第5話

時は、9月23日の午後1時過ぎであった。


またところ変わって、家から50歩先にある大型和風建築の家にて…


家は、土居田夫婦が暮らしている家である。


福角家ふくずみけとのつながりは。てつろうが私立高校コーコーと京都の大学に入学した時に渡された誓約書ショメンの保証人の欄に土居田夫婦と妻の父親がショメイナツインしていたことであった。


また、友美が国際大学に進学した時の誓約書ショメンの保証人も土居田夫婦が引き受けていた。


家の大広間のテーブルの上に、近くにある割ぽう料亭特製の重箱弁当が並んでいた。


テーブルには、マヤとてつろうと土居田夫婦の4人がいた。


武昭千景夫婦たけあきちかげは、急な用事ができたのでここにいなかった。


他の家族たちも、朝から出かけていたのでここにいなかった。


この時、てつろうがひどく怒り狂っていた。


ものすごく困った表情を浮かべているマヤは、てつろうに『落ち着いてよ〜』と言うた。


「てつろうさん、てつろうさん!!」

「なんだよ!!」

「てつろうさん、落ち着いてよ〜」

「ふざけるな!!なんでオレをここへ連れてきたのだ!?」

「てつろうさん、そんなにカリカリしないでよ~」

「だまれ!!なんでオレをここへ連れてきたと言うてるのが聞こえないのか!?」

「アタシは、おじさまとおばさまから土居田の家にてつろうさんを連れて行くようにと頼まれたのよ〜」

「ふざけるなよそ者!!」


この時、土居田の妻が困った表情で言うた。


「てつろうさん。」

「なんだ!?」

「てつろうさん、落ち着いてよ〜」

「なんだこれは…なんだこれはと言うてるのが聞こえないのか!?」

「だから、きょうはてつろうさんのおとーさんとおかーさんから『席を作ってください』と頼まれたのよ〜」

「席を作れと言われたから作っただと!!ふざけるな!!」

「てつろうさん落ち着いてよ!!」

「だまれよそ者!!」


てつろうから怒鳴られたマヤは、ものすごく困った表情でてつろうに言うた。


「てつろうさん、土居田さん夫婦はてつろうさんが研究室をやめたあとの進路について話し合いをしたいと言うてるのよ!!」

「ふざけるな!!土居田クソッタレジジイのせいで、オレは室長に肩をたたかれたのだぞ!!」

「だから、土居田さんはてつろうさんのことが心配だったから…」

「ふざけるな!!」


土居田の妻は、ものすごくつらい表情でわけを説明した。


「てつろうさんが室長から肩をたたかれたことについてはきちんと全てあやまるわよ…」

「どんなにあやまっても、オレは許さない!!」

「うちらは、てつろうさんを困らせるためにしたのじゃないのよ…てつろうさんが研究室でコンスタントに動くことができないのは困るのでは…と思ったので、室長さんに頼んだのよ~」

「それじゃあ、オレにどうしろと言うのだよ!!」

「だから、てつろうさんのおとーさんとおかーさんからてつろうさんがコンスタントに動くことができる職場を紹介してくださいと頼まれたのよ〜」

「コンスタントの意味がわからないんだよ!!」


マヤは、困った表情でてつろうに言うた。


「土居田さん夫婦は、てつろうさんが朝から夕方までコンスタントに動くことができる職場を紹介しますと言うてるのよ!!」

「そんな都合のいい職場がどこにあるのだ!?」

「てつろうさんがイライラしていたら見つからないわよ…」

「だまれよそ者!!」


土居田の妻は、困った表情でてつろうに言うた。


「てつろうさん、イライラカリカリしていたらてつろうさんが働きたい職場が見つからないわよ…お腹がすいた状態では話し合いができないわよ…まずは、お昼ごはんを食べてからにしましょう…」


土居田の妻は、マヤに対しててつろうにお皿に食べ物を入れてほしいと頼んだ。


マヤは、重箱に入っている食材を白いお皿に盛り付けた。


その後、マヤは食材が盛られている白いお皿を手渡した。


「てつろうさん、ごはん食べようね。」

「なんだこれは!!」

「てつろうさん、お肉とお野菜をバランスよく食べたらいい答えが出るのよ!!」

「だまれよそ者!!」

「ごはん食べてよ!!」

「ふざけるな!!」


(ガツーン!!ガツーン!!ガツーン!!)


