第17話 獅子王 レオル
東の地下遺跡に到着し、何やら邪悪な模様が刻まれた門の前に立つ。
「ここがその地下遺跡か、立派なもんじゃのう。わしがいた異世界と違い、ダンジョンの入出者を管理する門番みたいなのはおらんのじゃな。」
「当たり前でしょ?門番なんてやってて地下遺跡から魔物が出てきたら、その場で戦闘がはじまるじゃない。魔物が出てきても勝てる門番なんて、なかなかいないわよ。
だから門番って訳じゃないけど、あそこの崖の上に見張りがいるわ。
あそこで、地下遺跡から出てきた魔物の確認。その後、速やかに役所に報告をして討伐者への依頼がされるって感じかな。わざわざ門番しなくても監視でいいし、勝手に入る人間がいたらあそこから注意すればいいしね。」
アラタの質問に巴は、崖の上の見張りに手を振りながら答える。
良く考えたらとても真っ当な話しである。
アラタが治めてた世界と違い、出入口に結界が貼られていない遺跡や迷宮、ダンジョンの門番をする という事は魔物を単独で倒せるぐらいの実力者じゃないと務まらず、そんな実力者が居たとしてもダンジョンの門番に使うというのは人材の無駄でしかない。
「なるほどのう、結界があってこそ初めて一般兵を立たせる事ができる訳じゃな。わしがいた異世界は未発見のダンジョン以外は帝国で管理されてたからのう。 ベルゼやメラルドあたりの仕事か。やはりわしは1人じゃ何も出来なかったのう。仲間に感謝じゃな。」
「そうそう、良く分からないけど仲間には感謝しないとだね! 今回もあの見張り兵が、新しい英雄が地下遺跡に入って行ったのを見届けて報告してくれたから、 英雄の行先が分かったんだし。仕事の分担は大事だよね。」
うんうん、とうなずく巴にアラタも深く同意する。
「それで、お嬢ちゃんも着いてくるのじゃな?それは構わんが、わしが逃げるように言ったらちゃんと逃げるんじゃよ。」
一緒に地下遺跡に入る、と言って聞かない巴に根負けしたアラタは条件を出す。
「分かったわ!アラタが逃げろって言う魔物なんて居なそうだけど、そんな魔物が出たらちゃんと避難します! 一応前も言ったけど回復スキル使えるから怪我したら言ってね。」
元気良く同意した巴に頷き、アラタは遺跡に入る。
門をあけると階段があり、降りていくと岩肌が露出した広場にでる。
広場には各方角に5本の通路が見え、どれかを選び取り進んでいくようだ。
「うーむ、どこに進めば良いか分からんのう。こういう時は探知に適した仲間が欲しいのう。
出来ればわしが中衛だから前衛を兼ねた…な。」
言いながらアラタはスキル【異界召喚】を使う。
眩い光が収まると、そこには獅子の頭を持ち、分厚い鉄板の様な鎧を着た 獣人が立っていた。
「陛下…リーズ殿から聞いていたが、また
と嘆いていたが なんという
片膝をつき
「ふむ、レオルよ。また会えてわしも嬉しい。何度も言ったが、恩は前の世で充分返してもらったぞよ。この世界ではわしは帝王でも何でもない。なれば1人の友として協力を願いたい。」
望外の、帝王であるアラタの頭を下げた願いに、慌ててレオルは立ち上がり言う。
「陛下、止めてくれ!もちろん俺に出来る事なら命すら惜しまんが、陛下に頭を下げさせたりしたのがバレたら俺がリーズ殿に殺されてしまう!恩も返さずに俺は死にたくはない!」
帝王になる前の昔のようなやり取りに嬉しくなり、アラタとレオルはお互いに笑いあった。
異世界でも武人然としていたレオルとは、王になる前からの付き合いであり、帝王と配下というより友人に近しいものがあった。
「盛り上がってる所、悪いんだけど…味方…なんだよね?」
恐る恐る聞く巴にアラタは頷く。
「お嬢ちゃん、こやつはレオルと言って獣人の王じゃ。気配察知や探知の生来のスキルもあり、前衛としても 見て分かるように頼もしい。仲良くしてやってくれ。
そしてレオルよ。このお嬢ちゃんは巴と言ってこの世界でお世話になっておる人じゃ。危険が無いように守ってやってくれ。」
2人にそれぞれ紹介すると、巴はおそるおそる手を差し出し、レオルはガハハハと笑いながら握手をした。
「よろしくな、巴殿!! それで俺はこの遺跡のような所での前衛のようだな。最深部まで行くのか?それとも何か探しものかい?」
「うむ、実はここには優秀な武具と、人を追って来ておっての。とりあえずは人の方を追いながら、武具を探すかの。レオルよ分かるかの?」
鼻をひくひくさせながらレオルは指をさす。
「あっちだな。魔物の血の匂いと人の匂いがする。倒しながら進んだんだろうな。その匂いにつられて、新しい魔物の気配もする。俺が先に行くから陛下と巴殿は後ろから着いてきてくれ。」
頼もしい獅子の戦士に促され、一行は歩き出した。
「それと陛下、本当に若返ってたんだな。リーズ殿が言うには、陛下は別の世界で神になり若返った。さらに陛下は瞬く間にその世界を統べて何億もの兵士が既にいる、とも言ってたが本当かい? 陛下ならさもありなん、と向こうでは皆納得していたが。」
リーズのいつもの大げさすぎる自分の話しに
頭を抱えるアラタを見て、
察したのか獅子頭の戦士は大口を開けて ガハハハハ と笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます