8月31日

@Haruka0001

8月31日

「夏休み」

その響きを聞いて喜ぶ人や悲しむ人もいるだろう。 ただ、そんな日々も大型連休の最終日になると特に学生などは悲観する人もいるだろう。 そんな、高校三年の夏休みのこと

「もうすぐ夏休み最終日か、色々楽しかったな」

と、彼女に声を掛ける。

「そうねぇ、色んなとこに出かけたり、遊んだりしたわね」

ちなみに、僕には彼女がいる。 所謂リア充というやつだ、関係もそこそこ良好で付き合い始めてから数ヶ月は経っている。 「とりあえず今日はこれでお開きね。それじゃ」

と言って彼女は僕の家の玄関の方へと行った。

「おう、じゃ気をつけて帰れよ」

「言われなくても、そのつもり」

と彼女は言いドアノブに手をかけてそのまま暗闇へと歩いていった。

「さてと、片付けするか」 家に両親はいるが自分でやったことは自分で片づけなさいと言われているので泣く泣く一人で片付けていた。

片付けが終わり適当に暇を潰していると母が夜ご飯ができたと言ってきたのでリビングへと向かった。

「最近どうだ?彼女さんとは」


と、親父が言ってきた。

「まぁ、そこそこ良好だよ」

と僕がいうと

「そうか...」

と、少し歯切れが悪そうに親父が言ってきた。 何かあるのだろうかと思ったがわざわざ聞くことでもないと思ったのでそのまま夜ご飯を食べすすめていく。 飯を食った後は風呂に入って、歯を磨いて、軽く勉強をして、いつものように睡眠についた。

『...君...君、聞こ...てるの?』

あ、と僕が声を出そうとしたができなかった。何故かとても息苦しい。

まるでどこか高いところから落ちて重傷を負ったような、そんな感覚だった。

『待っててね、今助けを呼んだから』

と、彼女は焦りながら言ってくれた。

「...。」

窓から朝日が差している。あぁ、朝なんだなと思いながら 「畜生、なんちゅう夢だよ。

とりあえず、気分転換に散歩にでも行くか」 外はいうほど暑くなく、また寒くもないと言った感じだった。 「どこに行くか...」 と思いながらスマートフォンで地図を見ながら近場の公園に行くことにした。


公園に着いたらあらびっくり、小学生くらいの子供たちが遊んでいるじゃないですか。 朝早い子もいるんだなと思いながら奥の方に〈ラジオ体操会場〉と書いてあった 「そっか、ラジオ体操に行ってた子供達がそのまま遊んでいるのか、」 若さは素晴らしい。若かったら色んなことを経験することができる。 そして、そのまま夏休み最終日の夜を迎えた。

「そーいえばお前、夏休暇の課題は終わったのか?」 「まぁな、めんどかったけどぱぱっと終わらせといたよ」 「そうか、それにしても明日から学校だけどどうだ?調子とかは」 「んまぁ、嬉しさ半分、悲しさ半分ってところかな」 と、親父と他愛のない雑談を繰り広げる。 「それじゃ、明日から学校なんだから早めに寝とけよ」 と言われたのでやることを済ませた僕はそそくさとベットへ横になった。 そして、彼女と明日は一緒に登校をしようねと誘った。 新学期最初の登校だしな。折角だから一緒に行こうと ただ、一向に既読が付かなかった。

「あいつ、寝てんのかね」

と思いながら、僕も眠りについた。

「.........」

気づけば朝になっていた


「ええっと、時計はっと」

時刻を確認すると

9月1日午前6時と表示されていた。

「それでは今日のニュースです。」

と、テレビではよく分からんニュースをいつも通り報道していた。 正直、学生の僕にとってはそこまで興味はないので軽く聞き流していたが、 「それでは続いてのニュースです。昨夜未明、第二高校の屋上から高校三年生の女子学生が自殺したと警察に通報がありました。」 「えっ。」 第二高校はうちの高校だ、そもそもうちの高校はうちの学生と教職員しか基本的に入れないからうちらのクラスの誰かなのかな 「物騒だな」

親父がそう言った

正直、自分の学校でこんなことがあるとは思ってもいなかったので多少焦っているが、まぁ、そこまでのことではないだろうと考え朝支度を進める

のであった。

そして、学校まで行く途中にクラスの野郎に声をかけられた 「おい、あのニュース聞いたか?」

「あぁ、聞いたけどあれがなんなんだ?」 と、急に話しかけられたが特に何も注意せず聞き流していたのであんまり詳細は覚えていない。 「あれ、もしかしてお前知らないのか?」