思い切りブチ切れたてつろうは、グーでマヤの顔を3回殴りつけた。


土居田の妻は、悲痛な声でてつろうに言うた。


「てつろうさん!!」

「なんだ!!」

「なんでマヤさんを殴ったのよ!!」

「よそ者がいらないことをしたから殴った!!」

「マヤさんは、お肉とお野菜をバランスよく食べてほしいからお皿に食材を盛り付けて渡しただけなのよ!!」

「だまれ!!だまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれ!!」

「てつろうさん!!」

「ふざけるな!!オレの人生をぶち壊したから許さない!!」

「てつろうさん!!」

「あんたらが言うてるコンスタントとはなんや!?」

「だから、朝から夕方までコンスタントに動くことができてお給料が安定している場所があると言うてるのよ!!」

「だからそればどこだと言うてるのだ!?」

「だから、お昼ごはんを食べたあとでお話をしましょうと言うてるのよ!!」

「ふざけるな!!」


(ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラガシャーン!!)


思い切りブチ切れたてつろうは、食卓をぶち壊した。


その後、てつろうは奇声をあげながら家の中で暴れ回った。


マヤは、ひどくおびえまくった。


さて、その頃であった。


またところ変わって、おのだサンパークの中にあるスタバにて…


テーブルの上にミルクラテが入っている大きめのマグカップとニューヨークチーズケーキが並んでいた。


この席に、友美と友人が座っていた。


友美は、友人に対して国際大学がイヤになったからやめると言うた。


友美からわけを聞いた友人は、おどろいた声で言うた。


「国際大学がイヤになったからやめる…友美、ねえ友美!!」

「(友美、ぼんやりとした表情で言う)なに?」

「友美に聞くけど、あんたはなんで国際大学に進学したのよ!?」

「なんでって…他に行きたい大学がなかったから…テキトーに選んだ…それだけよ…」

「友美はこれからどうしたいのよ!?」

「だから…国際大学だいがくなんかてるわよ!!」

「どうしててるのよ!?」


友人からの問いに対して、友美はぐすんぐすんと泣き出した。


「ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…」


友人は、ものすごく困った表情で友美に言うた。


「友美!!ぐすんぐすんと泣いている場合じゃないわよ!!」

「ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…」

「友美!!なんで国際大学だいがくをやめるのよ!?…国際大学だいがくをやめてどうしたいのよ!?」

「ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…留学したい国を選べなかった…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…」

「留学したい国がなかったからやめるって?」

「うん…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…」

「友美、今だったらまだ間に合うわよ…海外留学の申込みのしめきりは9月30日よ…まだ間に合うわよ!!」

「ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…間に合わない…間に合わない…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…」


友美は、ラテをひとくちのんだあと友人に国際大学だいがくをやめる理由を説明した。


「あのね…アタシ…ガンにリカンしたのよ…」

「ガンにリカンした?」

「うん…シキュウケイツイガンと乳がんの2つを…同時にリカンした…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…医師からステージ4と言われた…ぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすんぐすん…」

「ステージ4…」

「うん。」


友美は、ラテをひとくちのんだあと友人に泣きながら言うた。


「あのね…ほかにもつらいことがたくさんあったのよ…きのう…両親がリコンしてやると言うたのよ!!」

「リコン!?」

「うん…」

「友美の両親は、なんでリコンするのよ!?」

「おとーさんとおかーさんが…結婚して大失敗したと言うた…理由はそれだけよ…」

「困ったわね~」

「ほかにも、大学でつらいことがたくさんあった…きついいじめにもあったし…もうイヤ!!…ビービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービービー!!」


