第3話

「くぅーん……」


 心配そうに見つめてくる子犬の頭を撫でる。


「…………お墓、作ってあげないとな」


 地面に落ちていた手頃な石を手に取ると穴を掘り始めた。


「ワンワン!」


「お、手伝ってくれるのか? ありがとな」


 子犬はものすごい勢いで穴を掘り進めていく。二人で黙々と作業しお墓が出来上がると手を合わせる。


 どうか……安らかに――。


「…………よし、そろそろ休むとするか」


「ワン」


 場所を移し寝転ぶと子犬が寄り添ってくる。


「お前、これからどうするんだ?」


「ワフッ?」


「行く当てがないなら一緒にくるか?」


「ワン!」


 理解してるのかわからないが尻尾を見る限りどうやら賛成のようだ。


「よろしくな、俺はリッツだ」


 もふもふな真っ白な毛を撫で回す。


 そういえばこいつの名前、どうしよっかな……。


 考えてみたが疲れた頭は働いてくれず、気がつけば俺は子犬を抱きながら眠りに落ちた。







「ワン! ワン!」


「うぅ……ん……」


 元気な声に起こされ目を開けるとすっかり日が昇っていた。体を起こし背を伸ばすと、俺に気づいた子犬が寄ってくる。


「ふぁ~おはよう……あれ? 汚れかこれ?」


 子犬の顔を撫でていると左目から耳にかけて毛が真っ黒に染まっていた。


 元からあったかな? ……まぁいいか。


 一通り撫で終えると腹の虫が空腹を知らせる。


「どれ、まずは飯にしよう。といっても――こんなものしかないが我慢してくれよ」


 食べやすそうな木の実を取り出し子犬の前に置くと、俺も手頃な木の実を口に放り込む。


 味は悪くないんだが……そろそろ肉や魚が恋しいな。


「お前、口の周りがすごいことになってるぞ」


「ワフーッ?」


「綺麗にしてやるからちょっと待ってろ」


 あ、水なんて入れてなかったわ……仕方ない、あとで川を探すか。


 休憩を挟み、俺はある草を目印に山の中を進む。徐々に水の流れる音が近くなり川がみえる。


 よし、これでひとまずは安心だな。


「ワォーーーン!」


「ん? どうした――」


 何かを知らせようとしきりに吠える子犬をみると近くで女の子が倒れていた。


「おい、しっかりしろ!」


 なんでこんなところに……傷はないみたいだが……。


 何度か声をかけるとゆっくりと口が動く。


「……お、お腹……」


 女の子はさするようにお腹に手を当てた。


「腹がどうかしたのか!? 痛いのか!?」


 なんともなさそうだが……もしや内臓をやったか……!?


「すまないが腹をみるぞ」


 手を退かし、整えられた服を捲ろうとしたそのとき、グゥ~~~と小さな音が響いた。

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