第45話閑話休題その1
「高坂君、昼休みに三ツ谷会長の部屋に行くように」
「はい、わかりました」
三ツ谷会長が浩一郎を呼ぶ時は囲碁を打ちたい時だ。実力は同程度、あまり強くない。お互いミスをしながら打っている。今日もまた、浩一郎の見損じで負けてしまった。
「今日は私の勝ちだな」
三ツ谷会長は扇子を開いてパタパタと振っている。
「ところで高坂君、提案が有るんだが」
「何でしょう?」
「我社でも囲碁、将棋部を作ってみないか」
面白い提案だ。きっと会社の中でも強い人間が居るに違いない。浩一郎が三ツ谷会長が碁を打てるのを知ったのも社内報に会長が作った
「昼休憩の事も有るから、持ち時間は10分で」
浩一郎の提案に会長は同意した。あっという間に勝負が終わる。
「囲碁将棋部を設立し、職団戦を制するのだ!」
強く打った一手で浩一郎は負けを認めた。
「会長、見違えるような棋力が向上していますね」
「プロの指導碁を受けているからな」
なるほど、それで打ち方も変わったはずだ。以前なら石を取りに行くケンカ碁だったが今は
「それでは部の設立に関しては高坂君、君に任せたよ」
「はい、喜んでやらせていただきます」
(囲碁将棋部を設立します。初心者も大歓迎!詳細は総務部高坂まで)
各部署の掲示板に募集のビラを貼って回った。反応は直ぐに有った。社内に腕に自信が有る社員が複数居たのだ。囲碁、5名。将棋部は8名揃った。集まった旨を会長に報告すると
「流石高坂君。ならば部室を作らねばならないな」
会長の指示で部屋が割り当てられた。直ぐに道具は調達され、準備ができた。
「よし、これで来年の職団戦に参加できるぞ!」
会長は上機嫌だった。部の活動時間は定時後の時間、自由に使える。囲碁と将棋に関する書籍は全て会長のポケットマネーで用意された。圧巻の本棚になった。
「高坂主任、今よろしいでしょうか?」
「オウ田宮。良いぞ」
「実は私も囲碁に興味が有って、囲碁将棋部に入部したいんですが」
「初心者か?」
「はい、初心者です」
「我が部は初心者大歓迎だ。仕事が終わったら好きな時間に来てくれ」
入部届を渡されたので必要事項を記入して浩一郎さんに渡した。
「田宮なら先輩部員が手取り足取り教えてくれるさ」
俊哉は先輩が碁の勉強をしているのを見ている。実際、何をしているのかさっぱりわからない。仕事を終えて浩一郎さんと俊哉は部室に入った。既に部員は揃って真剣に対局している。対局を観ていた会長が浩一郎さんに声を掛けてきた。
「高坂君、皆真剣に対局している。頼もしいかぎりだ」
おや、と会長は俊哉を見て
「君は総務部の田宮君だね。碁を打ちに来たのかね」
「はい、初心者ですが囲碁に興味が有りまして」
「そうか、そうか。じゃあ私が教えてあげよう」
会長は俊哉と碁盤に向かい合っている。浩一郎は他の部員の対局を観ている。すると対局の申し込みをされた。
「私は経理部の中村だ。君の棋力はどれくらいですか」
「だいたい5段で打っています」
「よし、じゃあ打とうか」
ちらと俊哉の方を見ると会長と俊哉が会話をしながら打っている。俊哉なら大丈夫だろうと浩一郎は思った。俊哉、頑張れよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます