甘い恋
末廣ゆう
第1話
初入店
終電で自宅の最寄駅についた梨花は、くたびれた足取りで駅近くのコンビニのドアをくぐった。甘いモノを買って、おうちで食べよう。そうしよう。
三十代も終わりに近づき、独り身で、癒してくれるペットも恋人もいない。
ため息をつきながら、チョコケーキの上に白いマカロンが乗ったスイーツを一つ買う。ハートの形が可愛らしいマカロンに惹かれたのだ。
コンビニのレジ袋を提げて、ゆっくり歩いていると暖色の灯りに照らされたバーの看板が目に入った。
(あれ、新しいお店かな……)
とにかく疲れていて癒やされたかった。そのまま、誘蛾灯に誘われるかのように、木製のドアを開けていた。
「いらっしゃいませ」
静かな声で若いバーテンダーがどうぞ、と席を指し示す。
カウンターだけのこじんまりとしたお店。他に客はいないようだ。
くたくたっと席につくと、あたたかいおしぼりが目の前に差し出された。
手を拭って、メニューはありますか? と尋ねると、おっしゃってくだされば、何でも作りますよ、とにっこり返された。
バーテンダーの後ろの壁にはめ込まれた棚のボトルを眺めて、楊貴妃を頼む。
バーテンダーがシェイカーを振る様をなんとなく観察していた。
(あーらら、若いなー。お肌つるつるだー。可愛らしい顔してるわー。いいなー。私もあんな肌の頃があったかなぁ)
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