第三章 恋の駆け引き

第37話 夏期休暇

※フィオナ視点です※


 ご機嫌様。わたくしフィオナ・アークライトにございます。


 え? 誰に挨拶しているか? 別に誰でも良いでしょう。そういう気分なのでございます。


 そんな事よりも、わたくしは今、最高に幸せなのです。何故かですって?


 只今、絶賛長期休暇中なのです!


 お義兄様と四六時中一緒にいられるのです。学園に行くと、やはり学年が違うので中々会えません。


 休日はアレン様と慈善活動です。これがお義兄様とだったら楽しくてしょうがないのですが、アレン様ですからね。はぁ……。


 そしてお義兄様、なんとこの暑い夏を乗り切る為に氷と風魔法を使って部屋中を快適な温度に保って下さっているのです。


 そのような使い方もあったのかと感心致しました。それからと言うもの、わたくしは快適なお義兄様の部屋に入り浸っております。

 

 もちろん、お部屋が快適だから入り浸っている訳ではありませんよ。それを理由にお義兄様と一緒にいる為です。


「お義兄様、わたくし幸せです」


「そうか、それは良かった」


 わたくしがアレン様と婚約してからと言うもの、お義兄様はわたくしがアレン様をお慕いしていると勘違いしておりました。


 ですが、先日その誤解は解けました。こちらのペンダントをプレゼントして下さった時に言われたのです。


『俺はフィオナに嫌われたら生きていけない。アレンの事も俺が軽率だった。悪かった。これからも仲良くして欲しい』


 これは正に二度目のプロポーズですわ!


 最近物思いに耽っていることがあるので、わたくしとアレン様の婚約破棄について策を巡らせているのでしょう。


 婚約当初はアレン様がお義兄様に危害を加えると思っていたのですが、何やらお義兄様を何かから守っているようなのです。詳しくは教えて下さいませんが……。なので、もう暫く婚約ごっこは続きます。


 それにしても、最近気になるのはアリスです。先日友人になったのですが、何やら雲行きが怪しいです。


「お義兄様、アリスとは仲が宜しいのですか?」


「アリス? まぁ、悪くはないけど、どうしたんだ?」


「いえ……」


 お義兄様の反応はいまいちですが、学園でお義兄様とアリスが二人でいるところを見かけたという目撃証言が相次いでいるのです。

 

 勉強会を開催する前から、お義兄様はアリスを名前で呼んでおりましたし、怪しい限りです。


 だからと言って、アリスが嫌いな訳ではありません。仲良くなれるならもっと親しくなりたい。そういう気持ちは強いです。ですが……。


 お義兄様にちょっかいをかけるようなら、友人であろうと、わたくしは容赦は致しません。


 夏休みに入ってからは、たまにステファン様が遊びに来ますが、こうやってわたくしと常に一緒なので安心です。


「フィオナ、大丈夫か? しんどいならベッドで横になるか?」


 考え事をしていたら、表情が強張っていたようです。お義兄様に心配されてしまいました。わたくしとしたことが……。


 ですが、お義兄様のベッドですって!?


「少しだけ休ませて頂きますわ」


「うん。ゆっくり休め」


 そう言って、お義兄様はわたくしを横抱きにしました。両腕をお義兄様の首に絡め、更に密着します。


 吐息を首筋にかけてみると、お義兄様がビクッとして、胸のドキドキが速くなったのが分かりました。わたくしにこんな反応して下さるなんて幸せです……。


 ベッドまで行くと、そっとわたくしを下ろして布団をかけてくださいました。


「ありがとうございます。お義兄様もお顔が真っ赤ですよ? 一緒に横になりましょう」


「いや、大丈夫」


「そうですか?」


 無理矢理連れ込んでも良いけれど、急ぎすぎは良くありません。今日の所はお義兄様のベッドを堪能することに致しましょう。


「そうだ、フィオナ。今度の夏祭り一緒に行かないか?」


「はい! 是非!」


 お義兄様に誘われるなんて。いつもは毎回わたくしからなので、とても嬉しいです。


「今年は花火がいつもより盛大という噂ですわよ」


「それは楽しみだな」


「はい、とっても」


 お義兄様と夏祭りデート楽しみですわ。

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