるミレイユの手は強く握りしめられる。
「ポーションの効果は証明されていたはずです。なぜ今更疑うなど」
「――錬金術であればあの男の材料で三倍の量を作れる――お話の途中失礼します。王様、ご指示通り我ら『白金師団』がポーションの製造を完了致しました。これで周辺国からの売り上げは倍以上になるでしょう」
後ろから歩いてきた男は割って入る。
「うむ、ご苦労であった。エリクサーの制作も怠るでないぞ」
「もちろんです。必ずや我らが本物のエリクサーを――」
男はお辞儀し背を向ける。
「この間の礼だ、貴様に一つ教えてやろう。史上最高の薬と称されるエリクサーだが、本物の力は命ある者に不老不死をもたらすという言い伝えがあるんだよ。あの男はそのことを知らなかったようだがな」
「……なんだと?」
ミレイユが振り返ると男はその場を去った。
◆
「えーっと、今回のポーションはこれか」
「追加料金で倍の数を用意してくれるとはな。凄腕の薬師が豊富なんだろう、羨ましい限りだ」
馬車から降ろされた積み荷を兵たちが確認する。
「ん? 若干色が違う気がするが……」
「色くらいどうってことねぇよ。俺たちに重要なのは効き目だ、色で死にゃしねぇ」
「はっはっは、それもそうだ」
新たにきた馬車に荷を積み直すと兵は乗り込み、元来た方向へと帰っていった。
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