みかんの美味しい食べ方

瀬都内みかん

第1話 みかんと俺と時々おかん

りんごやバナナ、スイカにイチゴ、果物と言っても思い付くものは人により多種多様だ。

りんご1つとってもふじ、つがる、王林など品種を調べ始めると終わりがない、ちなみに日本で一番生産されているのは品種は「ふじ」らしい、冬場のスーパーにいる赤いあいつらは大体ふじりんごなのかもしれない。

 今回のお話はそんな果物の中でも筆者の大好きなみかんのお話となる、品種を細かく指定すると後で後悔しそうなので今回は「みかん」で統一して行こうと思う。

それでは可愛らしく瑞々しいが少し甘酸っぱいみかんの世界へいざ!






 初めて食べたのは年末に祖父母の家に行った時だ、祖父母の家は田舎の田舎ちょー田舎の山奥にある隣人すら数百メートル先に住んでいるような場所にあった。

勿論そんな場所に元気盛りの小学生だった俺が行ったものだからひたすらに暇を持て余していた、母親も年末で休みな上に実家なので子どもを構うことも無くひたすら馬鹿でかいこたつで寝ていた。


「お母さん一緒に遊ぼうよ、何にも無いから暇だよぉ」


昼頃についてまだ2時間、冬場なので好きだった川遊びも出来なくて我慢ができなくなった俺はこたつで寝ている母親を揺さぶりながら声をかけた。


「母親は現在実家に来るまでの運転の疲れとこたつの引力によって機能を停止しておりますー」

「起きてるじゃん!引力ってなんだよ遊んでくれよ!」

「すやすや」


少しだけ返事をし、完全に狸寝入りをした母親に愛想をつかせた俺は、こたつに戻り持ってきた携帯ゲーム機を起動しようとしていた。


「こんにちは~~~あれ?一柑くんこっちに帰って来てたの!大きくなっちゃって!いけめんになったわねぇ」


玄関から見たことあるような見たことないような知らないおばさんが入ってきた、祖父母の実家は玄関を開けるとまっすぐ通路があり、通路の片方に隣接する形で畳張りの部屋がひろがっている、なので玄関から顔を覗かせただけでこたつに入っている俺と目が合うのだ、ちなみに母親は寝ている上に死角になる位置にいるので気づいてはいない。


「あ、こんにちは!えっとありがとう?」


おばさんを見ると足元に大きな段ボールがあり、それを持ち上げようとしていたので携帯ゲーム機を机に置いてこたつから出た俺は通路側に移動し靴を履いておばさんの元へ行った。


「今おばあちゃんは畑の様子見に行ってていないよ、あ、手伝うよ!」

「あら、ありがとうね、でも重たいだろうから大丈夫よ優しい子だねぇ」

「いっぱい収穫できたからお世話になってる森野さんちにおすそ分けしようと思ってね、置きに来ただけだから居なくても大丈夫よ~」


おばちゃんの両手でいっぱいになるほど大きな段ボールを部屋に置いたのち少しだけお話しした後、森野おばちゃんによろしくねと見知らぬおばあちゃんは言って帰っていった。


「これなんだろう、勝手に開けちゃって良いのかな、おかーさんこれなにー?」

「ぐーぐー」


人が来ていたのに完全に寝ていた母親はもはやピクリとも反応せず、俺はその大きな段ボール箱の中身が気になって段ボールのふたを開けた

 開けた瞬間一気に爽やかな匂いと共に可愛らしいオレンジ色の何かが顔を覗かせた


「わ!いい匂いだ!なんだこれ!」

「帰ったよー」


俺がびっくりした声を上げたのと玄関が開きおばあちゃんの声が聞こえたのはほぼ同時だった


「あ、ママちゃんおかえり!さっき知らないおばちゃんが来てたよ!これ置いてった!なにこれ!!」

「あぁ光村さんか、ほうじゃ冬やけんね毎年この時期はみかんを持ってきてくれるんよ」

「みかん?みかんって言うんだこれ、おいしーの?」

「なんゆうとん一柑、来るたび食いよったやないの」

「え、そうなの?食べたことないよ?」

「みかんだ!!!ママちゃん食べていい???」


寝ていたはずの母親が突然会話に乱入してきた、ちなみにママちゃんはおばあちゃんのあだ名であり母親も俺もそう呼んでいる。


「あ、お母さん起きてるじゃんきのーていし?って言ったのに」

「はっはっはっ匂いにつられて機能回復したのだよ一柑くん」

「きのーかいふく…」

「かまんかまん食べても、また今年はぎょーさん持ってきたねぇ。はよ食べんと下の方腐ってしまうけん一柑も食べてみんさい」


みかんを取ってふと隣にいる母親を見るとみかんを両手の内でみかんを転がしていた。


「なにしてるのおかあさん?」

「なにってこれ?一柑もやってみ、両手で優しく転がすのよ、そうすると皮がむきやすくなって筋が取りやすくなるのよね」

「ふーん」


見よう見まねで両手でみかんを転がす、何度か手からすっぽ抜けて飛んで行ったが何度か転がした後に母親をまねて皮をむいた。

皮をむくたびに少しつんとした匂いを感じつつ最後までむくと中から柔らかいオレンジ色の何かが顔を覗かせた。


「やるじゃん一柑綺麗に皮がむけたね」

「これどうやって食べるの?」

「そのまま食べたらいいよ、私は薄皮もむいちゃうけどこのみかんならそのままでも美味しいし」


中から出てきた柔らかなそれを一つもいでおそるおそる口に含んだ。


「「おいしー!!!」」


同時に食べた母親と俺の声が田舎の小さな家からこぼれ出た。

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