声のつづき
伊富魚
こぶた
こぶたを拾った。
まだ目も開けられないくらいの小さなこぶた。
からだはおもちゃみたいな弾力だ。
雨が降って濡れていたから家に連れて帰った。
何か食べるだろうかと冷蔵庫を開けて
たまたまあったソーセージをこぶたの口元へ持っていった。
するとこぶたはピギィと鳴いてソーセージをパクパクと喰み始めた。
まだ力が弱いからかなんどもパクパクしている。
しばらくして口の中にソーセージがなくなると、
こぶたはすうすうと静かに寝息を立てた。
どのくらいごはんをあげたらいいのだろうか。
そもそもぶたって草食じゃなかったっけ。
雨の上がった外へ出て、階段の裏に生えている雑草を一枚ちぎって、
パーカーのお腹のところに入れていたこぶたの口元にまた近づけた。
寝ていたこぶたはまたピギィとないて、雑草を喰んだ。
雑草はソーセージよりも食べづらそう。
何度も食んではいるけれど、なかなか口からなくならない。
しばらくしてこぶたの様子を見てみると
口いっぱいに雑草を残したままじいっとこっちを見ていた。
目があった。きらきらした真っ黒の目が二つついていた。
すると、こぶたの口がばきゅあと裂けて、
中から真っ赤なザリガニが出てきた。
つやつやして生気に溢れたザリガニだ。
ザリガニはこぶたからぐいと這い出して、
ずんずんと顔前に近づいてくる。
目の前がザリガニの赤でいっぱいになると、
ぼくは何もできずに目を覚ました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます