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國﨑本井
バイトの帰り道
九月のはずれ。外のバス停、スクリーンは夜。セミが鳴いている。りーん、と。鈴を転がしたようだ。
隣に黒い魔女が座る。美しい人に僕は見えない。揺れるせみは死にそうで、僕を殺す。
気づいてはいないのだろうな。僕は殺される。無自覚に殺される。
お酒を注げば目は曇るだろうか。信号待ちに12台。色が変わるとすぐきえた。街灯の下、誰もいない。いないなぁ。誰もいないんだよな。バスは来ない。雨だ。
雨。甘い匂いがする。あめのにおいとは違う。ブルーハワイ。ほんの少し甘すぎる。今度はお肉のにおい。
雨が首をしめる。
苦い。
雨の後にせみはいない。赤い、止まります。
隣の誰かのにおい。むせる
また止まった。落ちていく。白い傘をさしたあの子だった。merry jennyのワンピース。
電車は混んでいた。席はない。
ドアコックの前に立つ。
矢印に促されて下を向く。
下を向いた。
下を。
死にたさだけが落ちている。
希死念慮は元気そうだ。
安堵
足首を睨まれた。
どうせ死にたいんだろ。誰かの左手がそういった。正当化したいのだろうか、それを。
構わないさ、どうせ死にたい。
ホームセンター。カートを押す。くまのぬいぐるみ。
お菓子、夜中。
今日は暗い。
夜だし。
その子はツインテール。
さっきまでとは少し違う場所。
千歳飴。かたい。
赤い袖が揺れる。
暗い、空気の下。
笑っているみたいだ。音がない。
音はない。
話しかけられたみたいだ。声が聞こえない。
しゃぼんだまが広がった。
朝。
outlet 國﨑本井 @kunisaki1374
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