第19話 不死身の僧兵
遺跡の深部にある、溶岩の海の中で 『それ』は複数ある鎌首を持ち上げ上を見ていた。
自分の領域である、この場所に誰かが侵入し近づいて来ている。
小さき者の神に討伐され、宝剣と共に失ったはずの命は、目覚めると命も宝剣も戻っていた。
だが身体中が痛い。痛みに支配され何も考えられない。
何故か憎しみが沸き、誰でもいいからこの牙で引き裂きたい。燃やし尽くしたい。
何かに急かされ時がくれば地を割り進み、地上を目指す予定だった『それ』は侵入者に反応する。
…
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アラタ達一行は逃げた英雄を追い、あれから幾度も階段を降りていた。
だんだんと魔物が強くなっていくのを感じる。
そろそろ戦闘に参加するか、と考えていたアラタにレオルが告げる。
「陛下、そろそろだぞ。あの階段を降りた所だな。」
「いよいよね、こんな所まで1人で来るってかなり化け物ね。どんな英雄なんだろ。」
巴が緊張しながらごくり、と喉を鳴らした。
「ふむ、レオルや、どう見ている?」
巴の言葉にアラタは何やら思案している。
質問を投げかけられたレオルは少し考え込み口を開いた。
「やっぱり陛下も気付いたよな? そいつは、普通なら何度も死んでるダメージをおってる。戦った後や、周りに飛び散った血液、これでも生きてるなら化け物だな。」
レオルの言葉にアラタも同意を示した。
「うむ、同じ意見じゃな。かなり苦戦しながら相打ち気味に魔物を倒しておる。何かのスキルの可能性が高いのう。」
階段を降りながら話す2人の真剣な面持ちに巴の緊張も高まる。
「まあ、かなわなそうならスキルで逃げれば良かろう。とりあえず会ってみようかのう。」
緊張した巴を安心させるように軽い調子で言うアラタに、巴は呆れながら言う。
「アラタといると、本当に緊張感なくなるわね。何とかなる気がするから不思議だわ。」
「ガハハハ、同意だ巴殿。最後には陛下が何とかしてくれる、という気持ちになっちまうんだよな。 そろそろ下の階にでるぜ、警戒してくれよな。」
…
…
階段を降りきると眼前に広間が広がっており周りは溶岩の海になっていた。
部屋の中心に僧服の男が背をむけて立っており、僧服はかなりの血にまみれているが男自身のダメージは見てとれない。
次の瞬間、こちらに気付いてない男は溶岩の海を進みだした。
人間の肉がこげる嫌な匂いが辺りに立ちこめるが男は気にせず、ざぶざぶと入っていく。
「なんなのよ…あれ…」
絶句する巴を横目にアラタは大きな声で男に告げる。
「おーい!! お主は何者じゃ?それ以上進まんでくれると有難いんじゃがのう!!!」
男は振り返り、鬼のような表情でこちらにかけてくる。
「おのれ! 頼朝の手先め!!まだ付け狙うかぁ!!」
叫びながら振り上げた薙刀が、アラタの頭を割ろうとした刹那、
レオルが間に入り剣で弾いた。
勢いそのままに男が薙刀を持つ両腕を切り落としたーはずだった。
「危ない!!」
ギィィン!!
巴の叫びと共に金属と金属がぶつかる音が部屋にこだまし、今しがた切り落としたはずの腕から繰り出された薙刀の一撃を、かろうじてレオルは剣で合わせていた。
「偽りの頭領に仕える者の剣など、 この弁慶には効かぬわ!!」
男は叫びながら二合、三合とレオルと切り結ぶ。
だが目の前にいる弁慶は混乱しているのか、アラタ達を敵と見なしている
「ふーむ、正気を失っておるのう。それにスキルの効果か異常な再生力を身につけておる。」
「どうする?陛下!俺がスキル使ってもいいが多分殺しちまうぞ!!」
切り結びながらの、レオルの言葉に
「仕方ないのう、ちょっと下がっておれ。交代じゃレオル。」
アラタが告げると、レオルは大きく斬り込み、
その斬撃を身体で受けた 弁慶を弾き飛ばした。
つかつかと前に出てくるアラタに
袈裟斬りに裂けた身体を修復し、弁慶は薙刀を一呼吸の間に数度も繰り出した。
その全てをひょいひょい とアラタが避ける。
「ねむれ 」
魔力をのせたアラタの言葉に
弁慶は どう と前に倒れこんだ。
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