声のつづき

伊富魚

こぶた

こぶたを拾った。

まだ目も開けられないくらいの小さなこぶた。

からだはおもちゃみたいな弾力だ。


雨が降って濡れていたから家に連れて帰った。

何か食べるだろうかと冷蔵庫を開けて

たまたまあったソーセージをこぶたの口元へ持っていった。

するとこぶたはピギィと鳴いてソーセージをパクパクと喰み始めた。

まだ力が弱いからかなんどもパクパクしている。


しばらくして口の中にソーセージがなくなると、

こぶたはすうすうと静かに寝息を立てた。


どのくらいごはんをあげたらいいのだろうか。

そもそもぶたって草食じゃなかったっけ。


雨の上がった外へ出て、階段の裏に生えている雑草を一枚ちぎって、

パーカーのお腹のところに入れていたこぶたの口元にまた近づけた。


寝ていたこぶたはまたピギィとないて、雑草を喰んだ。

雑草はソーセージよりも食べづらそう。

何度も食んではいるけれど、なかなか口からなくならない。


しばらくしてこぶたの様子を見てみると

口いっぱいに雑草を残したままじいっとこっちを見ていた。

目があった。きらきらした真っ黒の目が二つついていた。


すると、こぶたの口がばきゅあと裂けて、

中から真っ赤なザリガニが出てきた。


つやつやして生気に溢れたザリガニだ。

ザリガニはこぶたからぐいと這い出して、

ずんずんと顔前に近づいてくる。


目の前がザリガニの赤でいっぱいになると、

ぼくは何もできずに目を覚ました。

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