たいとる
闇雲ねね
たいとる
シュレッダーにかけた紙は、お米みたいで美味しい。
なんて、奇をてらってすんません。あっしは前世がヤギの異食症でありんす。このたび、ある男子の大事な大事なラブレターをあっしがシュレッダーにかけちまったことが騒ぎの発端でしてね。粉々じゃなくて米々。いやいや、飯だけにメシウマ。じゃなくって。メシウ、メェ~。じゃなくて!あー、やばいやばい。どうしたもんかねってなほど復元不可能に刻まれた山ほどの紙を前に、ラブレターの混ざった茶碗一杯の紙を食らいながらあたしゃあ思考停止してたわけです。
「そ、そこに、ぼ、ぼくの、て、てがみがあったと、お、おもうのですが!」
わなわなと汗かき火照りの、あら、好青年。それを唇の端から卵液垂らしながら見返すあっし。ちゃっかり卵かけご紙にしちゃってんじゃないよって。ツッコミ待ちしちゃいます。
「てがみ?」
「ぼ、ぼくのら、ら、らぶれたあです。」
火照りどころか真っ赤な林檎が木に成りました。気になりました、座布団一枚。
「そんなたいせつなもん、ここにおかないでよ。」
「ご、ごめんなさい。」
「でもあっしがわるいわ。ごめんな。」
こうなったらしょうがない。ひと肌脱いでやろうじゃあねえかい。恋のきうぴっどでい!よぉ~っ。たんたん。
「で、どのこがすきなのさ?」
「き、きむらさん。え、A組の、き、きむらさん。」
ほほお。たしかにきむらはいいやつだ。二年間同じクラスで切磋琢磨したあっしの目に狂いはないよ。それに加えてかわいこちゃんだ、あっしの次にな。ガハハ。
「冗談ばかりのよしこちゃんはおやめよってな。」
「え?」
「御免。心の声が。」
いけねえ。つい熱が入っちまったい。
「きむらと面識はあるのかい?」
「お、おなじ、ぼ、ぼくしんぐ部にいて。」
「ぼくしんぐ??」
このおシャイな青年、ぼくしんぐなんてやってるのかい。人は見た目によらないねえ。きむらはマネージャーってところかい。ベタだねえ。
「きむらのどこが好きなんだい?」
「り、りんぐに上がると、か、かっこよくて、か、かわいくて。」
うんうん。て。え?選手かい?
「しんぱんなんだけど。」
審判かいな。
「今日の放課後、第二体育館に集合な!」
「え!?」
「恋のK・O決めてこようぜ!」
「審判だけどね。」
「あいたた。こりゃあ一本取られたぜい。」
第二体育館で落ち合ったあっしと青年。とはいえきむらはまだきていないようでさ。
「り、りんぐに。き、きむらさん。」
あっし、驚きました。目を白黒たあ、このことです。りんぐにいるのはただ一人。某サイヤ人のように髪を逆立てた眼光鋭い狼男だってんですから。
「れいおんさん、驚かせてしまってすみません。私、前世が狼で、ときどき昔の血がたぎっちゃうんです。」
そしてむんずとあっしの手を握るきむら。
「私、れいおんさんのこと…。食べたいです!!」
ヤギのあっしはひるみました。
「ぼ、ぼくは、き、きむらさんのこと、好きです!!」
おめえそれ言うの今かバカ。でもよく言った。そのせいでカオスだがな。どうやって収拾つけるんだい。
「あたしは、いつか高座に立つまで死ねねえんだわ!」
とりま逃げるあっし。それを四足歩行で並走するきむら。アトムさながら浮いて追いかけてくるロボット。
「待ってー!」
「待たないーー!!」
死を覚悟しながらグラウンドへ駆け出すと、聞こえてきたのは当校誇る合唱部の美声。
♪生きとしー生けーるーすーべーてのーものーへー
森山直太朗。。ええ歌やん。。あっしは思わず泣いた。きむらもロボットも泣いている。合唱ってすげえ!
「おめえら、行くぞ!」
あっしたちも合唱に加わった。ヤギと狼とロボットの加勢に、合唱部も心を震わせる。涙々の直太朗。これなら全国目指せるぜ。なあ、きむら!なあ、ロボット!
♪もはやぼくはーにんげんじゃーないー
その熱意のままに夏のコンクールでは見事、全国優勝を勝ち取った一行。人も動物も協力し合わなければ。生きとし生ける物として。めでたしめでたし。
れいおんさんたち、次はポケモンマスターを目指すそうですよ?たとえ火の中、水の中、草の中。サトシくんのお供で。。
たいとる 闇雲ねね @nee839m
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