浮気した彼女が復縁を迫る中、後輩までやってきて修羅場なので逃げたいと思います。
水都suito5656
第1話 修羅場からの脱出!
「やっぱり私には君じゃないと駄目みたいなの!」と、目の前で元カノが言えば、
「ちょっと、別れたんじゃなかったの!」と後ろからサッカー部の後輩が追い打ちをかける。
たぶん優柔不断な僕が悪いんだろうきっと。
目の前では親友と浮気した彼女が復縁を迫ってきていた。
「あの時は気の迷いだったの。本当に好きなのはあなたよ」
「はあ、何言っているの。裏でまだ付き合っているの知っているんだから」
えええ。そうなの?
「そ、それはたまたま気分が悪くなったので、近くのホテルで休んでいただけよ」
ホテル・・・まじか
「あなただって同級生と付き合っているじゃない」
「か、彼はただの幼馴染よ。別に悪い事してないし!」
「ほー。連日デートしててもそういうこと言うの?」
「あれはデートなんかじゃない!それに遊んだだけだし!」
「キスしたじゃん」
「何でそれを!」
・・・キスしてるんだ
これは何の茶番だろう。
ぼくは何だかどうでも良くなってきた
みんな自分のことしか考えていない。
「あ、ちょっとどこ行くの!」
「まだ終わってないよ!」
もう終わってるんだよ
もう全部終わりにしたい
「さよなら」
そうして僕はすべてを投げ出した
*
「結構高いな」
そうしてぼくは今この場所にいた。
東尋坊って・・別にサスペンスのクライマックスでもない。
情けなくて結構。僕はただ安らぎを求めていた。
それしか選択肢がなかった。
このときの僕は彼女たちとの対応で追い込まれ、精神が変調をきたしていたのだと思う。
彼女たちから逃げて ついでに世界からも逃げようとしている。
「・・・それにしても気になる」
僕の後ろには順番待ちのように立っている女の子がこっちを見ていた。
「あの先にどうぞ?」
何事もレディーファーストだね
彼女はビクッとなり
「いえいえ お気になされずどうぞ」
「どうぞ」
「どうぞ」
はあはあ、そうして小一時間が過ぎた。
「あのさ」
「なに?」
「お腹が空いてきたしそろそろお昼にしない?」
「・・・あなたバカなの?」
バカで結構だよ、でもここにいる時点で君だって馬鹿だよ。
「近くになにか無いか探してみる」
そう言って彼女は駐車場に停めてあった車からスマホを取り出した。
あれ
「なによ」
「いえなんでも」
結構いい車で驚いた。若い子が乗るような物で無いよね。
「ん、どこも混んでいるわね」
そう言って彼女は助手席のドアを開けた。 なに?
「乗って」
「えっ」
「この近くに食べ物やさん見つからないの」
こうして何故か僕は市内のホテルまで来ることになる。
*
「ねえ、何でこうなったの?」
「僕にもわかりません」
二人してホテルのレストランでお昼を食べた。すんごく美味しかった。
そのあとなぜか、彼女が泊まっているホテルの一室に向かうことになった。
「先にシャワー行くけど、君も入る?」
ぼくは一瞬考えたけど
「はい、ご一緒させてください」彼女はちょっと驚いて、
「そこは恥ずかしがるものじゃないの?」
恥ずかしいけど、今は一人になりたくなかった。
*
「どうして何も聞かないの?」
ぼくは眠そうにシーツから顔を出す。
「ううん何でも無い。君は寝ててよ」
「気になるよ、良いから話して」
「まあ、ありふれた話よ。私捨てられたの」
「こんなに美女を捨てるなんて」
「ありがと褒めてくれて。しょうがないわ。向こうは大会社のご令嬢。こっちはしがない歌い手よ」
歌い手?
「歌手なの?」
そう聞いたらスマホを操作して動画配信サイトを開いた。
「あ、この曲知ってる」
それは今年大ヒットした映画でも使われた曲だった。
「あたしが作ったの」
「すごい!」
「ありがと!もっと褒めてもいいよ。ちなみにこの絵を書いたのが元彼」
「すごく上手ですね」
うわー世界が違う。
いきなり過ぎて頭が追いつかない。
それに比べてぼくは何で死のうとしたんだっけ。
でも消える前に誰かに知ってほしかった。
「・・じつは」
そうやって僕はこれまでの事を彼女に話した。
*
「あははははははは!」
「ひどい!」
「いやーだって」まだ笑ってる。やっぱり話すんじゃなかった。
「ごめんって、すねないでよ。高校生らしくていいじゃん!」
「自分でも馬鹿だって分かっているけど」
彼女の絶望に比べたら、たいしたことないんだろうけど。
「それで、まだ死にたい?」
「それはまだわからない」今は大丈夫だけど
彼女達を見たらどうなるんだろう。
「じゃあさ!いっそ別れちゃいなさいよ。ふたりとも」
それは想像できなかった。どちらか選ばなくちゃって思ってたから。
「選ばないという選択をするんだよ。そう選ぶの」
「そのかわり私に付き合ってよ、さっき見たけど絵が描けるんだよね」
「絵って、これですか」僕はスマホケースに挟んだ小さなイラストを指差す。
「そうそれよ!」
これは僕が絵の具と色鉛筆とカラーインクで描いたものだ。
「可愛いよ!どうしてアナログなの。デジタルは使える?」
「それはやったことがないから。僕パソコン持ってないし」
「じゃあ、あたしの貸してあげる。それで私の作品に絵を描いてよ!」
さっきまで死にそうな顔してたひととは思えない。いきいきと喋っていた。
「描いてもいいけど条件があります」
「いいよ、何でも言って」
これを言えば嫌われるかもしれない。けど、もうひとりは耐えられない。
「僕とずっと一緒にいて下さい」
「うんいいよ!」
え、いいの?
「・・・そんなあっさり」
「でも、あたし学校があるからずっとは厳しいな」 え、学校?大学生かな?
「あのーお姉さんって今いくつなんですか」 20歳くらいかな。
「失礼な!これでも十代だよ!18歳!高校生!」
「・・でも運転してて」
「別に18なら免許取れるでしょ」それはそうだけど
「そうと決まればはいスマホ出して 連絡先交換しとかないと」
「ちなみにどこの学校なんですか ぼくは県立の〇〇です」
「あたしは私立の女子校よ」
そこは僕でも知っている超進学校だった。
「そんなとこに通えるのに何で・・あ」 失言だった
「ごめんなさい」
「ううん。いいの」
彼女は少しだけ別れた時のことを話してくれた。
「好きだったのにな。なんでうまくいかないんだろ」
彼女はベットの上で、声も出さずに泣いていた。
その頬を涙が流れてゆく
今までの楽しかったことを思い出しているのかもしれない。
不謹慎だけど、その横顔はとても綺麗に見えた。
一目惚れがあるとすれば、今がそうなのだろう。
ぼくはそっと彼女の手を握りしめた。
「なに?慰めてくれるの?」
「はい、でも何も出来ない」
「そんな事無いよ。・・・ありがとう」
彼女を救いたい。
でもぼくは彼女のことはまだ何にも知らなかった。
今はただ、彼女の手を握る事しか出来なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。