前世の記憶を持ったまま異世界に転生した主人公・クライヴが、義妹のフィオナを守るために奮闘する物語です。
まず、主人公のクライヴが前世でプレイした乙女ゲームの世界に転生してしまったというユニークな設定が面白いです。ゲームでは悪役令嬢だったフィオナを、義兄として一生懸命に守ろうとするクライヴの健気さに好感が持てます。
フィオナは外見・内面共に完璧な理想の妹キャラクターとして描かれており、クライヴの溺愛ぶりにも納得です。一方のクライヴは容姿が平凡なのを気にしつつも、座学や剣術の腕を磨き、フィオナを守るために努力を重ねる姿が印象的でした。
転生先の世界観も魅力的です。魔法があり、貴族と平民の身分差がある中世ヨーロッパ風のファンタジー世界が舞台。王子の婚約者候補を決めるお茶会など、乙女ゲームらしい設定も盛り込まれています。
クライヴとフィオナの微笑ましい義兄妹関係と、フィオナを取り巻く恋のライバルの登場により、先の展開への期待が高まります。特にお茶会で、ゲームの攻略対象キャラクターの一人・ステファンから突然プロポーズされたシーンは衝撃的でした。
フィオナを守ると誓ったクライヴの発言が彼女の人生を狂わせる伏線になっていることが示唆され、これからどのような展開が待ち受けているのか気になるところです。
異世界転生×乙女ゲームというファンタジーと恋愛要素を組み合わせた軽快な物語で、義兄妹の絆の深さと行く末を楽しみながら読み進められました。
兄というよりも娘を見守る親のような立場なのがとても心を和ませてくれるという作品です!
1話冒頭ではしっかり人生に絶望しているという様式美を経て転生することになりますが、頑張るベクトルの向け方がとても微笑ましいので頬を緩めながら読み進められます!
あらすじを丁寧になぞっていく形の進行ですが、随所で挟まれる兄心を通り越した親心の心情描写が物語のスパイスとして機能していました!
そんなほんわか進行も序盤を過ぎると、少しずつ歯車がズレていくように物語の主軸、そしてタイトルに冠する出来事が輪郭をなしていきます!
読み手側としては楽しいのですが、主人公としては・・・
という、ハラハラしながらも頬を緩めることができるとても素敵な作品。みなさんも兄の苦悩を眺めてみるのも良いかと思います!