友美は、より激しい声でビービービービーと泣いた。


友人は、ものすごく困った表情で友美を見つめた。


時は、夕方4時過ぎであった。


またところ変わって、家の大広間にて…


家の大広間に武昭千景夫婦たけあきちかげとてつしむつみ夫婦と圭佑とこうすけがいた。


マヤは、庭で洗濯物を取り込む作業をしていた。


大広間にものすごく重苦しい空気がただよっていた。


てつしむつみ夫婦は、武昭千景夫婦たけあきちかげに対して『リコンします』と言うた。


千景ちかげは、ものすごく困った表情で言うた。


「リコン?…どうしてリコンするのよ?」


てつしは、ナマイキな声で答えた。


「むつみに好きな男ができた…それだけです。」

「それはほんとうなの?」

「ほんとうです。」

「むつみさん…むつみさん!!」

「はい。」

「てつしが言うたことはほんとうなの!?」

義母おかあさま!!」

「ほんとうだから言うた!!」


てつしがいいかげんな理由を言うたので、千景ちかげは困った表情で言うた。


「てつし、てつしは…」

「かあさん!!オレは被害者だよ!!オレは今、重役昇進がかかっている大事な時期だよ…それなのに…妻に好きな男ができたと聞いたから怒ってるのだよ!!」

「あなた落ち着いてよ!!」

「落ち着いていられるか!!」


千景ちかげは、ものすごく困った表情で言うた。


「もうわかったわよ…てつしがリコンしてやると言うのであればリコンしてもいいわよ…でもその前にシンケンとか財産分与のこととか…」

「そんなものはしません…友美としゅんすけは大キライだからシンケンホウキする!!財産分与もしません…すぐにリコンします。」

「てつし〜」

「すぐにリコンすると言うたらすぐにする!!」

「あなた!!」

「出ていけ!!オドレは今すぐに出ていけ!!」


てつしに怒鳴られたむつみは、ワーワー泣きながら家から出て行った。


それから数秒後に、腕組みしながら考え事をしていた武昭たけあきが怒った表情でてつしに言うた。


「てつし!!」

「なんだよ!!」

「お前はどこのどこまで自分勝手だ!!お前はなんでむつみさんを結婚相手に選んだ!!」

「おとーさん…」

「何だ!!まだ言いたいことがあるのか!?」

「てつしのことについては、また後日あらためて話し合いをしましょう…それよりも問題は、圭佑とこうすけの今後の人生をどうするのかを考えることが先よ!!」

「しかしだな、40前の独身の男の結婚は問題があるのだぞ!!」

「おとーさん!!」


この時、圭佑がものすごくつらい声で武昭千景夫婦たけあきちかげに言うた。


「オレ…この家から出て…遠い街へ行きます…」

「家から出て行くって?」

「転勤を命ぜられたから…家を出ます。」

「転勤…どこへ行くのよ?」


圭佑は、ものすごくつらい声で武昭千景夫婦たけあきちかげに言うた。


「行き先は…礼文島です。」

「礼文島!!」

「オレ…大失敗した…会社が礼文島で進めていたプロジェクトがトンザした…その責任をおう形で転勤になった…会社が所有していた土地などを清算せいさんする作業や…取り引き先の会社にあやまりに行くなど…つらい仕事がたくさんあるのだよ~」

「それで、後始末が全部完了するまでにどれくらいかかるのよ?」

「7〜8年…」

「7〜8年!!」

「早くても7〜8年だよ!!」

「どうしてそんなに時間がかかるのよ!?」

「かあさん…オレはものすごくつらいのだよ!!」

「分かってるわよ…なんだったらおとーさんとおかーさんがどうにかするから…」

「かあさん!!オレは子どもじゃないのだよ!!」

「分かってるわよ!!」

「かあさんはどうしたいのだよ!?」

「だから、圭佑を楽にしてあげたいから…」

「いらないことをしないでくれよ!!」


圭佑は、ひと間隔おいて千景ちかげに言うた。


「オレ、今夜の(夜行)バスに乗って東京に行く…翌朝…東京の本社の人たちと一緒に礼文島ヘ行く…」

「今から出発するの?」

「ああ!!」


千景ちかげは、ものすごくつらい声で圭佑に言うた。


「圭佑、出発するのだったら明日の朝にしたほうが…」

「今のうちに出発しなきゃだめなんだよ!!もういい!!この家には二度と帰らないからな!!ワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワー!!ふざけるなクソバカ!!ワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワーワー!!」


思い切りブチ切れた圭佑は、奇声をあげながら家から出て行った。


その後、こうすけも武昭千景夫婦たけあきちかげに対して突き放す声で言うた。


「オレ、大学にいた時の友人から誘われたので…ウクライナに行きます…さよなら…」


そしてこうすけも、家から出て行った。


困ったわ…


どうしたらいいのよ…


千景ちかげは、ひどくイライラしながらつぶやいた。


この時であった。


(ピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロ…)


大広間に置かれているハウディ(プッシュホン)の着信音が鳴った。


同時に、洗濯物が入っている大きめのかごを持っているマヤがやって来た。


「アタシが出ます。」


マヤは、大急ぎで電話に出た。


「はい福角ふくずみでございます…ああ、しゅんちゃんのお友だちのお母さまですね…コウバンにいるって…スマホがぬすまれた…しゅんちゃんが置き忘れたスマホをぬすまれたって…どこでぬすまれたのですか!?…もしもし!!もしもし!!」


電話は、しゅんすけのお友だちの親御さまからであった。


しゅんすけのお友だちの親御さんは、しゅんすけが置き忘れたスマホを届けに行こうとしたが、その途中でバックをひったくられた。


ひったくられたバックの中にしゅんすけが置き忘れたスマホが入っていた。


しゅんすけが置き忘れたスマホの中には大好きなアニメーション作品の壁紙類などがアップロードされていた他、機密情報などがたくさん入っていたなど…深刻な状況におちいった。


しゅんすけは、今も行方不明になっていたからなお悪い…


困ったわ…


どうしたらいいのよ…


お願い…


助けて…


時は、深夜11時50分頃であった。


またところ変わって、竜王山公園の中にある森林にて…


森林の中にてつろうと大学の研究室の室長がいた。


室長は、たったひとりの孫娘を殺されたことに対して非常に強い怒りを抱えていた。


室長は、てつろうに対して『孫娘を返せ!!』と言うて殴りかかった。


「なにするんだよ!!」

「ふざけるな!!よくもたったひとりの孫娘を殺したな!!」

「ふざけるな!!」

「ああ!!」


てつろうは、近くにあった石で室長を殴りつけた。


室長は、その場に倒れた。


その後、てつろうは室長を殺そうとしたが折り悪く巡回中の警察官に見つかってしまった。


「なにやってるのだ!!」

「ワーワーワーワー!!」


てつろうは、警察官をナイフでりつけて殺したあと拳銃を強奪した。


この時、室長がふらついた身体で起き上がった。


「アアアアアアアア!!」

「オドレぶっ殺してやる!!」

「助けてくれ〜」


(ズドーン!!ズドーン!!ズドーン!!)


てつろうは、警察官から強奪した拳銃で室長を撃ち殺した。


(カシャカシャカシャカシャ…)


この時、カメラのシャッター音が聞こえた。


てつろうは、強奪した拳銃を持ってその場から逃走した。


それから2分後であった。


やきそばヘアのしょうたれ姿の竹宮がやって来た。


竹宮は、事件現場に落ちていた大学の研究員のバッジなどの証拠品を拾ったあとふところにかくした。


その後、現場から逃走した。


その一方で、拳銃を持って逃走しているてつろうは事件現場に大学の学生証と研究員のバッジなどを落としたことに気がついていなかった。


てつろうが警察官を殺したあと拳銃を強奪した…


そして、室長を撃ち殺した…


その現場を竹宮がデジカメで撮影した…


これで福角家ふくずみけは、完全にアウトだ…


そうつぶやいた竹宮は、このあとより過激な行動に出た。


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