第2話
夜中から降り始めた雪がうっすら積もっている。
今日はあの子をお迎えに行く日だ。いっぱい着込んで寒くないようにしたし、あの子のためのキャリーケースの中には毛布を敷いた。
ペットショップにつくと『新しいお家が決まりました』って書かれたサークルの中であの子がぼくに向かってジャンプしている。
「ルナ、お迎えに来たよ」
手を伸ばすと一生懸命しがみついてきた。
この前のお姉さんが来て、
「お名前、ルナちゃんにしたのね」
って言いながらルナを抱っこさせてくれた。
「はい。最初に会ったときから決めてました。この子の瞳を見てたら頭に浮かんだから」
「かわいくて素敵なお名前ですね」
「なんだ、ちゃんと名前決めてたのか。考えておくとしか言わなかったから迷ってるんだと思ったよ」
「ルナちゃん、
『キャン!』と元気よく吠えて尻尾をブンブン振っている。まるで返事をしてるみたいだ。
家に帰ると、あっちこっち覗いたり匂いを嗅いだりして部屋中を探検して歩いている。
たまにぼくのところへ来て見つめてくる。頭をなでてあげるとまた探検に行く。
それを何回か繰り返すと、こたつに足だけ入れて座っているぼくの膝に乗ってきてあっという間に眠ってしまった。
知らない場所に来て動き回って、きっと疲れたんだろうな。
かわいい寝顔を見ながら背中をなでていたら、いつの間にかぼくも横になって居眠りをしてしまった。
「奏太、ご飯よ。起きられる?」
お母さんに呼ばれて目を覚ますとぼくはベッドで寝ていて、おなかの上でルナが丸くなって寝ていた。
「お父さん、ベッドに連れてってくれたの?」
「こたつで寝たら風邪引いちゃうからね。ルナもベッドに登ろうとして飛び跳ねてたから乗せてやったら、奏太にくっついてすぐ寝てたよ」
「さあ、ルナにもご飯あげて」
お母さんがルナ用のご飯も作ってくれていた。マットを敷いてご飯のお皿を置くと、ルナはお座りをしてぼくの顔をじーっと見てくる。よし、って言うとゆっくり食べ始めた。
お座りも待ても教えてないのにちゃんとできる。トイレだって自分でシートのところまで行ってた。
...ぼく、犬の飼い方とかしつけの本をいっぱい読んで勉強したのにな...
相変わらず体調を崩すこともあるけど、今までよりも外に出る時間が増えてきたと思う。お母さんとルナと一緒に散歩をして知らないお店を発見したり、こんなにいろんな花が咲いてるんだって気づいたり。
学校にいられる時間も長くなって、授業でわからなかったところをクラスメイトが教えてくれたり、好きなゲームや本の話をすることもあったりして初めて学校が楽しいって思えるようになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます