第21話


 ステータス


 名前:『白石優也』

 年齢:『15』

 性別:『男』

 称号:『ラッキーマン』『マッチョマン』『リア充』『Fクラス(NEW)』


 レベル:『50』

 腕力:『32』

 俊敏:『42』

 体力:『30』

 技術:『30』

 知力:『19』

 魔力:『31』

 運勢:『30』


 MP:『48』

 DP:『35』


 スキル:『合成マスター』『鑑定眼レベル3』『異空間レベル2』

 従魔:『クロム』『アマメ(NEW)』

 武器:『ゼリーソード』『鮮血剣レベル1』

 防具:『水の鎧』『ブラックビーストの靴』

 道具:『無限の水筒』『永遠の黒髪』『魔法の筆』

 素材:『暗色の蒟蒻』


 今や恒例となった寝起きのステータスチェック。これが僕の現在のありのままの姿だ。昨日の今日ってことで訓練は一切してないのでステータス値に変化はない。


 知力をもう少し上げるべきかなとか、装備がいい感じに揃ってきたとか、色々と思うところはあるんだけど、Fクラスっていう称号が特に輝いてるように思う。やっと昇格を掴み取ったって感じだからなあ。


 ……あ、そうだ。ここからFクラスの教室へ行くにあたって、魔法の筆で情報を色々隠しおいたほうがいいかもね。最底辺のG級と違って、鑑定系のスキルを持っている人が何人かいてもおかしくないし。


 僕の情報については、ある程度のことは青野さんたちに知られてるけど、彼らは味方だからいいんだ。それ以外、特に敵対者に見られると不利になる可能性もあるので、最強の探索者を目指すなら対策しないといけない。


 ってことで、僕は魔法の筆を使ってステータスの色んな部分を黒塗りしていく。隠す情報はこんなものでいいだろう。


 ステータス


 名前:『白石優也』

 年齢:『15』

 性別:『男』

 称号:『ラッキーマン』『マッチョマン』『リア●』『Fクラス』


 レベル:『●●』

 腕力:『●●』

 俊敏:『●●』

 体力:『●●』

 技術:『●●』

 知力:『●●』

 魔力:『●●』

 運勢:『●●』


 MP:『48』

 DP:『35』


 スキル:『●●マスター』『●●●レベル3』『●●●レベル2』

 従魔:『●●●』『●●●』

 武器:『●●●ソード』『●●剣レベル1』

 防具:『●の鎧』『●●●●●●●の靴』

 道具:『●●の水筒』『永遠の●髪』『●●の筆』

 素材:『●色の蒟蒻』


「ふう……」


 大体こんなもんでいいかな。これなら鑑定系スキルで探られたとしても、黒塗りばかりでわけがわからないだろうし。称号の一部を消したのは仕方ない。リア充ってどう考えても無駄に敵を作りそうな称号だからね。また狙われる男になりたくもないし……。


「ムニャ……この、絶品だモ……」


「……」


 地下室の溶鉱炉(飾り)近くで寝ているクロムの寝言がちょっと可愛い。焼き鉄って、彼にとっては焼き芋的な感覚っぽい。


 もう一人の従魔のアマメもお休み中かな?


 僕は製鉄所を模したこの場所から階段を上がって、一階の和室の様子をそっと覗いてみる。このブラックビーストの靴は、こっそり歩かなくても全然音がしないので本当に便利だ。


 おぉっ、アマメは僕が用意した小さな布団で寝ていた。昨晩にちゃぶ台の上に置いておいた海苔とご飯と沢庵のセットもちゃんと食べてくれてるのがわかる。食堂から拝借したものなんだ。


 よかったよかった。それにしても、寝顔が可愛いので間近で眺めたくなる。まだ懐いてないとはいえ、僕の従魔なんだしちょっとくらいならいいよね?


「――わたくしは、安くありませんのよ……」


「っ……⁉」


 僕の眼前でアマメがむくりと上体を起こしたかと思うと、目を瞑ってパタンと倒れた。あー、びっくりした……。クロムに比べると、かなり心臓に悪いタイプの寝言の吐き方だ。


 それでも、彼女は賢いのもあって僕がこれらのものを用意したことはわかってそうだし、心の距離は縮まってると思いたい。


「……」


 んー、そういや何か忘れてるような。なんだっけ……って、たった今思い出した!


 慌てて端末で時刻を見ると、朝の7時を少し過ぎたところだった。この時間帯にみんなと大部屋で集合するって約束してるんだ。


 んで、そこからみんなで朝ご飯を食べて、校舎二階のFクラスへ行くことになってたってわけ。


 なんせ8時からF級のクラスメイトに自己紹介をしなきゃいけないからね。不良だらけのG級とは違うだろうし、初日から遅刻をかましたくはない。


「――ぐごおおおぉぉっ……!」


 そういうわけで、僕は異空間から大部屋へと戻るも、そこには獣の咆哮のようないびきをかく青野さんと、怪我から復帰したG級の生徒が数名寝てるところだった。


 まだ寝てたのか……。まったく。青野さんのいびきは部屋中に響き渡るほどうるさいから、異空間スキルがあって本当によかった。とはいえ、今日でこのタコ部屋と別れると思うと寂しくなる。


 お、誰か来たと思ったら汐音だ。


「ごめん、優也君……。ちょっと遅れちゃった……」


「大丈夫大丈夫。遅れたっていってもほんの少しだけだし、青野さんなんてこの通りまだ寝ちゃってるくらいだからね」


「ほんとだ……」


「ぐがぁぁっ……うししっ。小鳥よ、わしは遂にやったぞ……」


 青野さんの寝言から察するに、楽しい夢を見てそうだ。そっか。孫の小鳥ちゃんもFクラスにいるわけだからね。念願が叶って嬉しいだろうなあ。


「……真っ黒……」


「え、汐音、真っ黒って?」


 汐音が急に変なことを言い出した。そういや、今日の僕のパンツの色って黒なんだよね。ま、まさか、『鑑定眼』スキルで見られちゃった……⁉


「ステータス……」


「あっ……そっちか……!」


「そっちって?」


「あ、いや、こっちの話! 今回のガチャで手に入れた隠蔽用の道具があって、それで隠したんだ。味方ならいいけど、敵に自分のステータスをじっくり見られたら嫌だからね」


「へえ……便利なんだね。私の黒いのも見る……?」


「え、し、汐音の黒いのって、何かな……?」


 汐音の台詞にどぎまぎする。もしかして、アレじゃないよね……?


「見たらわかるよ。今回、手に入れたものだから……」


「あ、あぁ、そっちね! こっちは黒塗りで隠しといてなんだけど、それじゃあ遠慮なく……」


 ステータス


 名前:『黒崎汐音』

 年齢:『16』

 性別:『女』

 称号:『死神』『リア充(NEW)』『Fクラス(NEW)』


 レベル:『30(+10)』

 腕力:『22』

 俊敏:『20』

 体力:『19』

 技術:『21』

 知力:『24』

 魔力:『22』

 運勢:『20』


 MP:『2(-298)』

 DP:『13(-137)』


 スキル:『鑑定眼レベル3』

 従魔:『シャドウキャット(NEW)』

 武器:『死神の大鎌』

 防具:『悪魔の翼(NEW)』

 道具:『呪いの赤い糸(NEW)』

 素材:『無し』


 おお、さすが汐音。素材ガチャと合成が上手くいったみたいで、新たにレベル、従魔、防具を手に入れてる!


 この中で特に気になったのは従魔のシャドウキャットだ。『鑑定眼』で調べてみると、闇喰いの猫ともいって、夜だと思ったときにだけ活動し始める黒猫で、暗闇を動力にして生きるんだとか。


 懐けば言葉を喋るだけじゃなく、全身の毛を逆立てることによって、モンスターの発生を早い時期から予測できるみたい。喋る猫って羨ましいなあ。夜以外は寝てるみたいだけど。


「ほら、優也君。見て……」


「あっ……!」


 汐音の両手に漆黒の猫が現れる。見た目はただの黒猫だけど、なんとなくオーラがある感じだ。


「撫でてもいいの?」


「いいよ」


 うわ、モッフモフだ。いいなあ。熟睡してるのか、いくら触っても起きなかった。


「そうだ、汐音。この子の名前、シャトっていうのはどうかな?」


「シャト……?」


「シャドウキャットから取ったんだ。安直かもしれないけど……」


「……いいね。じゃあそれにする」


「おー! シャト、これからよろしくね!」


「……」


 当然、寝てるから返事は来ないんだけど、シャトの耳がぴくっと動いた気がした。そのあと、お役御免なのかシャトは汐音の腕の中ですっと消えていき、その代わりのように黒い大きな翼が汐音の背中に生えた。


「これ、どう……?」


「うわ……」


 ゴクリッ……漆黒の翼を広げた汐音は、思わず息を呑むほどの大迫力だ。これが悪魔の翼か。そういや詳細までは調べてなかったけど、どんな効果なんだろう? この際だから彼女に直接聞いてみるか。


「それってさ、どんな効果があるの?」


「……これ……」


「……」


 悪魔の翼がはためき、汐音の体が1メートルくらい宙に浮かんだと思ったら、すぐに着地した。ありゃ?


「ちょっと浮かぶ程度の効果みたい」


「ははっ……」


 でも衝撃とかこれで和らげそうだし、何より汐音にはぴったりな感じだからいいのかもね。大鎌と黒猫とのセットで、死神系のファッションとして……。


 そのあと、しばらく経ってからタクヤとマサルが慌てた様子でやってきた。


「すまねえ、みんな。マサルと遅くまでガチャと祝勝会やってたから寝坊しちまったぜぇ」


「みんな、わりーな。そういうわけでのろまってよ……」


「大丈夫大丈夫。もっとがいるから。だよね、汐音?」


「うん」


「「え……?」」


「ぐがああぁぁぁっ……」


「「……」」


 タクヤとマサルもようやく気付いたらしい。


 というわけで、まだいびきをかいて寝ている青野さんをみんなと一緒に叩き起こしたあと、僕たちは急いで食堂へ行って朝食を手早く済ませ、ようやくFクラスへと出発することになるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る