第16話 『魔族』

「いきなり何言ってるの!? 浄化すらしなかったクセに!」

「貴女が余計なマネをしたからでしょ? 私の到着を待っていればよかったものの」


 今さらだけど、歪んでるのはアンタらの性根だねっ!


「ユウナっ、話の通じないヤツに取り合うな!」


愚弟ジョッシュよ……どこで何をしていたかと思えば、まさか『テロリスト』の片棒を担いでいたとは。兄は悲しいぞ」


 ジョルジュがパチン! と指を鳴らした。護衛兵がジョッシュを取り押さえようとするも、瞬く間に斬り伏せられた!


「なに……!?」


「外から見て分かった。今の王国が、いかに腐敗くさっているかをな。愚兄ジョルジュよ! 俺の命をりたくば、貴様自身が命懸けで来いっ!」


 バッチバチの兄弟。私ははるかと向き合っていた。


「有り難く思いなさい。才媛たる私が、“余興”に付き合ってあげるのだから」

「人を見下すことしか出来ないんだね。なんだか可哀想に……」


「黙りなさい」


 ゾッとする一言を発する瑤。召還された時のジョルジュの比じゃない。どう生きてきたら、そんなに『冷たい』が出来るの……?


「この私に『同情』なんて、虫酸むしずが走るわ。まだ『罵倒』の方がマシよ、相手にしなければいいもの」


 そうですか。その強靭な精神メンタルだけは見習いたいよ。


「それに、私が浄化だけだと思って!?」


 いきなり瑤が、光の矢を無数に飛ばしてきた! わわわ……危ないっ!


――キュポーン!!


 矢は私の直前で、キレイに消滅した。瑤が唇を噛む。


「小細工を……! 正々堂々と勝負なさいっ」


……それ、アンタが言う?


 向こうでは激しい剣戟けんげきが展開され、ジョッシュが圧している。その後も瑤は諦めず、矢の雨を降らせたけど私に当たることはなかった。


「屈辱だわ……初めてよ。この私をここまでコケにしたおバカさんは。ちょっと早い・・気もするけど、アレで片をつけるわ。勿体ない・・・・けれども、負けるよりはマシよ」


 不敵な笑みを浮かべる瑤。何やら『隠し球』があるみたいで、瑤の様子から自信があるみたい。



「あれれ、オカシぃぞぉ? 瘴気しょうきに連れて来てみりゃ歪みじゃなくて、ニンゲンどもしかいねぇじゃねーか」


 突如、頭上から野太い声が響いた。何なに……!? 見上げると、一目で人間じゃないって分かる存在が、翼を羽ばたかせていた。魔物でもなさそうだし、アレは一体……!?


「魔族……か。何故、こんな所にいる?」


 魔族……!? ジョッシュに私は驚いた。タダでさえ、ややこしい状況なのに勘弁して><


「ククク……ナンでもナニも、お前らが呼び寄せたんダゼ? このオレをよォ! お前ら、各地で歪みを浄化してるニンゲンどもだろ? 困るンだよ。魔族オレらが地上こっちで、活動出来ねぇだろーが」


「いきなり現れて、私の上から物を言うなんて。何者なの? 聞いた後、始末してあげるわ」


 腕組みをする瑤。どっちも大して変わらないけどなぁ……。魔族は豪快に笑った。


「グハハハハッ! 今時、こーいうニンゲンが居るんダナ? 聞いて驚けッ、オレ様こそ『次期魔王』となるグレゴリー様ダッ! さぁニンゲンども、恐れおののけッッ!!」



 は……? 魔王とか大丈夫……(´・ω・`)?



 ◆ ◆ ◆


 NEXT……ざまぁ回。

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