「何がだよ」

「いや、ならいいんだ」


そう言われたら人間気になってしまうものだがあまり追及しないでおこう。めんどくさいし

学校に着いて気がついた

「そういえば、あいつ居ないな」 いつもはクラスの女子グループと混ざってワイワイキャッキャしてるのにあいつは今頃何してるんだろ 「おい、お前、先生に呼ばれてるぞ」

と、名も知らぬ誰かが言ってきた。

「ありがと」

とりあえず、礼だけは言っておかないとな

そうして、僕は職員室へと足を進めた。

「それでだな、」

と、担任は深刻そうな顔をして言ってきた

「お前は今朝のニュースを見たか?」

「まぁ、軽くは」

「なら大丈夫か、その、だな、」

教師はされど申し訳なさそうに言った

「あの自殺の件に関してなんだが、」

「はい」

「あれは本当にお前の彼女であってるのか?」

「......え?」

一瞬言葉に詰まった


まさか、まさかそんな訳 「彼女の親御さんに連絡をしたんだが、その子の所在は分からないらしい」 「な、なるほど」

「それでだ」

と、教師は一度咳払いをして

「お前は昨日、彼女と会っていたか?」 「いや、そういえば会ってないですね」

そうか、と教師は言って 「とりあえず、お前の顔色悪そうだから保健室にでも行っとくか?」 「そう、、します。」

正直頭が回っていなかった

彼女が昨晩自殺した? でも確かに、昨日の夜送ったメッセージには反応がなかったしな そのまま僕は学校を早退した。

「クソッタレ」

どうして、どうして僕は彼女を救えなかったのだろう あの日言ってた親父の意味深な言葉をしっかりと理解していれば もし、もしも過去に戻れるなら

彼女を救うことが出来るのかな

もし、僕が過去に戻れたら、いいのになぁ


と思いながら眠りについた。

「あれ?」

そうか、僕は気づいたら昼寝をしてしまったらしい

今の時間は、と

そしてスマホに書かれたその日時を見て僕は驚愕した

8月31日の午後8時

どう言うことだ?僕は、過去に戻ったのか? と、そんなことはどうでもいい 31日?と言うことはもしかしたら彼女はまだ生きてる? そこにたどり着いた時僕は即座に行動をしていた。 今は8月とはいえど9月も近づいているし、夜なので多少肌寒い。 そして全力で走りながらその屋上へと向かった。

そうして、屋上へと繋がっている扉をバンと開けた先に彼女はいた。 「へぇ、最後は君が来るんだ」

そう彼女は言った

「お前は、、何をしているんだ」


「何か、何かあ、逆になんだと思う」 「さぁ、僕には分かんねぇよ」

「そう、」 と言った彼女は少し悲しそうで、同時に、、嬉しそうだった 「それじゃ、サヨナラだね」 と目に涙を溜めながら彼女は言った。 「待ってくれ、お前はどうして」

「なんで、だろうね」 「とりあえず、こっちに来てくれないか」 「ごめんなさい」

「何が、ごめんなさいだよ」 「最後にこれだけ言わせて」

「大好きだ」 それを言い終わる前に彼女は飛び降りてしまった。 「なんで、なんで僕はまた止められなかったんだ」 「とりあえず、救急車を」 そう言ってスマホを開いた。

あれ?

9月1日10時30分


おかしい、今日は8月の31日じゃなかったのか ここまでの全てが夢だったというのか

でも

「あれが夢な訳、」 これはなんなのだろう、彼女の最後を何もせずに見届けることになって 「......帰るか」

そうして、僕はモヤモヤしたまま家に帰った。

「その、なんだ、大丈夫か?」 家に帰った途端、親父からそう言われた 「親父、今日って何月何日だっけ」 「今日は9月1日だがどうした?」

「ならいいんだ」

やっぱり、今日は9月1日なのか 「なぁ親父、親父は救いたい人を救えなかった経験ったあるのか」 おそらく親父は察したのだろう 「似たようなことは一度だけあったな、」

「そう、、なんだ」 「あぁ、そいつは凄かったよ。何にも真面目で、そしてちゃんと幸せな人生を謳歌していたよ」 あと、と親父は付け足して

「そいつは、幸せな夢を見ていたよ」

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